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目覚めた僕の視界にまず映ったのは、リーゼの顔だった。


「あ、起きた。

湯あたりするとはなぁ。

大丈夫か?」


「あ、うん」


僕は身動ぎする。

タオルの感触。


「え?」


湿ったタオルがすぐ近くにあった。

視線をリーゼに戻す。

さっきは気づかなかった双丘が飛び込んできた。

タオルがピッタリと張り付いて、その形を鮮明に浮き上がらせている。

もう何度も、リーゼの部屋で見てきたはずのそれ。

続いて今僕が枕にしている物の存在に気づく。

おかしい、この温泉の床は石畳のはずだ。

こんなに柔らかいはずが……。


「うわぁぁぁ!!??」


僕は枕の正体に気づいて、そこから転がり落ちた。

リーゼが膝枕してくれていたらしい。


「おっと、危ない危ない」


リーゼは僕へ手を伸ばして、またも抱きとめてくれた。

そのまま僕の体と、タオルで包まれているリーゼの体が密着する。

抱き枕にされていた頃よりも、リーゼが近い。

タオル一枚の先に、彼女の全てがある。

その事実に、僕はまたのぼせそうになる。


「リ、リーゼ、大丈夫だから。

だから、離して」


「そうか?

でも、鼻血でたからなぁ。

もうちょっと休んでた方がいいぞ」


リーゼがゆっくりと、僕を床に横たえてくれた。

良かった。

僕はホッとした。

そこにファイゼルさんがやってきた。

手には、水の入った瓶があった。


「お、サツキ君気づいたか。

何度も聞いてアレだけど、頭打ってない?

大丈夫??」


「あ、はい、大丈夫です」


「そっかー。じゃあもう少し休んだらこの水飲んでねぇ。

汗も沢山かいてるし」


「ありがとうございます」


そう言って、瓶を置くと去っていった。

どうやら着替えてくるようだ。


「ダンジョン挑戦前に怪我とかしたら笑えないよなぁ」


誰のせいでこんなことになってると思ってるんだろ。

いや、リーゼは自覚ないんだろうな。

ファイゼルさんも。


「そうだ、ファイゼルも一緒に食べ放題合宿やることになったから」


先程見てしまった、リーゼとファイゼルさんのあられもない姿を必死に頭から消そうとしていた僕へ、彼女はそう言ってきた。


「へ?」


そこにファイゼルさんが戻ってきた。


「よろしくねー」


僕たちの会話が聞こえていたのか、ファイゼルさんは戻ってくるなり手を振りながらそう言ってきた。



ファイゼルさんと入れ替わりで、今度はリーゼが着替え始めた。

すぐ近くに荷物を置いていたのだ。

実に器用に手早く、リーゼは着替えを済ませた。

そして、僕を振り返る。

まだ僕が水を飲んでいないことに気づくと、


「飲ませてやろうか?」


とニヤニヤ笑って言ってくる。

いつものからかいだった。


「自分で飲めるから!」


僕は、ゆっくりと瓶の中の水を口に含んだ。

そんな僕を見ていたファイゼルさんが、こんなことを口にした。


「リーゼ、サツキ君のこと大好きだねぇ」


ブッ!!

飲んでいた水を盛大に吹いてしまった。

リーゼを見やると、嬉しそうに彼女は僕を見てそれからファイゼルさんを見て、


「あ、わかる?」


肯定した。


「わかるよ~。

物凄くこの子の事可愛がってるもん」


「なんつーか、兄ちゃんが弟になった感じで構いたくなるんだよ」


「あ、あの喧嘩がめちゃくちゃ強いお兄さん」


僕、リーゼのお兄さんの代わりだったのか。

ショックだ。


「と、く、に」


リーゼが水を飲んでいた僕に近づいて来たかと思うと、ガバッと抱きついてきた。


「このサイズ感!

兄ちゃんそっくりなんだ!!」


「リーゼ!濡れるよ!!」


「大丈夫大丈夫、どうせこの後動くからすぐ乾く」


そういう問題じゃない!!

この後、僕はリーゼの拘束から逃れなんとか服を着て準備を整えた。

それから三人で温泉から出て、二階へと向かう。

ベースキャンプは、モンスターを倒して食材にしてから作ることとなった。


「あの、ファイゼルさんはなんでここに挑戦していたんですか?」


というか、ここに居た時点でこの人もハイランク級の冒険者ということになる。


「スキルを育ててたの。

あと、ここの最上階層にいるゴースト系のモンスターが時々持ってるアイテム目的ね」


なんでも、呪術士にとってのレアアイテムを所持しているゴースト系のモンスターがいてそれの討伐が目的らしい。


「ゴースト系は食べられないんだよなぁ」


リーゼはモンスターを食べられるか否か。

美味しいか不味いかで、善し悪しを判断している節がある。


「リーゼってそればっかりだよねぇ」


ファイゼルさんも苦笑した。

それから三人で二階から五階まで挑戦した。

リーゼが倒し方の見本を見せて、僕がそれを真似するといった具合である。

ファイゼルさんの出番はほとんどなかった。

なんでも、呪ってしまうとリーゼは食べられなくなってしまうのだとか。

僕は呪われたそれらを食べたら、なにかしらスキルを得られるらしいが、今回はあくまで普通に倒して食べるのが目的である。


「素材のために解体はよく聞くけど。

食べるために解体かぁ」


ファイゼルさんがしみじみ言いつつ、倒した小型ドラゴンのアークラプトルを解体しながら言ってくる。


「あとなんだっけ?

自分で倒して調理して食べないと、【無能】のギフトホルダーはスキル取得できないんだっけ?

大変だね」


ファイゼルさんの確認に、僕は頷いた。

というか、この人もそのこと知ってるのか。


「えぇ。

ご存知なんですね」


「リーゼから前教えてもらったんだ」


だろうな、と思った。

そうでなければ、掲示板の住民くらいしか知らないはずだ。


「それにしても、手際いいねぇ」


「慣れました」


「でも、もう一度言うけど大変じゃない?」


「んー、そこまで大変だとは感じないですね。

料理を作るのは好きなので。

それに、食べたらそれだけスキルや体力、魔力が増えますし」


「なるほどねー。

あ、コア発見!

これもらっていい??」


「いいですよ、煮ても焼いても揚げても食べられないので」


コアというのは魔力コアのことだ。

ハイランクモンスターの体内にあり、倒して解体すると手に入る。

冒険者ギルドや商人などが高価買取してくれる代物である。

リーゼは、家賃が払えなくなった時などにこれらを回収し、お金に換えているらしい。

そんな感じで、他にもモンスターを倒して今日の分の食材が確保出来た。

今度は一階にもどってベースキャンプを作らねばならない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ナマモノ系はいいけど、ゾンビやスケルトンは有用スキルあっても食べたくないな… スケルトンは骨齧ってればいいならまだいける…!(いけない [気になる点] そういえばリーゼの助け間に合わなかっ…
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