俺のステータスを見るな
「え、あ、ごめん………」
そんな、意味のない言葉がこぼれ落ちるしかできなかった。呆然とした俺の目の前に広がる血の海。
この部屋に逃げ込んだはいいが、これからどうしろというのか。それをこのレインという王女様は導いてくれるかもしれなかったのに、突然死んだ。
一度おさまっていた身体の奥のゾワゾワした感情がまた溢れそうになる。どうしたらいい。
事が鎮まるまでここに隠れているべきか?
扉から出てまた逃げ道を探すか?
それともこの部屋に何か、ここから逃げ出す為の方法がないか探すか?
倒れる王女の死体にはもう目を向けず、俺は部屋中のものを片っ端から調べた。
読めない文字の本、中世の貴族のような服、デジタル社会における文明の利器と呼べるようなものはない。
はっとして、外部に連絡して助けに来てもらおうと思った。きっと家族でも友人でも電話できれば助けてくれるはずだ。だが電話と思われるものはない。
なんなんだここは。
何も脱出の手がかりが得られず頭を抱えていると、ガチャリと、俺が入ってきた扉が開く音がした。
あ、詰んだ、と思った。
「おーおー、派手にやっとんねえ」
あのおっさんの仲間の服装ではない。
それどころか、身長も120cmあるかないか、赤いショートヘアの、眼鏡をした少女が現れた。
「まあすまんよすまんよ。あたしが召喚の座標ズラしちゃったのが悪かった。なんもわからんまま追いかけられてスキル使っちゃったってとこだろ。まあやっちゃったもんはしゃーないよ」
ペラペラとよく話す子供だ。
「とりあえずあんたを呼んだ理由はあるんだ。それを果たさずに殺されちゃ呼び損だからね。ついてきな」
まだ俺は何も言っていないが、赤髪の少女は踵を返して、扉から出た。
「は……?」
固まっていると、
「何してる、早くついてきな」
また扉が開いて、少女が顔を出して急かした。
俺は慌てて少女の後ろをついていくことにした。
少女はここの地理に詳しいようで、すいすいと進んでいく。それよりも謎だったのが、さっきから何人かの兵士にすれ違ってもいるが、特に何か尋ねられたりもせずに進めていることだ。
「あんた自身の姿はしっかりと見られたわけじゃないんだろう。一人だったら、そらその妙な格好で犯人だと思われるだろうが、あたしが連れてるってだけで、まあ、お咎めなくなるんだよ」
なるほど、何かすごい権力者なんだろうか。
「また変なやつ連れてきたな、って思われるだけで済むから」
……なるほど。
少女の後をついていって5分程で、この建物の地下だと思われる階層に入り、薄暗い部屋に到着した。
「ここがあたし、ライノ・ライノ博士の研究室。
ライノでいいわ。えーっと」
そう言って、ライノと名乗った少女は、例によってこめかみのーーー
「ちょっと待ったぁ!!!!」
「!?」
さっきまで動揺しっぱなしだった俺が突然叫び声をあげたことで、ライノは驚いて体制を崩し、その場に座り込んだ。
「な、なんなのよあんた……」
「いや本当ごめん。でも流石に3回連続はキツい」
「はぁ?」
俺の目の前で死んだ2人は、2人ともこみかみ付近を叩いた次の瞬間、頭が吹き飛んで死んでいた。
であれば、ライノが今しようとした動きも、きっとあの場で止めていなければ死んでいただろう。
「一番重要だから言っておくよ。
俺の前で、さっきあんたがしそうになってたみたいに、
こみかみ付近を、触ったやつは、
頭が破裂して死ぬ」




