その4
「ところで、そのリードセルワールドとは一体どこにあるのだ?」
「えーっとね、あ、ちょっと地図で調べてみるね」
「ほお。これはスマートフォンというやつか。地図も見られるのだな」
「うん。電話以外にも色々できるんだ。よし、このあたりだよ」
「なるほど。目的地に設定しよう。よし! それでは、リードセルワールドへ出発だ!」
4人を乗せた宇宙船は無音で浮かび上がり、リードセルワールドへと向かった。
「うわあ、ほんとに飛ぶんだね。凄い技術だなあ」
「地球にも飛行機やロケットがあるではないか」
「いやー、あんなのとは全然違うよ。こんなに静かで安定感があるなんて」
「あ! なんか、明らかに周りとは雰囲気が違うエリアが見えてきた。もしかしてあれがリードセルワールド?」
「え!? あ、うん! そうそう! あれがリードセルワールド。ひぇー、もう着いたんだ! まだ数分しか経ってないのに」
「ここにブランコよりももっとすごいものがあるんですね。なんかわくわくしてきました。ヒナタ君は来たことあるんですか?」
「うん。1回だけね」
「お、いい場所を見つけたぞ! あの場所に着陸しよう」
フィーモが見つけた人気のない場所に宇宙船を着陸させ、4人は宇宙船を降りた。
「ここがリードセルワールドだよ」
「おおー。これがユーエンチというものかあ」
「なんかすごいね~」
「楽しみです! わくわくするなあ」
「よし、とにかく行ってみよう! あれ? なに?」
「まず最初に、チケットを買わなきゃいけないんだ」
「ほお。なるほど」
「そういえば、みんなお金って持ってるの?」
「持ってるとも。両替してきたのだ。む? ちょっと高いなあ……」
「ジェットコースターに乗るだけならこっちの値段で大丈夫だよ」
「おお。これなら良心的だ。とりあえずこっちにしよう」
4人は入園料とのりもの券を購入し、リードセルワールドへと入園した。
「いろんな乗り物があるなあ。あの丸いのにも乗ってみたい」
「観覧車かあ。けど宇宙船に乗り慣れてたら物足りないかもよ」
「うわあ! 何あれ! 真上に人が飛んでったと思ったら今度は落ちてきた!」
「えええええ! こっちも凄いですよ! あの地球の宇宙船のような乗り物! なんかブランコみたいな動きだなと思ってたら、どんどん上がってって、遂に360度回転しちゃいました!」
「おお! 今、高いところから人が飛び降りたぞ! けどびよ~んてなってる。一体何なのだここは……」
「あ、あれだよ。あれがジェットコースター」
日奈太が指差すその先に、巨大な蛇、いや、龍のような建造物がそびえ立っている。
「おお……、ね、念のため確認なのだが、い、今から、あ、あれに乗るのか?」
「うん。そうだよ」
「あれ? きゅ、急に気分が……」
「何言ってんのフィーモ、行くよ!」
「船長頑張って!」
「ん? もしかしてここに並んでる人たちって、みんなジェットコースターに乗る人たち?」
「うん。人気のある乗り物はこうやって列ができるんだ。さあ、僕たちも並ぼう」
4人はジェットコースターの列へと並んだ。
「すごい人気だね。これだけの人が並ぶってことは、相当楽しいんだろうなあ」
「わくわくしますね。一体どんな感じなんだろう」
「……」
「あれ? フィーモ、なんかおとなしいね。怖いの?」
「怖い」
「大丈夫ですよ。みんな楽しんでるし。ヒナタ君、大丈夫だよね?」
「うん。きっと大丈夫だよ。このジェットコースターは出来て何十年も経つけど、事故は一度も起きてないはずだから」
あっという間に順番が回ってきた。日奈太とフィーモが先頭に、2列目にユイカリアとマーリが乗った。
「なぜよりによって先頭なのだ……」
「うわあ、なんか緊張するなあ!」
「いよいよですね! わたしもドキドキしてきました!」
「ねえ、これ、落ちない? 壊れない? 飛んでったりしない? ほんとに大丈夫?」
『ガチャン!』
「ぎええええ! なんだ!? なんだ!?」
遂にジェットコースターが出発した。ガタンガタンと音を立てながら、少しずつ少しずつ高所へと登ってゆく。
「うわー! 高い高い~」
「宇宙船から眺めるのとは雰囲気がまるっきり違いますね!」
「……」
頂上へとたどり着いたコースターは、まるで天空の世界にいるかのような絶景を見せてくれたと思いきや、次の瞬間、奈落の底へと叩き落すがごとく、一気に急降下した。
「ぎええええええ」
「キャー!」
「うわあー!」
……そういえば、家族以外の人とジェットコースターに乗るのはこれが初めてだ。遊園地なんて、家族としか来たことがなかったから。
『友達』……、で、いいのかな?
みんなは僕のこと、どう思ってるんだろう……?