サキュバスストーリー2
「人間の精気が飲みたい〜。」
唐突にそんな事を呟いたサキュバスは、気だるげにむくっと身体を起こす。
昨日の事件はでかでかと報道されていたが、モンスターが人為的に出現した事、それを解決したのが謎の黒い影と掲示板に貼られ、ちょっとのミスでサキュバスがヒーローだった事がバレかねない事実に、危なかったと安堵する。
「腹減ったわ〜食堂でカレーパン食べよ。」
好みの違いはあるが、基本的に悪魔はカレーが好物である。
お腹が空くと無性にカレーが食べたくなるのは人間も悪魔も関係ないらしい。
「昨日は大変だったわ〜、最近はめっきり勇者が減って張り合い無いな〜。」
この世界には種族間でも一種の分類がある。
例えば一般市民という部類に産まれればその類間の間で生まれた子供は例外なく一般市民として生まれ、それはステータスウィドウに記入されている。
勇者と勇者の子供は勇者。
《一般市民》と《勇者》の間はランダムといった形で産まれる。
サキュバスの場合はサキュバス間での子供という事でサキュバスとして生を受けた。
《勇者》は《一般市民》の十倍の潜在能力があるとされている。
「勇者と言えばあの皮肉野郎、役員になったって言ってたけど冒険家業しろよってマジでね。」
役員。それは種族関協調協会役員の略である。
役員になる条件としてはレベルが100を超えた者ならば《賢者》だろうと《勇者》だろうと《一般市民》だろうと役員になれる。
なぜなら…………
「レベル100に到達する奴ってなかなかいないもんな〜。」
レベル100到達まで所要する年月は大抵5年。
天才は短期間でなれるが、その間に命を落とす者が殆どだ。
それでもなお冒険家業を辞めない者達ばかりだからレベルをまあまあ到達可能な100まで下げられているため、勇者の生涯の平均レベルは150でレベル100の勇者役員は重宝される。
ちなみにサキュバスの生涯平均レベルは5しかないため、圧倒的に強いこのサキュバスのレベルは計り知れないが…………
「あ、カレーパン買いすぎた…………」
おつむの方はあまり賢く無いらしく、両手いっぱいのカレーパンを見つめながら、そう呟いた…………。