13話. 謎の力 前編
「カズマくん!?」
俺が気を失うと、俺の周りにいた他のみんなが一斉に風間の名前を心配そうに大声で叫んだ。
まず最初に俺の下に向かったのはリリシア先生だった。
「カズマくん!?大丈夫!?カズマくん!?カズマくん!?」
リリシア先生は俺の体を何度も揺らしながら、俺の名前を何度も呼んだ。しかし、俺はピクリとも動かなかった。リリシア先生は俺に治癒魔法をずっとかけていた。しかし、リリシア先生の治癒魔法は全く効かず、俺の胸からは大量に出血していた。すると、この光景を眺めていたヴァルディフォードは大声で嘲笑しながら俺とリリシア先生の下へと歩いてきた。
「ワー、ハハハハハ。とんだ死にざまだ、これは。これで任務は完了だ。あとはそいつの首を持ち帰るだけだ。だからそこを退いてくれないかな、そこの女!?」
そして、ヴァルディフォードが俺の首を目掛けて闇黒剣を振り落とした。しかし、リリシア先生は闇黒剣を片手で止めた。そして、闇黒剣の刃を思いっきり握りしめた。リリシア先生の手のひらからは血が流れていた。そして、リリシア先生はその手に魔力を大量に流し込み、闇黒剣を圧し折った。
「な...に...??」
「カズマくんには一本も触れさせない!」
そう言い、リリシア先生は顔をあげた。そして、もう片方の手で俺のとなりに落ちていた精霊剣を拾い上げ、ヴァルディフォードに向かって精霊剣を振った。しかし、ヴァルディフォードは上手い具合に後ろへ飛び、精霊剣の斬撃を避けた。
「やるね。お姉さん、名前は?」
「リリシアだ。私がカズマくんの代わりにあなたを倒す!」
「なるほど...面白そうだ」
リリシア先生は瞳に涙を堪えながら怒りを示していた。そして、自分の戦闘経験を信じていた。
「みんな、まだ戦える人は私と一緒に戦って。そして、一部はカズマくんとソフィアを教会へ運んで」
「はい!」
リリシア先生がヴァルディフォードの方を向きながらみんなに一言声を掛けると、みんなの何かのスイッチが入り、戦闘モードに入った。そして、一部は俺とソフィアの下にタンカーを持っきてくれた。その間、リリシア先生はヴァルディフォードと戦っていた。
「風吹!」
「破壊!」
リリシア先生は次々に魔法を放った。しかし、どの魔法攻撃もヴァルディフォードが持つ闇黒剣によって打ち消された。ヴァルディフォードのあらゆる方向から他のみんなも攻撃魔法を放っていた。しかし、どの魔法攻撃もヴァルディフォードにかねすり傷さえ与えることができなかった。それでもリリシア先生は攻撃魔法を放ち続けた。
「光風!」
「地揺!」
すると、ヴァルディフォードはあることに気付いた。
「リリシア、君は...風属性と土属性の二種類の魔法しか使えないよな!?そして、レベル4級の攻撃魔法までしか使えない。そうだよね!?」
「そう!あなたの言う通り、私は風属性と土属性の二種類の魔法しか使えない。そして、レベル4級の攻撃魔法までしか使えない。でも...それでも...私はあなたを倒す!」
リリシア先生ははっきりと事実をヴァルディフォードに言った。
ヴァルディフォードに勘付かれたのは、リリシア先生がさっきからずっと風属性と土属性の二種類の攻撃魔法しか使っていなかったからだ。加えて、レベル4級までの攻撃魔法しか使っていなかった。
「それは見事だ。しかし、僕もこれ以上時間は掛けたくないのでここで終わりにする」
「暗黒闇穴!!」
次の瞬間、ヴァルディフォードは広範囲の攻撃魔法を放ち、リリシア先生を含む他のみんなが空中に吹き飛ばされた。
空中に吹き飛ばされた他のみんなは微かに息をしていたが、戦闘不能状態になっていた。リリシア先生も起き上がることが出来ず、地面に這いつくばりながら俺の方へと向かっていた。しかしヴァルディフォードの方が早く、ヴァルディフォードは俺の首を目掛けて暗黒剣を振り落とした。
暗黒剣の剣筋が俺の首に届くと同時に、暗黒剣の刃が破れた。それを見ていたリリシア先生は驚いていた。しかしこれだけではない。俺の体からは紫色の光が放出していた。