~何の取り柄もない俺が美少女戦士のお供になる?~
こんにちは。俺の名前は新田祐輔です。成岡中学校出身で、住みは実鳥区。趣味は寝ることです。よろしくお願いします。
鏡をみつめたまま一呼吸に台詞を吐ききる。鏡の向こう側の俺は、無愛想で眠そうで目つきが悪いどこにでもいる男子高校生(今日から)だ。自己紹介の練習だけじゃなくて、ついでに笑顔の練習もしておこうかと、思ったがやめた。自分の顔を見て笑ってるみたいでなんか嫌だろ?
「ゆーすけー いつまで洗面所にいるの? 早くしないと遅刻するわよ」
台所から呼ぶのは母さんだ。今年で40歳になるのに昔と顔が変わっていないと思うのは、子供のひいき目かもしれない。
「わかってるって 今行くよ」
台所に向かって呼び返す。しかしながら、憂鬱だ。ただでさえめんどくさい毎日に、新学期というワードが加わるだけでなんでこうも憂鬱なのか。この問いが証明できれば、俺はノーベル賞でももらえるんじゃないか、と本気で思う。
もう一度鏡を見直して、最後にもう一回自己紹介の練習しようかと思ったが、やめた。どうせ何回練習したとしても変わらないとばかばかしく思えたからだ。とりあえずは学校に行って、まず入学式は寝ることにしよう。それだけを楽しみにささっと支度を終えた。
とりあえず、簡単に結論を言えば、入学式はしっかり寝たし、俺の自己紹介はなんの変哲もなく誰の興味も引かず終わった。つまり、俺は今日学校で、自己紹介の時以外一言もしゃべっていない。下校している今も。
既にグループで歩いている周りを見ながら、俺の憂鬱はさらに増した。
まあ始まったばかりだし、そんなもんか、と言い訳をし、ちょうど目の前にあった石ころを蹴る。見当違いな方向に飛んでったそれを拾いにいったとき、道のわきに埋め込まれたマンホールが俺の目にとまった。一見するとただのマンホールだけれど、何かが異様だった。
近寄ってみると、その異様さの正体に気が付いた。
それは、模様だった。
マンホールに描かれていた模様が、今までに見ていたことのない模様だったのだ。
精巧な模様と文字のような何かが円の内側に沿って、書かれていた。
そのとき、何でかはわからないけれど、俺は、このマンホールは近寄ってはいけないものだというのを頭の片隅で思った。しかし、好奇心のほうがそいつよりも上みたいだった。
そっとしゃがみ、マンホールを間近でみる。それは、どこにでもありそうな、大型のトラックのタイヤくらいの大きさだった。こういうとき、3.14なんたらとか使えば面積だか円周だか求まるんだっけ?なんて中学算数をちょっと思い出す。
マンホールをしげしげと眺めながら、何かに似てるな、とぼんやり思った。
何だっけ。
思い出せないことにイライラしながら、なんとなしにマンホールの中心に触れてみる。
刹那、視界がぐらっと傾いた。気がした。
急にマンホールを真剣に調べていることにばかばかしさを感じて、帰ろうと立ち上がった時、俺は自分がとうとう道端で寝だすようになったのかと自分の目を疑った。
そうだろ?だって、目の前に図鑑で見るような恐竜みたいなやつがいたんだから。
今日まともに使ってなかった声帯からは、一ミリも声でない。
うそだろ。なんだこれ。なにがおこった。これは夢か。いや。夢じゃないはずだ。あれじゃあなんだこれ。
思考があふれている間にも、目の前のヤツは雄たけびを上げて俺を食おうとしていた。
初期化されて何もできなくなった俺は、ただただそれを夢を見ているみたいに眺めていた。
ああ、今日の晩御飯なんだったんだろう。
ヤツの息が頭にかかったときに、脳に初めて情報が届いた。
これは現実だ。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
まともに使っていなかったにしては、俺の声は脳に良く響いた。
逃げようとしたが足が絡まって、しりもちをつく。
もうだめだ。
そう思ったとき、目の前のヤツが急に横に倒れた。
突然の出来事に対応できずにいる俺の脳は、また次の情報でパンクする。
ヤツを横に倒したのは、ピンク色の髪で水着みたいな恰好の美少女だったのだ。