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僕が食べることとなったのは、【ヒトクイヘビ】と呼称されているモンスターだ。

その名のごとく、人間どころか家畜の牛や馬を丸呑みできるほどの大蛇のモンスターである。

僕の住んでいた村では被害はなかったので見たことはない。

よその村では、度々被害があったらしいと、耳にしたことがあった。


「噛まれないように気をつけないとだなぁ」


安価が決まってすぐに、リーゼは行動を起こした。

僕たちは身支度を整えて部屋を出ると、そのまま冒険者ギルドへと向かった。

ヒトクイヘビの討伐クエストが出ていないか確認するためだ。

出ていたらそのまま受ければいいし、無ければほかの討伐クエストを受けて、ヒトクイヘビを食べに行くついでに仕事をすればいい、と考えたからだ。


「お、ラッキーだな」


冒険者ギルドにて、クエストボードを確認すると丁度よく《ヒトクイヘビ》の討伐クエストが張り出されていた。

討伐数は20匹だ。


「丸焼き一択だな」


リーゼの中では丸焼き一択らしい。

そういえば、ヘビって食べたことないんだよなぁ。

じいちゃんとばあちゃんが子供の頃は、今よりも農業技術が未熟で、作物は作っても皆王都の方へ持っていかれて、作ってる方はろくな物が食べられなかったって聞いたな。

それで蛇やネズミを捕まえて食べたって。

今は、牛や鶏、なんならイノシシを改良して食べやすくしたブタもいる。

なるほどそう考えると、現代でお腹を空かせるということはないので恵まれた時代なのかもしれない。


それはそうと、なんか視線を感じる。


僕は周囲をキョロキョロと見回してみた。

すると、他の冒険者たちが僕たちを、というよりリーゼを見ていた。

それに気づいたのか、リーゼが、


「気にしなくていいぜ~。

どうせこの前の喧嘩のことで、話題になったんだろ」


とのんびり言ってきた。

この前の喧嘩、というのはおそらく僕へのリンチのことだろう。


「前にもあったんだよ。

冒険者始めたばっかりの頃にさ、ガラの悪い冒険者にウザ絡みされてぶっ飛ばしたことがさ。

その時と同じ雰囲気だ」


リーゼがそう言うならきっとそうなのだろう。

クエスト受注の手続きをして、僕たちは冒険者ギルドを出た。

それから必要な物をすぐ隣にある道具屋で揃える。


「怪我したら大変だからなぁ。

相手ヘビだし」


というか、モンスターだ。

備えはやっておくに越したことはないだろう。

僕たちは準備を整えると、ヒトクイヘビが出る森までやってきた。

森へ踏み込む。

森の入口近くにはいないようで、もう少し奥へ向かうことにする。


どれくらい森の中を進んだ頃のことだったろう。


それは急に目の前に現れた。

ヒトクイヘビがぐったりと、転がっていたのだ。


「お?おおお?」


リーゼが嬉しそうに声をあげた。

ヒトクイヘビは、眠っているのか死んでいるのか動く気配がない。

けれど、モンスターといえど生き物だ。

もしも死んでいるのなら、死臭というか腐臭がしてもいいのにそういった臭いは感じられなかった。

もしかしたら死んだばかりなのかもしれない。


リーゼはおもむろに指を宙で滑らせる。

すると、長めの木の棒を取り出した。

これ、どうやってるんだろう。

そういえば、世の中には【亜空間収納】なるスキルがあると聞いたことがあった。

無制限に物がしまえる道具袋のようなもの、らしい。

……もしもそれなら、あのゴミの山を一時的に入れられたんじゃなかろうか、と考えてしまった。

ただの想像だ。

出来るかどうかは知らない。

仮にできたとしても、リーゼのことだゴミを入れっぱなしにしてそのままということになり兼ねない。


リーゼは取り出した棒で、つんつんとヒトクイヘビをつついてみた。


「死んでるのかなぁ?」


僕が言った時、ヒトクイヘビの頭が持ち上がり、クワッとその大きな顎が開いた。

凶悪そうな牙が見えた。


「うわわわっ?!」


僕が声をあげるのと、リーゼがヒトクイヘビから距離をとって、僕を抱えたのはほぼ同時だった。

リーゼに抱えられて、さらにヒトクイヘビから離れる。

襲ってくるかなと思いきや、来ない。

開いた口は閉じていた。


「なんか変だな」


リーゼが言葉を漏らした。


「ちょっとここにいろ」


リーゼは僕をその場におろすと、再びヒトクイヘビへ近づいた。

そして、またツンツンと棒でつついた。

またクワッと口が開いた。

今度は、体まで膨らませている。

怒っている。

威嚇行動だ。

普通のヘビだったなら、飛びかかられてる頃だ。

ましてやヒトクイヘビはモンスターであの巨体だ。

戦闘になっていても不思議じゃないし、なんなら僕なんてとっくにペロリと丸呑みされていても不思議ではない。

けれど、ヒトクイヘビがリーゼへ飛びかかる気配は無かった。

リーゼが僕のところに戻ってきた。


「もしかしたら他の大きなモンスター、ドラゴンとかに踏んづけられでもしたのかもなぁ。

威嚇するだけで飛びかかってこない」


なるほど、有り得そうなことだ。


「まぁ、討伐する前に腹ごしらえをしよう」


僕は、ヒトクイヘビを見た。

アレを食べるのかぁ。

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