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三人で手分けしてキャンプの準備をする。

リーゼはテントをはったり、BBQセットを組み立ててくれた。

ファイゼルさんは調理の補助。

僕がメインで料理を作っていく。

その時、なにげなく周囲を観察してみた。

あちこちで同じように、食事の準備に取り掛かっている。


あ、ビーフシチューの匂いだ。

そっか材料が揃ってれば、そういう凝ったものも作れるんだ。

向こうからはカレーの匂いがする。

あっちからは、これはミルクの匂いだからクリームシチューかな。

うわぁ、どこも美味しそうなご飯作ってる。

と、自分の仕事に集中だ。

僕は解体して、もはや普通に売ってる肉にしか見えないアークラプトルの肉を準備する。

今回は賽の目切りにしてサイコロステーキだ。

他にはリーゼが持ち込んだ野菜を串刺しにしてBBQだ。

さすがにダンジョンには野菜が無い。

野菜などダンジョンで入手できないものは無くなったら、その時は一度外に買い出しに行くことになっている。

僕は、リーゼがセッティングしてくれたBBQセットを使って、肉を焼いていく。

臭み消しにと使ったニンニクの香りが立つ。


「テント張ったから、俺、もう一度風呂入ってくる」


「野菜の準備終わった~。

私もご飯前にお風呂入ってこよーっと」


リーゼとファイゼルさんがそう言ってきた。


「二人とも、ステーキが冷めないうちに戻ってきてね」


僕は2人に言葉を返して、黙々とサイコロステーキを焼き上げて行く。

二人の背中を見送る。

2人はヒラヒラと手を振ってくれた。

しばらくすると、視線を感じた。

見ると、すぐ近くに金髪碧眼の男性がいた。

歳は十代後半から二十歳くらい。

顔はとても整っている。

美形というやつだ。


青年の視線は僕の焼いている肉に注がれている。

あれ?

この人、どっかで見たことあるよーな??


「あ、ごめんごめん。

美味しそうで、つい」


青年が僕の視線に気づいて、ちょっと言い訳っぽく言ってきた。


「そうですか?

ありがとうございます。

味見してみます?」


僕は言いつつ、焼き上げたサイコロステーキをいくつか、用意していた皿に乗っけて青年の前へ差し出した。


「え、いいの?!

ありがとう!!」


青年は満面の笑みを浮かべると、皿を受け取ってガツガツと食べ始めた。


「うわぁ、美味しい。

これ、何の肉?」


「アークラプトルです」


「…………」


青年が沈黙した。

やがて、


「え??」


聞こえていなかったのかな。


「アークラプトルのサイコロステーキです」


「……トッテモオイシイネ」


「そうですか?

良かったぁ。

アークドラゴンと比べてどうかなぁって思ってたんですけど」


僕も1口味見する。

うんうん、普通にステーキだ。

美味い!


「あのトカゲって食べられたんだ」


青年はぼそっと呟いたかと思うと、


「えっと、これ、君が倒したの?」


僕に訊ねてきた。

とくに隠すことでもないので、正直に答える。


「そうですよ!

やっと一人で倒せるようになって来たところです」


「そっか……。

ところで、他に仲間はいないの?」


「いま、温泉に行ってるんです」


「あぁ、なるほど。

あそこ体力と魔力を回復してくれるし、いい所だよね。

混浴だから、目のやり場に困るけど」


「わかります。

タオルを巻いていても、やっぱり気まずいですよね」


というか、女性の方が体つきを気にせず堂々としているように感じる。

逆に僕もそうだけど、男性の方がやはり色々反応してしまうのかコソコソと隠れるようにというか、隠すようにしてあの温泉を利用しているように見えた。

ただ、男性女性関わらずそれなりの年代の人達は、あまり気にせず堂々としていたけれど。


「それにしても、君、まだギフト発現の儀式を受けてすぐ位だよね?

それなのに、もうこのダンジョンに挑戦するなんて、すごく強いんだね。

もしかして、レアギフトホルダーだったりする?」


「あー、あはは」


僕は笑って誤魔化した。

本当のことを口にして、リンチされるのはごめんだったからだ。

青年はそんな反応をする僕へ気にした風もなく、さらに言ってくる。


「と、そういえば名乗ってなかったね。

俺はルート。

ルート・カイルゲル。

君は?」


どうしよう。

僕が【無能】のギフトホルダーだということは、知っている人は知っている。

もしかしたら、名前だけ独り歩きしてたりするかもしれない。

けど、名乗らない訳にはいかないよな。


「あ、サツキです」


「サツキ君ね。

今レベルいくつ??冒険者ランクは?

このダンジョンに挑戦中ならレベルは最低でも300前後、冒険者ランクはAランク以上だよね?」


「えっと」


二度目の、どうしよう状態だ。


「あ、これ個人情報だった。

ごめんごめん。

質問を変えるよ、パーティランクは?」


「パーティランク?」


聞きなれない言葉だったので、つい聞き返した。


「え、ここには仲間とパーティを組んで挑戦中なんだよね?」


「あ、その、えっと」


どうしよう。

正式にパーティを組んでるわけじゃないし。

そもそも挑戦してるというより、食べ放題に来てるだけなんだけど。

正直に話したとして、理解してもらえるだろうか?

いや、この場合は納得か??

僕が答えあぐねていると、


「あー!!リーダーいたぁああ!!

こんな所で、しかも他所様のご飯まで食べてる!!

ダメでしょ!!

ご迷惑かけちゃ!!」


そんな声が届いた。

女の子の声だ。

僕とルートさんは揃って、声のした方を向く。

そこには僕と同い年か少し上くらいのツインテールの女の子が腰に手を当てて、立っていた。


「仮にも魔将殺しの英雄でしょ!?」


女の子が叫ぶように言った。

僕は、腰が抜けるんじゃ無いかとおもうほど、驚いてしまった。


どうしよう。

天下の英雄に、モンスタージビエ料理食べさせちゃった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ジビエwww ものは言いようだね [一言] 流石に野菜と調味料は持参か 植物系の魔物とかはいないのか
[良い点] モンスタージビエは草 [気になる点] 男女比率が近くなるとオープン度逆になる、あると思います。 親戚一同が集まると男女比率が逆転する我が親族。 [一言] 流石に野菜はなかったか。 植物性モ…
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