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ダンジョン内には時計がない。
そのためここに居ると、時間があやふやになってしまう。
そもそも時間の流れが外と違う。
ではほかの冒険者たちはどうやって、日数をカウントしているのかというと、完全なる体内時計だった。
もう挑戦している冒険者達、全員が全員、寝て起きたら朝、モンスターを倒しまくって、お腹が減ってきたら昼、疲れて眠くなってきたら夜とかそんな感じでアバウトに過ごしていた。
それで不便が無いのだから良いのだろう。
でも、何日滞在したかわからなくなるので、僕たちは寝て起きたら近くの壁に、ナイフで線をつけてカウントしていく方式を取った。
「よし、昨日はBBQだったから。
今日は何食べる?」
リーゼが聞いてくる。
今日、食べたい物によって倒すモンスターを決めるのだ。
「私は美味しければなんでもいいよ~」
ファイゼルさんが、のんびりとそう言った。
僕は、昨日のほかの冒険者達が作っていたカレーとかシチューとかを思い出した。
どうせなら、とスパイスも揃えてあるし、
「カレーが食べたいな」
僕はそう提案してみた。
ライスも持参している。
カレーを食べるための準備はすでに整っている。
あとは、メインの肉を用意するだけだ。
「あー、いいねぇ、カレー」
ファイゼルさんが賛成してくれた。
「キャンプ飯のテンプレだよなぁ、カレー。
じゃあ、今日はカレーにしよう。
肉はどうする?
牛?豚?鳥?」
リーゼがさらに聞いてくる。
「僕はチキンカレーがいいかな」
「私はとくに希望はないよ。
美味しければそれでいい」
「じゃあ、チキンカレーにしよう!」
僕達の意見を聞いて、リーゼがそう決定を下した。
「それじゃあ、鳥型のモンスターを狩るってことだね。
どのモンスターにする?」
「……どの?」
ファイゼルさんの言葉に、僕は首を傾げた。
リーゼが説明してくる。
「ここには複数の鳥型のモンスターがいるんだ。
唐揚げ向きだったり、サラダチキン向きだったり、それこそカレーみたいな煮込み料理向きだったりする」
リーゼの説明にファイゼルさんが苦笑する。
「あ、単に鳥型のモンスターが複数種類いるからって意味だったんだけど」
「煮込み料理向きだと、どれが美味しいの?」
「火を通してもパサつかなくてコクがあるってなると、ゴクラクチョウかな」
外では珍しい部類に入るモンスターだった。
色鮮やかな羽根があり、その羽根は高値で買取されている。
王族や、高位貴族の持つ羽根ペンはこのゴクラクチョウのものだ。
羽根だけでなく、その美しさから剥製にされることもしばしばだ。
ゴクラクチョウの剥製も高値で取引されているらしい。
「なるほど~。
ゴクラクチョウなら20回層にウジャウジャいるから、そこで倒そう。
羽根も売れるしね」
このダンジョンの20階層にはゴクラクチョウがウジャウジャいるらしい。
「よし、じゃあ今日はゴクラクチョウのチキンカレーに決まりだ!
あまったら唐揚げも作ろう!」
余るのかなぁ。
何気にリーゼもファイゼルさんも結構な量食べるしなぁ。




