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魔将殺しの英雄。

僕でも知っている。

ばあちゃんと一緒に彼の偉業が書かれた新聞を一緒に読んだ。

そう、まだばあちゃんが生きていた頃のことだ。

もう、五年も前のことだ。

五年前、王都は魔王軍幹部、将軍に急襲された。

これを倒し、首級をあげたのが当時15歳だったルート・カイルゲルさんである。

この功績により、ルートさんは【魔将殺しの英雄】と呼ばれるようになったのである。

ギフト発現の儀式の時に、そういえば彼を見かけていたことを思い出した。

とは言っても、あの時彼は僕には気づいていなかった。

なので、今この場でわざわざそれを言うことはしなかった。

言うほどのことでもないからだ。


ルートさんは、ツインテールの女の子に耳を引っ張られ、そのままズルズルと引きずられていってしまった。

去り際に女の子が僕を見て、


「ほんとにすみません!」


なんて謝ってきた。


「いえいえ」


僕は気にしていない、とジェスチャーで伝える。

続いてルートさんが、


「お肉美味しかったよ~。

ご馳走様~」


と言ってくれた。

英雄になったんだから収入も僕なんかとはまさに桁違いで、もっとずっと美味しいものを食べているだろうに。

おそらく、リップサービスだろうけどそう言われて悪い気はしない。

ルートさん達が去って、少ししてリーゼ達が戻ってきた。


「ただいま~。

あー、さっぱりした」


「あ、ご飯出来てる!

サツキ君、ありがとう」


「二人とも、おかえりなさい」


僕は返しつつ、山のように盛ったサイコロステーキの皿を二人へ渡した。

野菜もどんどん焼いていく。

焼いては食べ。

食べては焼く。

三人でモリモリ食べながら、二人が温泉に行っていた間のことを話した。


「あ~、そういえば最上階層で見たよ」


ファイゼルさんがお肉をモグモグしつつ、そんなことを言った。

そういえば、この人も最上階層に挑戦してるとか言ってたな。

ということは、ファイゼルさんもかなり強いんだよな。


「なんか、ストレス発散にモンスターしばき倒してるみたい」


ストレス発散??

どういうことだろう?


「いや、詳しくは知らないんだけど。

今年のギフト発現の儀式で出たレアギフトホルダーを、新しく仲間に迎えたは良いけど、その教育に手を焼いてるみたいだよ」


「なになに、跳ねっ返りや反抗的な新人だったの?」


リーゼが興味津々に訊ねる。


「なんて言うか。

生意気なんだって」


「新人なんてそんなもんだよ」


リーゼの返答がはやい。


「いやぁ、うん、そうなんだろうけど。

なんて言うのか、いうこと聞いてくれないんだって」


「プライドが高い新人なのかな。

プライドが高いとそういう子多いし」


プライドが高いと教育係のいうことを聞いてくれないのか。

そういうもんなのかな?


「そうなの?」


つい気になったので、僕はリーゼへ聞いてみた。


「あくまでそういう子が多いって話しね。

なんていうのか、プライドが高い子って言い換えると頑固なんだよ。

自分の中に確固たる考えがあるから、それを曲げないの。

だから、指導係の言うことを聞かない。

なんなら、指導係のことを見下すし。


たとえば、なにかしら教えたとする、するとその教えた物事に対して『それをする意味がわからない』とか平気でのたまうタイプが多い。

さらに『自分のやり方の方が効率いいから』って言ってのけて、そのやり方を推し進めたがために大怪我するタイプ。


そうだなぁ、包丁で例えようか。

小さな子が包丁持ってぶん回しながら、得意げになってたら注意するし、叱る、場合によっては正しい使い方を教えるだろ?

でも、小さい子は自分の好きなように包丁をぶん回したい。

それが小さい子にとっての正しさだから。

大人の言うことを聞かずに包丁ぶん回し続けたら、いつか事故に繋がるし、自分はおろか他の誰かを傷つけるだろ?

プライドが高い新人は、この包丁をぶん回す子供と一緒ってこと。


まず基礎を教えて、それから自分なりの使い方を模索していく方が安全なんだよ。

でも、プライドが高くて頑固な新人ってのはさらに厄介なことに社会経験を積んでないから、世界が狭い。

その狭い世界の中で培ってきた見識が絶対なんだ。

それを侵されそうになると、必死に反抗することもしばしばだし」


「へぇ」


そういうものらしい。

僕はプライドが高くないので、よくわからない思考だ。


「ま、何が言いたいのかって言うと。

教育がめちゃくちゃ大変ってこと。

これも例え話で人によるけど。

指導係の中にはわざと新人に失敗させて、つまりあえて痛い目を見せて、その辺をわからせにかかる人もいる」


社会って怖い。

いや、まぁリンチされる側の僕がこんな感想持つのはおかしいんだけどさ。


「それって、下手すると【教育】じゃなくて【支配】になっちゃうよねぇ」


ファイゼルさんが、焼きたての玉ねぎの串刺しを食べながら言ってきた。


「だから、人に何かを教えるってめっちゃ難しいんだ。

でも上手な人は、そこから新人になんで失敗したのか考えさせる。

考えさせた上で、最初に教えた方法を取らせたり、もっといい方法を新人が考えついたならそれを尊重してやらせてあげたりする。

でも、指導係が教えることって過去の失敗や経験からアップグレードされてきたものばかりだから、新人が考えつくものってのはすでに通り過ぎてきたものばっかりってのもよくある話だよ。

まぁ、なんて言うのかなぁ。

得意満面で自分の考えこそが正義って思ってる新人は、高確率で恥を晒してるってことに気づいていないというか」


リーゼの言葉には珍しくトゲがあった。


「まぁ、でも冒険者なんて職業は我が強くなきゃできないんだけどさ」


たしかに、冒険者はその仕事内容からリーゼが今言ったように我が強いというかクセの強いひとが多い気がする。


とにかくそういう難しいことをしてて、ルートさんはストレスをためているらしい。

なんというか、お疲れ様です、ルートさん。


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― 新着の感想 ―
[良い点] おかずにもおやつにもおつまみにもなる究極料理、それが唐揚げ [気になる点] ご飯にうどんにパンにも合うカレー、余るわけがない(断言) [一言] 自分が全然理解してないコトを理解してない自称…
[良い点] 魔将殺しの英雄視点もちょっとみたい… [気になる点] プライド高い子は大体あとで消えるのよね… 覚える気がない子(本人はあるって言ってるけど的な)の方が厄介だけども… [一言] 流石に英雄…
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