表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

真剣に読まないように。

父はわがままだ

作者: caem

やっちまいました。

有りがちなネタです。

くれぐれも、真剣に読まないように(笑)





「ねえ、おとうさん」


「ん? なんだい?」


「おかあさん、どこにいったの?」


 その一言が切欠だった。


 手を繋いだ娘が不思議そうに私を見上げる。

 思わず天を仰ぎ、溢れだしそうになる泪をぐっと堪える。


 黒い礼服を着込んだ私たち親子は不慮の事故で亡くなってしまった妻の葬式を経て。

 ふたり、トボトボと帰り道を歩いていたのだ。


 夕映えを背景に、赤とんぼが漂う。

 娘の疑問にどう返していいものか。

 奴らは何も教えてくれず、ただひたすらに小さな羽虫を(ついば)んでいた。


 ふと、そんな悩みはとある看板が目に写り、私は娘へ厳しい現実を突きつける。


「……お母さんはもういないんだ。どこにも」


「……? ナニいってるの?」


 まだ幼稚園児だからだろうか。

 死の概念は理解できていないようだった。


 可愛らしく首を(かし)げる仕草の我が愛しき娘。

 サラサラの髪が秋風に(なび)く。

 あどけない素振りの愛娘(まなむすめ)にぐうっと心を鷲掴みにされるも。

 心を鬼にして、更に私はこう告げた。


「だけどね。父さん、母さんにもなるから……それじゃダメかな?」


 いったい、自分でも何を言っているのやら。

  ── ダメだ。 こんなのは間違っている。

 いくらさっき目にした看板から妙案を得たとはいえ、赦されざるべきではない。

 それに、こんな無精髭をした母親が存在するなど万死に値する。


 ()くして、娘はあっけらかんとするも。

 やがて、天使のように微笑んだ。


「すごーーーい! おとうさん。おかあさんにもなれるんだ!!」


 …………。


 まさか、受け入れられてしまうとは。

 呆然と立ち尽くす私に対して、今もなお満面の笑みを浮かべ、嬉々としてはしゃぐ娘。

 ぴょんぴょんと飛び回り、傍らにあった何を表現しているか解らない彫像に話し掛ける。


「すごいんだよ! おとうさん、おかあさんにもなれるんだって!!」


 無論、ヤツは黙して語らずも。

 どこか、「おめでとう。よかったね」と慰めているようにも見えた。


「ほら。危ないから。こっちにおいで?」


 はた迷惑そうにしていた()れは、背中に乗っかりペチペチと叩く愛娘を早く降ろすようにと主張する。

 致し方無く。

 両脇に手を滑らせて、私は娘を夕陽へと高く高くに掲げあげたのだ。


「……とうさん。 がんばるよ!!」






  ─── あれから、数年の月日が過ぎた ───






「ただいま~」


「ああ、おかえりなさい」


「手伝うよ。母さん」


「いつも、すまないねぇ」


「やぁ、娘さん。まだ若いのに立派だねぇ」


「ホント、ホント! ウチの娘にも爪を煎じて飲ませたいぐらいだよ~」


「ちょっと! 気持ち悪いことしないでくださいっ!」


「ものの例えだよ。ね? ママ♪」


 とある町の一角でひっそりと佇む割烹。

 馴染みの客を相手に、色気溢るる熟女が慣れた手付きで酒を()ぐ。


「と。とととっ」


「もう。娘をからかわないでくださいな♪」


 紅潮した頬が、客の出来具合を示していた。

 その様子を視ながら、私は酒の肴を都合する。

 軽快な速度(テンポ)でまな板を叩き付けながら。


 ……あの人達は何も知らない。

 いや、誰も知らない方が幸せだろう。

 あなた達が恋い焦がれているその人は。


 かつて、私の父親(・・)であったことを。




 ─── 私の父は、我がママだ ───




「ナニか言った?」


「ううん。何も。はい、出来たよ」


 賑わいを見せるこじんまりとした割烹。

 今日も今日とて、父は同性を騙しとるのであった。




 

酒の勢いで書き上げたので。

ああ。いつものことか(爆)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 文章もオチもしっかりとしていて 面白かったです [一言] お父さん、行動力が凄すぎるよ……
[良い点] ワンアイデアがしっかりと小説にされてて面白かったです。 でも、娘後悔してそう [一言] 頑張っちゃったかぁー
[良い点] 新年にこのお話を持ってきた点 [気になる点] 感想送ったつもりが送れてなかった点。 (自分が悪い) [一言] あ、そういう・・・。 えっ!? という驚きを新年早々もらいました。 流石で…
2018/01/05 17:38 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ