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銀河のかなたより  作者: 羽月蒔ノ零
銀河のかなたより
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その6

 3日後、自宅で彼らを待っていると、前と同じように何もない空間が突然開いた。


「やあヒナタ。3日ぶり!」

「やっほ! 元気だった?」

「こんにちは。ヒナタ君!」


「やあみんな! 元気だったよ。わざわざ迎えに来てくれてありがとう。昨日とおとといは色々と見学してたの?」


「ああ。そうなのだ。とても有意義な時間を過ごせたのだが、よくわからないこともたくさんあった。なのでヒナタに色々と聞いてみたいのだが、よろしいかな?」


「うん。僕にわかることなら」


「よし、それではとりあえず、また新宿へ向かおう」


 4人を乗せた宇宙船は、再び新宿へと向かい、4人が初めて出会った場所に降り立った。


「よし、着いた。さあみんな、降りよう」


 4人で街を歩きながら、ヒナタの記憶を探しつつ、まずユイカリアから質問があった。


「まず最初に不思議に思ったのがね、車道と歩道についてなんだけど、これじゃあ車が歩行者にぶつかることが多いんじゃない?」


「うん。そうだね。交通事故はよくあるよ」


「酷い場合は死んじゃうよね? なのになぜもっとしっかり分けないのかな?」


「んー、なんでだろう。お金がかかるからかなあ。ちなみに日本国内での交通事故の死者数は年間3000人くらいいるんだ」


「さ、3000人!?!?」3人が一斉に驚いていた。

「3人とか、30人とかの間違いではないのか?」

「いや、3000人だよ。昔はもっといたみたい。10000人くらいだったかなあ」


「い、10000人!?!?!?」またもや3人が一斉に驚いた。


「おそらく来年も再来年も同じくらいの人が交通事故で亡くなるだろうけど、車がないと現代社会は成り立たないから、しょうがないことだと思ってるんだろうね。あと、『自分は事故に遭わない』っていう謎の自信もあるんだと思う」


「ふーむ。地球人は皆、楽観的に物事を捉えてるのだろうか。……ん? そういえばヒナタはさっき、『日本国内での交通事故の死者』と言ったか?」


「うん。そうだね」


「え!? じゃあ他の国も合わせると、一体どれだけの人が交通事故で亡くなってるの?」


「それは聞いたことがないなあ。けど、数えきれないほどの人が亡くなってるだろうねえ」


「なんと……。ますますわからなくなってきた」


「あとね、いろいろなところで目にしたんだけど、私たちの言語には翻訳できなかった言葉があって……。『自殺』っていう言葉なんだけど、これって……」


「うん。自分で自分の命を絶つことだよ」


「やっぱりそうなんだ……。なんでそんなことをするの?」


「んー、生きるのが嫌になったからじゃないかな。ちなみに日本には自殺者が年間30000人くらいいるんだ」


「さ、30000人!?!?!?」

「3人とか、30人とかの間違いじゃなくて?」

「うん。30000人だよ。交通事故の死者より10倍ほど多いんだ。日本は特に自殺が多くて、自殺大国なんてよばれてるんだ」


「なんということだ。地球人、特に日本人は、悲観的に物事を捉えているのだろうか」


「あとね、ヒナタ君、信号と歩行者についてなんですけど、赤信号は止まらなきゃいけないんですよね? 車はほとんど止まっていましたけど、歩行者の場合は赤信号を無視してる人が何人もいて……。あれは一体なぜなんですか?」


「んー、たいした理由はないと思うよ。立ち止まるのが面倒とか、そんな理由だと思う」


「けど、信号無視をすれば、車に轢かれる可能性がありますよね? 自分の命を危険に晒してまで、立ち止まるのが嫌なのかな……」


「それと、信号無視をするのは圧倒的に大人の方が多かったんのだ。というより、信号無視をしている子供なんて一人も見かけなかったかもしれん。地球の大人はこんなに簡単なルールも守れないのか?」


「うん……。地球の大人はみんな身勝手なんだ。大人はみんな嘘つきで、自分のことしか考えてない。所詮大人も子供なんだよ。『子供として生きることを禁じられた子供』、『大人として生きることを強制された子供』、それが大人の正体だと思う。もしかしたら、子供よりも子供かもしれない。そんな『大きい子供たち』が、自分を偽って大人を演じているだけなんだ。そうやって無理して生きてるから、大人はみんな汚いんだ。自分たちだってきっとわかってるはずだよ。自分は子供のままだってこと。自分が本当はただの子供で、無理して大人を演じているだけだってこと。けど、それがばれるのが怖くて仕方ないんだ。だから大人は子供を見下す。『お前たちは子供だ。俺たちは大人だ。俺たちの方が凄いんだ』そうやって自分は子供とはまったく異なる存在だと思い込むことで、自分は大人なんだと無理矢理自分に言い聞かせてるんだ」


「ふーむ。なかなか複雑なものがあるようだなあ。ヒナタはどんな大人になりたいのだ?」


「んー、もっと子供の立場、子供の想いを尊重できるような大人になりたいなあ。……けどね、」


「うむ。なんだい?」


「きっと大人たちも、昔は僕と同じようなことを考えていたんじゃないかなって思うんだ。大人が嫌いで、自分はあんな風にはならない。自分はもっと子供に寄り添えるような大人になるって。けど、みんな普通の大人になってしまった。子供の頃大嫌いだったはずのあの大人に、いつの間にかなってしまってたんだ。そして、僕もいつかそうなってしまう気がするんだ。こんなに大人を嫌ってるのに、いつの間にか、大っ嫌いだったはずの、身勝手で、嘘つきで、子供を見下す、そんな大人に、僕もなってしまう気がするんだ。それが嫌で嫌で、怖くて怖くて仕方ないんだ。……みんなの星はしっかりしてる大人が多そうだね。みんなもしっかりしてるし。羨ましいよ」


「うーむ。難しい問題だ……。けれど、ヒナタは透き通った心を持っておる。きっと、子供に寄り添えるような大人になれると思うよ」


「うん。私もそう思う」


「わたしも。ヒナタ君は、他の星から来たわたしたちのことを、すぐに受け入れてくれたもの。とても優しくて、純粋な心を持っていると思います」


「ありがとう。そう言われると、なんか照れちゃうな」

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