2
数日後。
僕は、荒野の中心にて天高くそびえる塔を見上げる。
SSSSS級ダンジョン――【神々の修業場】である。
主にハイランク冒険者たちが、己をさらなる高みへと至らせるために挑戦するダンジョンだ。
生息しているモンスターも、一匹で国を滅ぼせるほど強い。
「……リーゼ、ここハイランク冒険者が挑戦するダンジョンじゃないの?」
「そうだな」
「僕、まだDランクなんだけど」
「平気平気、俺なんてスキル無しだから万年Eランクだし」
「……えっ」
知らなかった。
つまり、リーゼは自分で言っていたように冒険者としても最底辺だったのである。
それは自虐でもなんでもない、事実であり現実だ。
冒険者にはその活動、貢献度に応じてランク分けされている。
下からE、D、C、B、A、S、SS、SSSだ。
冒険者ランクは基本的に、当人とギルドの受付嬢かギルドマスターくらいしか確認できないようになっている。
お互いに伝えなければ、基本知らないままだ。
「そ、それなら、挑戦する許可とか降りないんじゃ……」
「冒険者ギルドで手続きすれば、まず降りないな。
でも、手続きしてないから反対されない。
つまり、表向き俺たちは今日ここにいないってことになる」
「いいの?それ?」
「別に勝手に入ったからって、不法侵入で訴えられるわけでも、罰金取られるわけでもないし大丈夫大丈夫。
前も黙って挑戦して、あとでその事バレたけどなにも言われなかったし」
バレたんだ。
「いいか?
世の中心配される、心配してもらえるっていうのはそれだけの価値がある人間だけなんだ。
おもしろいことに、冒険者ギルドの連中からしたら俺も少年も、他者から心配される価値が無いってことだ。
せいぜい大量発生したモンスターを退治してくれる程度の価値がある、程度の認識だ。
それが嫌だって人もいるだろうが、その分こうして俺たちは自由なわけだ」
何を言ってるんだろう、この人。
僕は、リーゼのご都合主義的な考えに呆れるしかない。
「まぁ、でもその分自分のケツは自分で拭かなきゃだけどな」
リーゼはケラケラと笑って見せた。
「大丈夫大丈夫。
不安なら、ステータス確認してみろ。
少なくともここで食べ放題合宿できる程度には、お前は動けるようになってるからさ」
僕の不安を見抜いて、リーゼは言ってくる。
僕は言われるがまま、現在の自分のステータスを確認した。
■■■
○名前:サツキ・アルドール Lv28
○状態:普通
○体力:330/330
○魔力:100/100
○ギフト:無能
○技能:[邪炎Lv22][落雷Lv15][土穿Lv11][暴風Lv13][飛翔Lv5][毒牙Lv28][猛毒Lv27][噛みつきLv29][丸呑みLv33][呪詛返しLv10][ステゴロLv50][剣術Lv15][槍術][鎌][斧][ナイフLv80]
○特殊:[邪眼Lv5]
■■■
大丈夫かなぁ。
この【神々の修行場】に挑戦する人達――SSS級冒険者の人達は、レベルは300以上、体力は1000以上、魔力は500以上が普通なのだ。
加えて、SSS級冒険者の人達はスキルのレベルだってMAXになっているのが普通だ。
僕は全部、平均値にすら届いていない。
リーゼの指導で、たしかにギフト発現の儀式を受けた頃に比べれば、動けるようにはなったけれど。
でも、このダンジョンに挑むには僕はまだまだ弱い。
そんなの、五歳の子供でもわかることだ。
「大丈夫」
リーゼが言ってくる。
自信満々に、笑顔を浮かべて言ってくる。
「スキルの無い俺が、何度も食べ放題合宿やってるんだ。
大丈夫大丈夫」
リーゼの大丈夫は本当に大丈夫だから、凄いなと思う。
「うん」
僕は頷いた。
リーゼはさらにニコッと笑うと、僕の腕を掴む。
僕はリーゼに引っ張られるまま、ダンジョンへ足を踏み入れた。




