一日目 後半
潜水艦が出港してから暫くして、ジョニーとベック、チャップマンの三人はジョニーの部屋にいた。
艦内の警備のローテーションについて相談する為だ。
「ベック、三時間ごとに交代するってのはどうだ?」
「良いと思う、チャップマンもそれで良いか?」
「ああ、大丈夫だ」
「じゃあジョニーのアイデアに従うとして、順番はどうする?」
チャップマンが左手を差し出す。
「この手に限るだろ」
「そうだなチャップマン」
ジョニーも左手を出した。
「仕方ないな」
ベックも左手を出す。
「「「じゃんけんポン!」」」
チャップマンとジョニーはチョキ、ベックはパーを出した。
「俺の負けか、じゃあ行って来る」
そう言うとベックは至急された装備を掴んで部屋から出ていった。
「おう、行ってこい」
「俺たちはここで待ってるからな」
二人に見送られて、ベックは見回りに出た。
(異常なし、まあ当然か)
見回りの途中、ベックは研究室の前を通りかかった。
すると、なにやら会話が聞こえてきたので、ベックは聞き耳を立てて内容を聴くことにした。
すると、次のような内容だった
「あれの回収が最優先だ」
「わかってます、ニアさん」
「ああ、超再生細胞のサンプルは何よりも重要だ」
「はい、あの細胞は医学の歴史に大きな変革をもたらします。必ず回収しなくては」
ベックは扉から耳をはなし、また歩き始める。
(超再生細胞か、あの船ではそんな物を研究していたのか。だとしたら…)
ベックは首に掛けているロケットペンダントを見つめる。
(後戻りは出来ない、君の死の真相を知るまでは)
ベックは自らの目的を胸に、見回りを再開した。
三人が交代で警備に当たり始めてから約九時間後、丁度一巡したタイミングで艦内放送がかかる。
『夕食の時間です、食堂に集合してください』
放送を聞いて、三人はマップを頼りに食堂へ向かう。
「晩飯はなんだろな」とジョニー。
「楽しみだな」とチャップマン
「そうだな」とベック。
食堂に近付くにつれ、スパイシーな匂いが強くなって来る。
「カレーか」
「潜水艦らしいメニューだな、ベック」
「全くだ」
食堂に入ると、すでにニアを除いた全員が揃っていた。
ベックはアリスに「ニアはどうした?」と訪ねた。
「ドレイクさんは部屋で食べるそうです」
「そうか」
ベックはそう言うと先に席ついていたジョニーとチャップマンの前に座った。
「カレーは鍋から自分でよそってね!」
ミカエラはそう言うと、皆の前に食器を配る。
皆は各々カレーをよそい、食事を始める。
「美味しい」
アリスがそう言ったのを皮切りに、皆口々にカレーの味を褒め始める。
「確かに美味いな」
「そうだなジョニー、これはとても美味しい。チャップマンは」
チャップマンは美味い美味いと言いながらひたすらカレーを食べていた。
「久しぶりにここまで美味いカレーを食べた」とリック。
「美味しいです」とナギサ。
「今までで一番美味いカレーかもな」とアルバート。
「美味い」とウィリアム。
自分の料理を褒められたミカエラは照れているようで、少し頬が赤くなっていた。
「やっぱりミカエラのカレーは世界一だ」とエライアスが言った事で、より頬が赤くなる。
夕食が終わり、各々は自分の持ち場に戻る。
ベックは見回り、リックは操舵室といったところだ。
その後何事も無く一日目は終了した。