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■■■


○名前:サツキ・アルドール

○状態:普通

○ギフト:無能

技能(スキル):[邪炎][落雷][土穿][暴風][飛翔][猛毒][呪詛返し][打撃耐性]

特殊(エクストラ・スキル):[邪眼]


■■■


[猛毒]のスキルが増えている。

それ以外にも増えていた。


[呪詛返し][打撃耐性]って、いつのまに増えたんだろ?


「え、なんで??」


僕の頭は疑問符だらけになった。


「噛まれたからだよ。

つーより、攻撃を受けたからって言った方が正しいな」


リーゼは言いつつ、落ちていたナイフを拾い上げた。

ヒトクイヘビを捌くためにつかっていたナイフだ。

どうやら、さっきのゴタゴタで落としていたらしい。

僕はそのナイフを受け取って、ヒトクイヘビをふたたび捌く。

作業をしている僕に、リーゼが説明してくる。


「これもあまり知られちゃいないんだが。

実は【無能】のギフトホルダーがスキルを得るには、自分で処理して食べる以外に、もう一つ方法がある。

それが、スキルを所持している人、あるいはモンスターからの攻撃をくらってダメージを受けること。

そうすると、くらった攻撃スキルを得られるんだ」


つまり僕はヒトクイヘビから[猛毒]の攻撃を受けたということだ。


「咬まれただけなら、[かみつき]のスキルを得ていたと思うぞ」


「へぇ」


どうせなら噛みつくだけにしといてくれたら良かったのに。

脳裏に、先程の光景がよぎる。

リーゼの赤い舌。

舐められた感触。

そして、彼女の唇を染めた僕の血の赤。

さらに至近距離まで近づいた彼女の、美しい顔。

あまりに扇情的で、非現実的な光景だった。

思い出して、顔がまた熱くなってしまう。


僕はその熱を振り払うように、ブンブンと顔を振った。

ただ一心不乱にヒトクイヘビを捌いていく。

皮を剥いで、内臓を処理する。

そこまで終わると、リーゼがまだウニョウニョと動いているヒトクイヘビの胴体を持ち上げて、近くを流れている小川まで移動した。

その川へヒトクイヘビの体を浮かせ、軽く濯ぐ。

それが終わると、小川の近くに丁度よく開けた場所があったのでそこで火をおこした。

リーゼはマッチで火をつけていた。

手馴れているなぁ、と思っていたけどここで僕は気づいた。


僕とリーゼが出会って数日が経過していた。

しかし、リーゼは一度も魔法を使っていなかった。

ドラゴンを食べた時は、素手でそのドラゴンを倒していた。

僕が幼なじみ達や王都の人たちから暴行を受けた時も、素手だった。

ほかの冒険者なら、たぶん魔法を使っていたと思う。

攻撃魔法じゃないにしても、身体能力を上げる魔法とかを使っていても不思議じゃない。

けど、リーゼは一度もそんな素振りを見せたことがなかった。


(もしかして、魔法が使えないのかな?

リーゼも僕と同じ、【無能】なのかな?)


彼女のステータスは、思い出してみると一度もしっかり見たことはなかった。

僕から見せろと言ったこともなければ、リーゼが見るか、と言ってきたこともない。


僕はヒトクイヘビをナイフでぶつ切りにしながら、リーゼを見た。


「なんだ?

なにかわからないところでもあったか?」


リーゼはそう確認してきた。

聞いた方がいいのかな?

でも、聞かれたくないことだったらちょっとアレだし。


「……リーゼって、火魔法が苦手だったりする?」


「え、なんで??」


「あ、いや、さっきマッチで火をつけてたから」


「なるほど。

いんや、苦手じゃなくて、使えないんだよ。

使えないし、覚えられない」


それは意外な返答だった。


「え?」


「まぁ、見せた方が早いな」


言いつつ、リーゼは彼女のステータスを表示させた。


■■■


○名前:リーゼロッテ・アキレア・フール・キングプロテア

○状態:普通

○職業:【渡航者】【冒険者】


■■■


実にシンプルなステータスだった。

ギフトもスキルも無い、ステータスだ。

代わりに職業という項目があるくらいだ。


「ま、こんな感じでなにもないのよ、俺。

この世界で言うところの、真の意味で神様に嫌われた存在ってわけ」


「…………っ」


僕は言葉を失ってしまった。

つまり彼女は、本当の意味での能無し、【無能】だったのだ。

彼女の触れてはいけない部分、見てはいけない場所を見てしまった。

そんな気分だ。

罪悪感が湧き上がって、


「ごめんなさい」


僕は謝った。


「サツキが謝るところあったか?」


リーゼはいつも通りだった。

いつも通りの、反応だった。

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