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僕は、リーゼがよく食事をするという店に連れてこられた。
お姫様抱っこのまま、入る。
他の客の視線が突き刺さる。
「おー、おつかれー」
「リーゼがまた勝ったぞー」
「アイツらもバカだよなぁ、リーゼを相手にするなんて」
「って、その子が自慢してた相棒か?」
「うわぁ、ボロボロやん」
女性客が多い。
その客の一人がフラフラと、ジョッキをグビグビしながら近づいてきた。
それも、女性客だった。
豊満な胸が歩く度に、たゆんたゆんと揺れている。
「う、あ、あああ」
顔が火照る。
一瞬、痛みを忘れるほどの衝撃があった。
それは、白と金を基調とした神官服を着た、金髪碧眼の女性だった。
「めっちゃ殺されかけてるねぇ」
楽しそうに、その神官服の女性が言ってくる。
(おっパイが喋ってる)
胸が豊満過ぎて、そう見えてしまったのだ。
「だろー?
回復してくれ」
おっパイ、もとい、女性へリーゼがそう頼む。
「おーけー、おーけー。
痛いの痛いの、さっき暴行してた子達に飛んでけー!」
女性がそんなことを口にしながら、片方の手の指を空中に滑らせた。
魔法陣が展開する。
もう片方の手にある、ジョッキにまた口をつけた。
僕の身体を魔法陣が包み込む。
魔法特有の青白い光に包まれる。
すぅっと、痛みが消えていく。
傷も消える。
あっという間に、僕の怪我が治った。
「さっすが、呪術士。
相変わらずいい腕してんね」
「とーぜん」
リーゼの言葉に、女性がエヘンと胸を張る。
「ほら、もう立てるだろ?」
リーゼが僕を下ろした。
「あ、その、ありがとうございました」
僕は、女性にお礼を言う。
頭もさげた。
「いーのいーの」
女性がにこやかに言ってくる。
「マスター!彼女にジョッキ二杯やって!
俺の奢りで!」
リーゼが店の奥、カウンターの向こうにいる青年へ声をかけた。
二十歳くらいの男性だ。
男性は頷く。
「わーい!!リーゼ大好きー」
女性はそんなことを口にして、カウンター席に座る。
すぐにジョッキへ、目一杯注がれたアルコールが出てきた。
アルコールは飲んだことないけれど、もしかして栄養満点なのかもしれない、と女性の胸を見ながら思ってしまった。
「それにしても、一度帰ったろ?
どうしたんだ、戻ってきて?」
リーゼに手を引かれ、テーブル席に腰を下ろす。
テーブルを挟んで向かい側には、リーゼが座った。
そして、何故ここにいるのか訊かれた。
僕は、うつむいた。
そして、ポツリ、ポツリと自分の身に起きたことを説明した。
店はガヤガヤと騒々しい。
でも、僕の話が進むにつれて少しづつ静かになっていった。
そして、全てを話し終える。
俯いていた顔を上げると、リーゼがドン引きしていた。
ふと、店がシンと静まり返っていることに気づく。
なんとなく店内を見回すと、他の客たちもドン引きしていた。
「えぇ、【無能】が嫌われてるってのは知ってたけど、そこまでするか?」
「よくもまぁ、そこまで他人に興味が持てるなぁ」
「暇なんだろ」
この店内にいる人たちは、話の流れで僕が【無能】とわかっても、全く気にしていないようだった。
「放火って何年ブタ箱行きだったっけ?」
「法律くわしくないから知らん。
でも、死人が出たら基本極刑だったと思う」
「その後に、さっきのリンチだろ?
少年、頑張ったなぁ」
中には励ましてくれる人もいた。
優しいなぁ。
そこに、マスターが飲み物を持ってやってきた。
リーゼが頼んだやつかなと思ったら、違った。
僕の前に、ホットミルクが置かれる。
「よく頑張ったみたいだから、ご褒美。
温かいうちにどうぞ」
なんてマスターは言って、厨房に戻った。
「あ、ありがとうございます」
湯気のたつホットミルクを見る。
言葉に甘えよう。
僕はカップに口をつけた。
優しい甘さが口の中に広がる。
温かさが、じんわりと身体全体に伝わっていく。
コクコクとミルクを飲み進めていると、おもむろにリーゼが言ってきた。
「よし、少年。
今日から一緒に住もう!!」
ぶっ。
一瞬ミルクを吹き出しそうになるが、なんとかこらえた。
「へ?」
リーゼは、やっぱり楽しそうに笑っている。
「部屋は狭いが、同じベッドで寝られるだろ。
サツキは細くて小さいから、余裕余裕」
ぶほっ。
さらに続いた言葉に、今度こそ僕は噎せてしまった。




