俺のステータスを見せろ
「なるほどなるほど、だから止めてくれたってわけだ。優しいね。ありがとう」
ふう、これでようやく話し合える人ができた。このライノとかいう少女に少しでも今俺に起きていることを
「でもホントかな」
パァン!!!
………は?
「は?」
固まって動けない。
あれだけ俺は真剣にやめろといったのにも関わらず、ライノはこめかみ付近を叩いた。そして、爆死した。
どうすればこれを防ぐことができるのか。
俺が会う人は皆、こめかみあたりを叩いて死んでいく。
あれに何の意味があるのだろう。
俺も同じようにこめかみを叩いて爆死して、罪を償うべきだろうか。
試しに俺も叩いてみたが何もならない。
おっさんはステータスを見せろなどと言っていた。
レインとかいうお姫様は俺の素性を知ろうとしていた。
「叩くと、相手のステータスがわかるのか?」
「気づくの遅くない?」
不意に声がし、咄嗟に俺は振り向いた。
すると、そこにはあのライノが成長したような姿の女性が、こちらを見ながらニヤけていた。
「なーるほどね、たしかに死んじゃった。
このボディ使い古してるから使いたくなかったんだけどな〜。まあ油断した私が悪いか。しかしタイムラグ一切なしとはね」
「ライノ……あんたなのか?」
「そです。記憶を引き継いだ別個体ではあるけどねえ。私実験とかいろいろやってからさ、ミスったときに備えて身体のスペア用意してんのよ。んでちょうどよくあんたのスキル?かなんかで死んだわけ」
「な、なるほど……?」
ペラペラとよくしゃべる少女……いやグラマラスな体型になり、身長も170近くあるその姿は少女と呼ぶには似つかわしくなかった。妖艶な美女ってところだ。
曰く、身体はスペアだという……そんな技術がこの世界にあったのか? 薄々感づいてきていたが、ここは俺の知っている世界ではない?
「ライノ、ここは一体なんなんだ?」
「あんたの世界とは別の世界。異世界ってやつだね。
最初に会った時に既に言ったけど、もう一回言うと、あんたを呼んだのは理由があってね」
「それが終われば、俺は元の世界に戻れるのか?」
「戻りたけりゃあね。その頃には自分が何者かも思い出してる頃だろうよ」
「………あ」
言われてみるまで気づかなかった。
俺は何者だ? 俺はここに来るまで何をしていた?
名前も素性もわからない。
自分の家の光景だけは思い出せた。だから自宅で寝たところまでは覚えている。だがそれまでの記憶がない。
「そうだ、俺のステータスを見ればわかるはずだ。
相手のステータスでなく、自分のステータスを見る方法を教えてくれ」
「あんた私を殺しておいてその意味わかってんの?」
「………そう、だった」
俺のステータスを見たやつは全員死ぬ。
きっとそれは例外でなく、俺も死ぬのだろう。
見たやつがステータスウインドウを開く一瞬は今まで見えていたが、見たやつが先に死んだ為にステータスウインドウは閉じられ、俺は今まで死んでいなかった。
「目閉じて、おでこ2回叩いたら、ほら」
ライノがやってみせた。
「こうやって出せる」
ライノ レベル47 魔科学使い
そこからパワーやら魔力やら持ち物やらが書かれていた。
「まあ自殺したくなった時にでもやりなよ。
同じことすればステータスウインドウは消えるから」
額をトントンと2回。ライノのステータスウインドウが閉じた。
「で、ようやく本題だけど、あんたにゃあ、私の尻拭いをしてもらいたいんだよ」
「尻拭い?」
「あんたみたいなスキル持ったやつを何人も今まで呼んじゃってさあ、魔物掃討はできたんだけど、誰も帰ってくんねえんだよね。そこであんたに全部ぶっ殺してもらおうと思って呼んだ」
「いやあんたの失態ならあんたがやれよ」
「いやまあ身体のスペアも無限じゃないしぃ、
私攻撃スキルに特化してるわけじゃねえからねえ……それにぃ」
ライノはぐいと顔を近づけてきて、
「自分が誰かわかって、帰りたくねえの?」
「……脅しかよ」
「脅しですらないかもね。だってあんたの記憶が戻る保証なんてないわけだしぃ、まあでもそういうときってさ、がむしゃらになんかするしかないじゃん? 当面ここで面倒見てやっからさ。私、金あるし。第一、異世界に来たあんたがこの世界で働けると思う?」
自信はない。確かに何かしていくうちに手がかりも掴めるかもしれない。
「はいじゃあ決まりね。とりあえず手始めにこの国の城下町の宿で寝とるカナタってやつ、さっきのパァンってやつで消してくれや」
「……」
自分が何者かわからない。
俺は俺が誰かを知る為に、ひとまずはこの女の言うことを聞くことにした。




