その10
「なんか、今でもうまく信じられないな。こうしてみんなと出会えたこと……。3日前、ほんとに突然だったよね。ちょうどこのあたりで……」
「ほんとだね。思えば、きっかけはフィーモのうっかりから……」
「そうですね……。船長がワズレイを作動させたことで、ヒナタ君と出会えた」
「まさか私のうっかりがきっかけで、地球人の友達ができるとは思っていなかった」
「……ありがとう。フィーモ」
「ん?」
「僕のこと、『友達』って言ってくれて」
「ヒナタ、そんなの当たり前ではないか。私だけじゃない。ユイカリアもマーリも、そう思っているよ。ヒナタは、私たち3人の、大切な友達だ」
「うん。そのとおり!」
「はい! わたしも同じ気持ちです!」
「ユイカリアも、マーリも、本当にありがとう」
「ところでヒナタよ……、大変言いにくいのだが……、その……」
「うん。わかってる。『ワズレイ』を使わなきゃいけないんだよね」
「……うむ。そうなのだ。大変心苦しいのだが……。しかも、今回は前と違って、『ヒナタ』の、『私たち3人に関する記憶』を消さなければならない。そして、その記憶は、戻ることがないんだ……」
「気にしないで。僕はもう覚悟ができてる。それに、たとえ僕がみんなと過ごした2日間の記憶を失ったとしても、みんなと共に過ごした事実までが消えてしまうわけじゃない。たとえ僕がみんなのことを忘れてしまったとしても、みんなと過ごした2日間は、僕の一生の宝物だよ」
「ヒナタ……」
「それに、みんなの記憶までが消えちゃうわけじゃないんだよね? だったら大丈夫だよ。みんなが僕のことを覚えていてくれるなら、何の問題もない。その代わり、もしも、もしも僕が、いつかみんなの星を訪れることがあったなら……、その時は、地球で一緒に過ごした2日間のこと、詳しく教えてほしいな」
「もちろんだとも! 私がジェットコースターを大変怖がっていたことも、包み隠さず話そう!」
「うん。約束だよ!」
「ああ。約束だ!」
「え? それは何?」
「我々の星では、約束事をする時にはこうやって自分と相手の手のひら同士を合わせるんだ」
「そうなんだあ。まだまだ知らないこと、たくさんあるなあ」
そう言って、日奈太はフィーモと手のひらを合わせた。
「いつか、きっとまた会いましょう。私たちは、ヒナタのこと、絶対に絶対に、忘れないからね」
ユイカリアとも手のひらを合わせ、
「ヒナタ君……、正直、寂しいです。本当はもっと、一緒に過ごしたかった。もっともっと、いろんなところへ一緒に行きたかった。……けれど、2日間一緒に過ごせただけでも、ものすごい奇跡なんですよね……。本来わたしたちは、きっと出会うはずがなかった……。けれど、奇跡が起こって、わたしたちはこうして出会えた。それだけで、それだけで十分なのに、やっぱりどうしても、欲張りになってしまいます。わたしも、ヒナタ君のこと、絶対に忘れません。いつか、いつかまた会いましょう。きっと……いえ、絶対に……」
マーリとも、手のひらを合わせた。
「では……、そろそろ行こうか……」
何もない空間が突然開き、彼らは船内へと入った。
「みんな……、本当にありがとう……」
日奈太が優しく微笑みながら、そっと頷いた。
「ヒナタ……」
「ありがとう、ヒナタ……」
「ヒナタ君……、本当にありがとう……」
「では……、押すよ……」
ユイカリアとマーリが、そっと頷いた。
次の瞬間、まるで日奈太を優しく包み込むかのように、ワズレイが光った……。




