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戦女神と守護者  作者: 創賢微茶
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1話 出会い


 俺の名前は宝塚石斗ほうづかせきと、今年の春から2年生になる高校生だ。

 今は春休み真っただ中で有意義に自由時間を満喫している最中だ。

 そしてぼろアパート「たおれ荘」の管理人をやっている。

 名前からして倒壊してしまいそうだが造りはしっかりしているので住む分には問題はない。

 俺はここで自由気ままな一人暮らしをしている。

 このぼろアパートには俺以外に人は住んでいない。

 10部屋中9部屋は空いている。

 今のところは特に誰かに部屋を貸そうとは思っていない。

 高校を卒業したら部屋を貸してもいいかなとは思っている。


 俺の住む町、赤気町せっきちょうでは北国でもないのに数年前からオーロラを見ることができるようになったんだ。

 だから観光名所としてよく観光客が訪れる。

 特に名産品があるわけでもないがオーロラが見れるってだけで観光客が来てくれるんだからこの町としてはありがたいことなんだろう。

 オーロラ饅頭とかオーロラ煎餅とか商品にオーロラってつけてりゃ買ってってくれるんだから観光客ってちょろいよなぁなんて思ってしまう。でもせっかく観光に来たんだから何か買っていきたいという気持ちもわからないでもないな。


 しかし今日は残念ながらオーロラは見えない。見上げると空はどんよりと曇っていておまけに雨が降っているからな。

 楽しみにしてやってきた人は残念だと思うよ。

 オーロラを見に来たのに見れないんだから。

 観光はどこも天候に左右されるんだから仕方がないとは言えやっぱり晴れてるほうがいいよな。


 そんな雨の日に俺は買い物からぼろアパートに帰っているところだ。

 一人暮らしをしている以上食料品は買いに行かなきゃならん、面倒だけどな。


 「しっかしよく降るよなぁ、ここ最近は晴れてたからかな?」


 なんにしても早く帰ってゆっくり過ごすかな。

 まだ春休み真っただ中だし休みの時間を満喫しないと勿体ないしな。


 「ん? なんだあれ?」

 

 俺のアパートの前に何か白い物体がある。

 雨が降っているからよくわからなかった。

 近づいてみるとそこには……

 

 「人?! 人が倒れてる!!」

 

 白いワンピースを着た銀色の髪の女の子がうつむせに倒れていた。

 白いワンピースを着ているから中が透けて雪のように白い肌がってアホか俺は! 何処見てんだ!!

 

 「このままじゃ風邪をひいちまう!早く体をふいて暖めないと!!」

 

 俺はすぐに買い物袋を玄関に置いて使っていない予備の布団を敷き女の子を部屋に運んでそこに寝かせた。

 そしてすぐさまタオルを用意し服を脱がそうとして思いとどまった。

 

 「あれ、ちょっと待てよ。いくらなんでもこれってまずくね?俺は男でこの子は女の子だ。いくらこの状況でも男である俺が服を脱がして体を拭いていいのか?」

 

 しかし濡れたままだとこの子は風邪をひいてしまう。

 誰か助けを呼ぼうにもこのぼろアパートには俺しかいない。

 近所に親しい女性の知り合いはいないし変な噂が立つのも嫌だ。

 つまり俺がやるしかないわけだ。

 

 「そうと決まればさっさとやるか。」

 

 後で殴られることは覚悟しておこう。

 それが人助けとは言え女の子の裸を見てしまう男の末路だ。

 

 まずは頭を拭くことにした。

 女の子はきれいな銀色の髪をしていてあまりにもきれいだから絹の糸でも拭いているんじゃないかと思ってしまった。

 次に触れれば折れてしまいそうな腕、美しい足を拭いていく。

 ここまではいい。

 ギリギリ問題のない範囲だ。

 しかしここからが問題だ。

 濡れている服を脱がして体を拭かなきゃならない。


 (でも悩んでる場合じゃないよな。)


 俺は無心で着ている服と下着(ブラは何故かつけていなかった)を脱がした。

 白い雪のような肌があらわになる。

 しかし見とれている暇などない。

 すぐに体を拭いていくことにした。

 しかし雑に拭いてはいけない。

 体を傷つけないように柔らかな手つきで優しく拭いていく。

 断じていやらしい行為ではないと自分に言い聞かせる。

 体を拭いた後は服を着せて体を温めなければならないがここでまた問題が発生した。

 

 「俺、女性用の服と下着なんて持ってない。いや、持ってたらそれはそれで問題なんだけど。」

 

 俺ので代用するか?

 いや服はよくても下着はダメだろ。絶対嫌がるわ。

 仕方がない、シャツとジャージだけ着せておくか。

 体を拭き終えてシャツとジャージを着せると布団に寝かせた。

 今日の気温は低いから部屋を少し暖めておくか。

 俺は暖房をつけて部屋を暖めた。

 

 「起きたら温かいものを食べさせたほうがいいよな。」

 

 時間は昼も終わり、そろそろ夕方に入るころだ、晩飯を作るか。

 今日はシチューの具材を買ってきているからさっさと作るか。

 たまには早めの晩飯もありだろ。



数時間後

 

 シチューも出来上がった。後はこの子が起きるのを待つばかりである。

 

 「うっ、ここはいったい……?」

 

 どうやら目が覚めたようだ。彼女の瞳がこちらをとらえた。

 

 「あなたは誰ですか? それに……ここはいったいどこですか?」

 「俺の名前は宝塚石斗。ここは俺の管理しているアパート『たおれ荘』だ。君の名前は?」

 「私の名前はブリュンヒルデです。助けていただいてありがとうございます。」

 「気にしなくていいぞ。ところでお腹すいてないか?」

 「いえ、大丈夫で(くきゅるる)」

 

 どうやら体のほうは正直なようだ。

 

 「ちょっと待っててくれ。いま持ってくるから。」

 

 そう言って石斗はシチューを入れに行った。

 しかし石斗は気づいていなかった。

 ブリュンヒルデが顔を赤らめているのではなくなぜお腹の音が鳴ったのかわからないことに戸惑っていることに。

 

 石斗はシチューを机に並べた。

 

 「冷めないうちに食べてくれ。」

 「……それではいただきます。」

 

 ブリュンヒルデは恐る恐るスプーンで掬ったシチューを口に運んだ。

 

 「美味しいです。」

 「それはよかった。」

 

 美味しいと言われてほっとした。

 まずいとか言われたら俺のガラスのハートは粉々に砕けるし秘蔵のカップ麺を出さざるを得なかった。

 

 

 食事を終えて聞きたいことを質問することにした。

 

 「ところでなんで君はあんなところで倒れていたんだ?」

 

 とりあえずまずはこのもっともな疑問から聞くことにした。

 

 「それは……」

 

 ブリュンヒルデは言いよどんでいた。

 

 何か言えない事情でもあるんだろうか?

 もしかして誰かに追われているとか実は異国のお姫様でしたとか?

 そう言われても違和感がないぐらいの美少女ではあるんだがまさかな。

 こんなことを考えてしまうなんて俺はアニメの見すぎなのかもしれない。

 でも目の前にそんじょそこらのなんちゃってアイドルよりもレベルが遥かに高い女の子がいるわけで、そんな非現実的なことを考えてしまうのも無理はないかもしれない。

 

 「言いたくなかったら言わなくてもいいぞ。」


 誰だって言いたくないことの一つや二つはあるもんだしな。


 「いえ、そういうわけではありません。ただ……」

 「ただ……?」

 「言ってしまえばあなたを巻き込んでしまいます。」

 「……」


 え? マジで首を突っ込んじゃいけない系の話なのか?

 よくよく考えてみると彼女はまだ肌寒い季節の中白のワンピース以外何も身に着けていなかった。

 加えて手荷物らしきものも持っていなかった。

 このご時世普通最低限財布やスマホぐらい持っていないとおかしい。

 どこかに落としたってことも考えられるけどワンピースにポケットなんてなかったし鞄に入れていたと考えても鞄ごとなくすか普通?

 どうしよう、不安になってきた。

 このまま彼女の話を聞かずにさりげなく追い出すべきなのか?

 いや、それは紳士を目指す一人の男としてどうかと思う。

 まずは話を聞いてから判断しても遅くはないはずだ。


 「言ってくれ。じゃないと判断できないしな。」

 「……分かりました。」


 ブリュンヒルデは意を決して俺に自分の正体を語った。


 「私は異なる銀河の戦女神ヴァルキリーです。」

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