14話. 謎の力 後編
「な、なんだ!?この光は」
「カ...カズマくん??」
ヴァルディフォードは暗黒剣の刃が折れると同時に後ろへと引き下がり、目を丸くしていた。一方で、リリシア先生は頭の中が真っ白で呆然としていた。
あの時、俺は確実に死んでいた。しかし突き抜かれたはずの心臓は元通りになっていて、俺の体は完治し、平常に動いていた。そして、俺の体から出ていた紫色の光は俺の体を取り巻いていた。
「ヴァルディフォード、貴様はここで死ぬ!終わりだ!」
「な...何だと?」
俺はヴァルディフォードに「死を覚悟しろ」という意味を込めてヴァルディフォードに対して怒鳴った。そして、俺はヴァルディフォードに向けてある攻撃を仕掛けた。
「魂斬撃!」
すると、その斬撃はヴァルディフォードの右腕をキレイに切り落とした。
「クゥ!こ...これは」
ヴァルディフォードは右腕を再生しようとしていたが、一切再生することは無かった。闇属性の治癒魔法を使ってもだ。
この時、ヴァルディフォードは「ヤバい」と思っただろう。それは、闇属性の魔法さえ一切効かなかったからだ。
ヴァルディフォードは流石に俺に勝てないと思ったのか、撤退する行動を取り始めた。
「魂空間!」
しかし、俺は俺とヴァルディフォードの周りに一つの青色の結界を張り、ヴァルディフォードの撤退を阻止した。この結界は周りから結界内の様子を伺うこともできないし、結界内からも外の様子を伺うことはできない。つまり、窓と扉が無い部屋と同じ状態ってことだ。
「何をしてる!?貴様はここで死ぬんだ。今、俺と貴様の周りに一つの結界を張った。もう逃げることはできない」
「ハハハハハ。そうか、そうか。僕がここで死ぬのか。じゃあ、ここで君を殺さないとな!?」
一度は撤退を試みたヴァルディフォードだったが、今はだいぶ余裕な感じだった。そして、ある行動を取り始めた。
「目覚めよ。暗黒闇龍!」
すると、ヴァルディフォードの体へ変化が起き始めた。ヴァルディフォードの体は巨人ぐらいの大きさまで膨らみ、角も長さが3倍ぐらいになった。そして腕や脚には筋肉が増え、黒い龍がヴァルディフォードの体全体を取り巻いていた。
「ハハハハハ。この姿を人間に見せたのはこれが初めてだ。光栄に思え」
ヴァルディフォードは体だけではなく、口調なども変わっていた。
「そうか。では掛かってこい!」
「ああ。お前の望み通り、殺してやる!」
今この瞬間、俺とヴァルディフォードの本当の戦いが始まった。と、思ったのだが...この戦いは5秒で決着が付いた。
ヴァルディフォードは進化後に、一本の巨大な魔剣を作った。
「暗黒闇剣!」
暗黒闇剣を左手で持ってヴァルディフォードは俺の下へ突進してきた。そして、俺の首を取るつもりで暗黒闇剣を振った。すると、俺の首は吹き飛んだ。しかし、俺の首は1秒も経たない間に再生し、俺はヴァルディフォードに向けて最後の一撃を入れた。
「魂光!!」
次の瞬間、魂光はヴァルディフォードの心臓を突き抜け、遠い果てまで伸びて行った。ヴァルディフォードは最期の言葉も無く、即死だった。
ヴァルディフォードの体は一つの魂と成り、俺の下へ飛んできた。俺はその魂に少し小細工を入れ、人間化させた。その人間は9歳の少女。そして、俺はその少女に命じた。
「君はこれからエリナと名乗るように。そして、ソフィアと言う少女の妹だ」
「はい」
「そして、今から君の中にある俺との記憶を消させて貰う。しかし、先ほど言ったことは消さないでおく。だから、今日から君は新たな人生を歩むように」
「分かりました。ありがとうございます、魂王様」
「魂記憶」
俺はエリナから俺との記憶を消すことに成功した。そして、新たな少女、エリナが誕生した。
次に俺は魂空間を解除し、残りの敵を殲滅しようと思ったが、既に残りの敵の姿は無かった。
誰が殲滅させたのだろうか。不思議だ。
俺は首を傾げながらソフィアの下へ向かって行った。
そして俺はソフィアの体内からソフィアの魂を一度取り出し、何かしらの作業を加えて、ソフィアの体内へ戻した。
これで、1時間後には目を覚ますだろう。
人の体や性格と言うものはその体に宿ってる魂によって構築されている。つまりその魂を少し弄れば、その人の性別、体型、人格などを変えることができるのだ。
最後に俺は村の中心地の中心に行き、全員に治癒術の雨を降らした。
「魂治癒」
すると、リリシア先生を含め戦闘不能だった人たちは次々と回復していき、全員完治した。
さてと、これで全て終わった。
そして俺はその場で眠りにつき、生き返ったソフィアに膝枕をされた状態で目を覚ましたのだ。目を覚ますと、俺は魂王の姿だった時の記憶は全く無く、元の姿に戻っていた。