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戦女神と守護者  作者: 創賢微茶
9/10

9話 始業式


 春休みが終わり始業式の日がやってきた。

 久しぶりに自分の通う学校の制服に袖を通したことで高校生であることを実感する。

 今日から2年生に進級することになる。

 しかし、学校に行くのはあまり気が乗らなかった。ブリュンヒルデを1人で留守番させなければならないからだ。ブリュンヒルデの傍を離れている間にフォルスが襲撃してくるんじゃないかと思うと学校に行くのを躊躇ってしまいそうになる。


 「なあブリュンヒルデ、やっぱり学校に行かずに一緒にいたほうがいいんじゃ…。」

 「ダメですよ石斗。学校に行くのはあなたの務めなのですから行かないと。」

 「でも俺が学校に行っている間にお前がフォルスに襲われでもしたら…。」

 「ご心配には及びません。神力もしっかり回復していますし何かあったら買っていただいたスマホで連絡しますから大丈夫です。」


 そう言ってブリュンヒルデは俺が何かあったときのためにと購入したスマホを懐から取り出し俺に笑顔を向けた。そこには不安も心配も一切ないという感じだ。


 「……わかった。何かあったら連絡してくれ。すぐに駆けつけるから。」

 「ええ、お願いします。」

 「それじゃあ行ってくる。」

 「はい、いってらっしゃい。」


 俺は後ろ髪を引かれる思いで学校に歩を進めた。そんな俺にできるのは何事も起きないようにと願うことだけだった。

 1年間学校に通学するために歩いたことのある道を今年も歩いていく。今年も景色は変わりそうにないなと思いながら。

 そうして俺は自らの学び舎『私立欧北高校』に着いた。ここは自由な校風を掲げており割と校則は緩い。個人的には過ごしやすい環境だと思っている。

 とりあえずクラス表から自分の名前を探して教室にさっさと入ることにしよう。

 クラス表に群がる同級生たちの波に従いクラス表の前まで来た俺は自分の名前を探し始めた。

 え~宝塚……ほうづか……あった。どうやら俺が所属することになるクラスはA組のようだ。去年もA組だったんだよなとか思いつつ俺は自分の教室に向かった。

 因みにここは1学年9クラスあり1クラスにつき40人いる。去年は転入も転向も退学もなかったから人数はそのままのはずだ。

 教室に入って俺は自分の席に着いた。すると俺の席に近づいてくるやつがいた。


 「よう宝塚、久しぶり。元気にしてたか?」

 「砂高か。久しぶりだな。」


 俺に話しかけてきたのは欧北高校に入学してからそれなりに仲良くなった男、砂高だ。去年はクラスが一緒でクラスメイトの中ではよく話しているほうだと思う。情報通で流行とかに敏感な奴だ。そして結構女好きだ。


 「なあ知ってるか? 春休みの間に町はずれの廃工場で夜中に爆発があったらしくってさ、噂じゃ処分し忘れた燃料に引火しただのテロリストが潜伏して爆弾の実験をしていただのでちょっとした話題になってるみたいだぜ!」

 「ああ知ってる。ニュースで見たよ。」


 それ……俺が光線技でスパイダーフォルスを爆散させたことが原因なんだろうな。 


 「その話ってさ、誰がやったとかはわかっているのか?」

 「いや、警察が駆け付けたころには人っ子一人いなかったって話だぜ。」

 「そうか。」


 どうやら俺とブリュンヒルデを見たってやつはいないらしい。すぐにあの場から離れたからだろうな。


 「そういやさ宝塚、この春休みの間に何か変わったことってあったか?」


 そう聞かれて俺はどう返答したものかと頭を悩ませた。変わったことがあったと言えばあった。ブリュンヒルデとの出会いやフォルスと戦ったこと。しかしこのことを話していいものか。砂高は一般人だ。戦う力を持たないやつに話して大丈夫なのか……。

 冷静に考えて話すことをやめることにした。話したところで現実味がないから作り話として相手にされないだろうしな。


 「いや、特になんもなかったよ。そっちは?」

 「実はな……俺に彼女ができたんだ!!」

 「おっ、そうなのか! 相手は誰だ? ここの生徒か?」

 「ふっふっふ、それはな……この娘だ!!」


 そう言って砂高は懐からスマホを取り出し画面に映る女の子を見せてきた。だがその女の子は3次元では2次元だった。


 「いやゲームかよ! 現実じゃないんかい!!」

 「おいおい宝塚、ゲームだからってバカにするなよ。最近のは現実の女の子よりもはるかに可愛いんだからな。」


 ダメだこいつ、現実で彼女づくりに失敗し続けてついに2次元に手を出してしまった。いや、でもまあ本人が満足しているなら別にいいか。誰かに害があるわけでもないし。


 キーン・コーン・カーン・コーン!


 チャイムが鳴ると同時にみんな自分の席に着いた。しばらくすると教師が教室に入ってきた。

 1年の時と同じ現代文の教師古川だった。特に可もなく不可もない丸眼鏡をかけた地味な教師である。

 こうして俺の2年生の高校生活が始まった。

 俺は始業式で校長先生の話を聞きながらブリュンヒルデのことを考えていた。


 (あいつ今頃何してんだろ。俺が離れていることでフォルスがここぞとばかりにブリュンヒルデのことを襲ってるんじゃないだろうな。)


 ポケットに入っているスマホに目をやる。ブリュンヒルデから連絡は来ていないから問題ないと思うけど心配だ。

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