1.会長と副会長
未熟なため拙い文章ですが温かい目で見守っていただければ幸いです。
「おはようございます。副会長。」
「ご機嫌よう。」
正直言って朝から疲れる。車をおり、門をくぐって玄関に向かうだけでこの人だかりだ。わざわざ手をひらりと振り作り笑顔で対応する。制服の胸元につけた銀色のバッチが重い。俺はここ桜蘭学院大学高等部生徒会副会長の住野蒼だ。この学校は幼稚舎から大学まであり過去にも数々の政治家などのいわゆるエリートを輩出し続けてきた由緒正しき日本屈指の名門校である。
まずなぜ俺がこの学校にいるのか、それは単純に家柄の問題である。俺の祖父である住野忠は日本三代財閥に数えられる住野グループの創設者であり現在父が2代目として会社を経営している。もちろん長男である俺が3代目を継ぐ予定である。つまりどういうことかというと自慢のようになってしまうが俺はこの学園内でも頭ひとつ抜けた存在。正確にはその存在の1人である。
ただいまの時刻は午前7時15分。始業時刻は8時25分なので早い登校であるがこれも生徒会の激務をこなすためである。
「お疲れ様住野くん。もうそろそろ終わりにしましょうか。」
「お疲れ様です会長。そうしましょうか。ではまた続きはお昼休みにしましょう。」
「ええ。」
「他のみなさんもきりのいいところで教室に行ってくださいね。遅刻してしまっては元も子もありませんから。」
上品に口に手を当てくすくすと笑いながら言う会長。嶋崎マリア。高等部2年であり実は蒼の許嫁である。このことを知っているのは本人だけであるが……。そのため2人以外に人がいる時はお互いのことを〝住野くん〟〝会長〟と呼び合い敬語を使っている。
また彼女は先程匂わせた頭ひとつ抜けたもう1人の存在。嶋崎商事の会長嶋崎努の一人娘でもある。
生徒会室から会長のマリア、副会長の蒼以外がいなくなり2人は肩の力を抜いた。
「疲れるわ……。このバッチ重いのよね……。」
「だよなぁ。これって金も銀も重さ同じなのかな?」
「ええ。多分同じよ。去年私が副会長の時その銀バッチをつけていたもの。」
「そうなんだ。さ、俺たちもそろそろ向かうとするか。マリア、鍵とってくれる?」
「今日は私が閉めるわよ。」
「おっ、さんきゅ。」
2人きりになった途端に砕けた態度に変わる2人。だが本当に大変なのは生徒会室から教室までの移動中である。
『今日も会長は美しいですね……。』
『副会長もですわ……。』
ああ……。また始まった。俺はげんなりしながら登校時と同様に手をひらひらさせて挨拶を返していく。
隣を歩くマリアも同じ心情なのだろう。作り笑顔を浮かべている。
「うっす蒼!」
「やあ。おはよう。拓磨は朝から元気だな……。」
こいつは俺が教室に着くなり丁寧に挨拶してくる他のクラスメートとは違い砕けた態度で話してくる数少ない友人である環拓磨だ。
この学校は校則が緩く髪を染めたり制服を着崩すのは許されている。
こうして俺の1日は始まった。