8話 吸血鬼
俺達の場所に上空から何かが突っ込んできた。
「石斗! 避けてください!」
「うわっ!」
上空からの突撃攻撃をブリュンヒルデは危なげなく避け俺はギリギリ避けることができた。
突撃してきた何かは再び上空に舞い上がるとある程度の一で静止してこちらを見下ろしてきた。
あれは何だ?蝙蝠の頭に腕に蝙蝠の羽を広げてバッサバッサと音を立てながら飛んでいた。
見た目的には蝙蝠怪人といったところか。
俺は即座に変身しブリュンヒルデは甲冑を身にまとった。
「石斗、あれはバットフォルスです。見たところ下級のフォルスのようですが上空に飛べることと吸血攻撃が厄介です。注意してください。」
「わかった。」
しかし空を飛べるのか。上空から一方的に攻撃されるのは厄介だな。
そう考えているとバットフォルスが飛んでいる反対側の道からぞろぞろとヒューマンフォルスの群れがやってきた。どうやらバットフォルスが引き連れてきたらしい。
俺とブリュンヒルデは背中合わせになった。
「どうするブリュンヒルデ。」
「私が上空のバットフォルスの相手をします。石斗は地上でヒューマンフォルス達の相手をしてください。」
「いいのか? 俺とブリュンヒルデを引き離すことがバットフォルスの狙いなのかもしれないんだぞ?」
「バットフォルスの相手は空を飛べる私がしたほうがいいと思います。それにバットフォルスより弱いとはいえヒューマンフォルスをほおっておくことはできません。ですから石斗に対応してもらいます。」
ブリュンヒルデの言い分ももっともか。俺は空を飛べるかわからないし仮に飛べたとしてもやったこともないことをぶっつけ本番でやるのは危険だ。だったらここは確実な方法を選ぶべきか。
「わかった。それでいこう。」
「ええ、気を付けてください。」
その言葉を最後に俺とブリュンヒルデは互いの倒すべき敵の方向に飛び出した。
石斗SIDE
俺は向かってくるヒューマンフォルス達を拳で殴り飛ばして蹴散らしていく。
ヒューマンフォルス達も負けじと俺に拳や蹴りなどの攻撃を放ってくるが俺はその攻撃を捌いて反撃の拳を加えていく。
強力な一撃がヒューマンフォルスをまとめてぶっ飛ばすが正直1体1体倒していっても埒が明かなかった。
「くそっ、きりがねえな。」
個々の数は弱いがこれだけいるとうっとおしいことこの上ない。何とかならないものか。
「あっ、そうだ!」
前の戦いでブリュンヒルデは様々な技を使ってヒューマンフォルスを蹴散らしていたはずだ。俺にも何か使える技があるかもしれない。
そう考えると頭の中に何故か技が浮かんできた。なぜ知らないはずの技が頭の中に浮かんできたのかよくわからないが早速試してみよう。
「くらえ! ジェムパンチ!!」
ジュエディアンの拳の宝石が光輝くと纏めてヒューマンフォルスを殴り飛ばしていく。やられていくフォルスたちは上空へ1体、また1体と吹き飛ばされていく。
「次はこれだ! ジェムチョップ!!」
地を割く威力の手刀がヒューマンフォルス達に突き刺ささる。
「続けて、ジェムキック!!」
次はジュエディアンの足の宝石が光輝くと一気にヒューマンフォルスを蹴り飛ばしていく。蹴り飛ばされたヒューマンフォルスたちは消滅していった。
これでバットフォルスが引き連れてきたヒューマンフォルスはすべて蹴散らした。残るはバットフォルスのみ。奴と戦っているブリュンヒルデが心配だ。
キラキラと輝くオーロラの夜空を見上げてみるとブリュンヒルデとバットフォルスが空中戦を展開していた。
「飛びなさい! ライトソード!!」
ブリュンヒルデは10本の光の剣を作り出した。それをバットフォルスめがけて射出するがバットフォルスはそれを危なげなく躱す。
「なら接近戦で!」
ブリュンヒルデが勢いよく切りかかるがバットフォルスは後方に飛ぶことでそれを躱す。
見たところブリュンヒルデが果敢に攻めているように見える。しかしバットフォルスはブリュンヒルデの攻撃をひらりひらりと躱している。どうやら攻撃よりも回避に専念しているようだ。
(持久戦に持ち込んでブリュンヒルデの神力が無くなるのを狙っているのか? だとするとこのまま続けていけば必然的にブリュンヒルデが負けてしまう。神力が無くなる前に奴をかたずけないと……どうすればいい……)
考える中で2つの案が浮かんだ。
1つ目は俺自身が飛ぶこと。やったことはないけどやれるような気がする。
2つ目は遠距離攻撃を仕掛けること。道端の石を投げたりして気をそらせばブリュンヒルデの攻撃が当たるかもしれない。
この中でどっちの案をとるか、迷う時間が長ければ長くなるほどブリュンヒルデがどんどん危険になっていく。
ここは勢いに任せて飛んでやる!
「行くぞ!」
俺は脚に力を入れ勢いよくバットフォルスめがけて跳んだ。どんどん距離が短くなりバットフォルスが俺に気づいた時にはすでに俺の攻撃射程内に入っていた。
「くらいやがれ! ジェムパンチ!!」
ジェムディアンの輝く拳がバットフォルスの顔面に突き刺さった。バットフォルスは痛みに悲鳴を上げながら地上に落下した。
「石斗! 貴方、飛べるのですか!?」
ブリュンヒルデは俺が浮遊していることに驚いていた。
「おう、試しにやってみたら飛べた。やろうと思えばやれるもんだな。」
しかしこれが空を飛ぶ感覚か。悪くないな。重力から自由になった気分だ。
「それよりもさっさとあいつを倒しちまおうぜ。」
「そうですね。」
俺たちは落下したバットフォルスを倒すために地上に降りた。
顔面に強烈な一撃をもらったバットフォルスは立ち上がっているものの体がふらふらしていた。どうやら先ほどの不意打ちがよほど効いているようだ。
「ブリュンヒルデ、チャンスだ!」
「はい、このまま決めます!!」
ブリュンヒルデは剣に銀色に輝く光を纏わせバットフォルスめがけて突撃した。
「これで終わりです! ヴァルキリースラッシュ!!」
ブリュンヒルデの必殺の一撃がバットフォルスの肩から斜めに切り裂く。
「ぐぎゃあああああああああああああああ!!!」
バットフォルスは断末魔の悲鳴を上げ爆散した。バットフォルスが倒されたことで町に展開されていた結界も解かれた。
結界が消えたことによりバットフォルスとの戦いが終わったことをより実感した。
俺は変身を解除し、ブリュンヒルデも甲冑を解いた。
「やったな、ブリュンヒルデ。」
「いえ、石斗の協力があればことです。感謝します。」
「俺は当然のことをしたまでさ。さて、帰って飯にしようぜ。」
「そうですね。」
俺たちは道端に置いていた荷物を持ってたおれ荘に歩を進めた。