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安価をする直前、耳慣れない言葉が出てきた。


「れんど?」


粘土や煉瓦なら知っている。

首を傾げていると、掲示板内で説明が書き込まれていった。

端的に言うとレベル上げのことらしい。

僕のステータスにはレベル表記はない。

けれど他の人には、その人自身の強さやスキルの強化度などが数字で表される。

レベルとはその事だ。


レベル上げのことを《練度》って言うんだ、知らなかった。


「古い言い回しだからなぁ」


リーゼがのんびりと言う。

安価が開始された。

タイトルにもある通り、僕が食べるモンスターを決めるのだ。

と、そこで疑問が浮かぶ。

それは些細ながら、少し怖気の走る疑問だった。

【無能】のギフトホルダーである僕がスキルを得るには、モンスターを食べなければならない。

つまり、他のスキル持ちを自分の手で命をうばい、口にするということだ。

今の所、スレ民やリーゼはモンスターを食べる方向で話を進めている。

けれど、でも、それなら……。


「…………」


僕の中に湧き上がった疑問、考え。

僕はリーゼを見た。

リーゼは楽しそうに掲示板を見ている。

僕は意を決して、疑問を書き込んだ。

その書き込みを見たリーゼの視線が、横から突き刺さる。


「おや、気づいたか」


リーゼの短い言葉が届いた。

僕が掲示板に書き込んだのはこんなことだった。


■■■


69:能無し

その、こんなこと書くと怖がられると思うんだけど

人を食べろ、って言わないんだね

【無能】のギフトホルダーがスキルを得られる方法が、教えて貰ったとおりなら、レアスキル持ちを食べろって言われても不思議じゃないから


■■■


僕はリーゼを見つめ返す。

リーゼは舌をペロッとだして、てへっとしていた。


「僕になにか隠してることがあるってこと?」


「うーん、隠してるとかじゃなくて、サツキにはあんま関係ない事だから。

言わなかったというか。

話すにしても、初心者の今じゃなくてもっと色々知ってからの方がいいかなって判断したんだよ」


リーゼは悪びれずに言ってくる。

彼女もスレ民も優しい。

だから、この言葉に嘘偽りは無いのだろう。

でも、気になる。

気になってしまう。

このあいだにも、スレ民たちの書き込みが行われた。

そのひとつに、《人肉食はオススメしないぞ》という書き込みがあった。

理由も添えられている。

どうやら人が人を食べると病気になるらしい。

禁忌や道徳的なものから説明されるのかなと思いきや、そうではなかった。

そして、スレ民達はこの質問に慣れている感じがした。


僕は以前、村に立ち寄った冒険者から聞いた話を思い出した。

山で遭難した人が、その時不幸にも先に天へ召されてしまった仲間を飢えから食べてしまった話だ。

それを例に出して書き込んでみる。


すると、《それは例外中の例外》と返された。

そんなことよりも、今は冒険者としてやっていくための能力を身につけよう、という反応をされてしまう。

誰も、僕の疑問に答えてくれない。

というか、ゴブリンの脳みそを食べた話などが出てきた。

かなりワイルドな食べ方まで紹介されてしまった。

生きたまま頭かち割るって、なに?

しかも、生のまま脳みそを食べるって、なに??

ちなみに生食は今は禁じられていて、火を通して食べるらしい。


世の中って広い。


そう実感せざるをえなかった。

地味にオーガも提案される。

この人たち、僕になにを食べさせようとしてるんだろ。

あ、安価決まった。

……ヘビ、か。

うーん、まぁ、二足歩行の人型よりは禁忌感情というか忌避感情はない、かな?

その流れで、なぜ人型モンスターをオススメするのかも書き込まれた。

要は使えるスキルを所持している可能性が高いかららしい。


それはそうと、結局僕の疑問には誰も答えてくれなかった。

でも、冒険者として色々知って実力をつければ、教えてくれるかもしれない。

それならその時まで待つのもアリかな。


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