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恐怖の始まり

作者: 神名代洸
掲載日:2017/02/22

車を走らせていた時、たまたま偶然それを見てしまった。

そう、事故だ。

信号無視して赤なのに突っ込んできたのだ。

歩行者の女性はその場から弾き飛ばされ即死だった。

歩道に流れ出る血の湖がその人が亡くなったことを教えてくれた。あまり気分がいいものじゃない。

運転していた男性はオロオロしてとても正しい状況判断ができそうもなく、目撃していた身では警察に言わなければならないなと通行人に混じって僕は男性に近づいた。

まだどう見ても二十代前半。若い。

だがだからと言って放っておくこともできない。

「あの〜。」

「はい?」

「救急車呼んだほうが…。」

「そうだ!」そう言いながら男性は救急車を呼んだ。そして自分が事故したことにより、警察にも知らせる。

10分ほどした頃には警察も救急車もやってきた。現場は物々しい雰囲気になっている。

「で?あなたですか?目撃されたのは。」

「はい。そうです。他にも何人か見てましたよ。」

「で?どうだったんですか?」

「はい。明らかに運転者の信号無視です。赤で突っ込んできましたから。」

「そうですか。他に何か気づいたことはないですか?」

「そうそう、なんか下を見てましたよ。片手運転みたいでしたから。」

「そうですか。ご協力感謝します。」

「いえ、見たままを言っただけですから。」

他にも何人か事情聴取を受けていた。聞こえてくる感じでは皆同じことを言っているようだ。仕方がないだろう…。

男性はオロオロしっぱなしだ。

それでも手錠をかけられるとおとなしくなった。

やっと現実だと認識できたようだ。

ガタガタと震えている。

僕には何か声をかける気にはなれなかった。

その日の夜、僕は夢を見ていた。

正確には違うのかもしれないが…。両足の先が冷たく感じられたのだ。

?と思った。

この時期確かに寒い。だからあんかを入れて温めていたはず。それなのに冷たいとはどういう事か?

人の指のような感触があった。

怖い。

誰?

などと思っていると徐々に腰あたりまで這い上がってきている感触がある。

逃げたい。

でも体が言うことを聞いてくれない。

グッと両目をつむった。

それでも恐怖よりも好奇心が勝ってしまう。

ゆっくりと目を開けた。

ヒッー!?

そこで意識をなくしてしまっていた。

翌朝僕は自分の姿を見て驚いた。

首に明らかに人の手の跡が…。

なんで僕が?

分からない。

それで僕は警察署の前に来ていた。

亡くなった方がどんな方だったのか知りたくなったのだ。

まさか…知り合いじゃない…よね?

躊躇いながらも受け付けに歩いていく。そして受け付けで昨日の事故について聞いてみることにした。すると態度が明らかに違う。

まるで僕が悪いことをしているかのような対応のされ方だ。

目撃したもので、昨日も事情聴取をしましたと言うとどこかに電話をかけている。どこの部署なのかと不思議だったが、僕はただ待っていた。

ドタドタドタと足音が聞こえた気がした。

実際はもっとスマートなのだが…。

「あなたでしたか。」

「ああ、あの時の…。」

お互いを確かめ合うと受け付けに事情を説明して僕の肩に手をやりその場から連れ出した。

「あんたなんでまた来た?」

「なんで…って言われても…。」そう言いながらも昨夜あった出来事を思い出しながら話して聞かせた。すると神妙な顔をして僕の方を見た。

「あんた、あの亡くなった人に覚えはないのか?」

「ええ、でもどこかに引っ掛かりを感じるんですよ。何でだろう??」

「そりゃあんた、知り合いだからに決まってるじゃないのか?」

「えっ?僕の知ってる人だったんですか?」

「ああ、と言っても小学生時代同級生だったってことくらいかな?」

「えっ?そうなんですか?覚えがないなぁ〜。」

「そりゃそうだ。短期間で転校してったやつだったみたいだからな。知ってるやつの方が少ない。」

「そう、だったんですか…。で?誰だったんです?」

「この名前に聞き覚えはないか?」そう言われて聞いて見たが、どうも覚えはない。

「いえ、全く…。」と言うと、頭をボリボリかかれて呟かれた。

「彼女、あんたの事が好きだったみたいだよ?」

「え?」

僕は知らなかった。

連絡先すら知らなく、頭の片隅にも残ってなかったのだ。申し訳ないどころではない。

「でも何で?僕の首を閉めようなんて…。」「気でもひきたかったんじゃないのか?あんたは何も覚えてなかったみたいだしな。」

「そ、そんなぁ〜。」

僕はがっくりと肩を落として刑事さんと別れて帰宅のとについた。

もう一度よく思い出して見たくて、小学生時代のアルバムを引っ張り出して来た。映ってるとは思わなかったが…。

確かにアルバムの中の写真の一枚には写っていたようだ。集合写真には映っていない女の子が映っている。

はたしてそれが彼女かは分からなかったが、きっとそうなのだろう…。

クラスの写真の中の彼女は生き生きとしていた。笑っていた。

転校してから今までの彼女がどこで何をしていたかなんて分からない。ただあの事故を思い出すとどうしても知りたかった。

中のいいやつとは最近連絡を取っていなかったので、久しぶりに声が聞けて良かったと思った。初めは疑ったさ。よくある詐欺なんかじゃないかってさ。でもよく話してみると僕でも忘れていた事も覚えていたりなんかして驚いた。

本題を話さなきゃと思い出して、当時のことを聞いて見た。

「何だよ〜。そんな昔の事覚えてるわけないじゃん。でもよ〜!確かそいつんち親が離婚したんじゃなかったっけ?」

「そうなのか?」

「ああ、確かそうだよ。そんで引っ越してったって誰かが言ってた気がする。今は母1人子1人って話じゃなかったっけ?にしても可哀想だよな〜。親が。一人娘が亡くなったなんてよ〜、俺なら犯人取っ捕まえてどうかしちまうかもなぁ〜?」

「だな。なぁ〜、他に彼女と親しかった子いなかったか?僕には思い当たる子いなくてさ〜。」

「ああ、確かそいつのダチがまだ今も同じとこに親と一緒に住んでるんじゃなかったかなぁ〜?」

「親と一緒かぁ〜。なんか聞き出しにくいよな…。」

「まぁそう言うなって。親は厳しい人とは聞いてないから案外簡単に聞けるかもだぜ?」

「本当かぁ〜?」

「まっ、駄目元で聞いてみろよ。」

「わかったよ。」

僕はそう言ってそいつとの電話を終え、今目的の場所の目の前に来ていた。家はアパートらしく木造だ。

目的の階は一階なので階段を上る必要はない。

部屋番号を見て表札を見ると苗字のみ手書きで書かれていた。

トントン…ドアを叩いて見た。

「はーい。」遠くで声が聞こえた。どうやら住人はいるようだ。パタパタとスリッパの音がする。ガチャっと音がしてドアが開いた。

そこには年配の女性の姿が。

「どなたですか?」そう言われても、とっさに返事ができなかった。それでも黙っていてはいけないと思い喋り始めた。そう、…事故の事を。

年配の女性は固まったままその場でじっと聞いていたが、ここが玄関だった事を思い出したようで、中に入るように勧められた。

僕は亡くなった彼女の同級生である事を伝えると目を大きく見開いた女性は涙をポロリとみせた。

「ご、ごめんなさいね。みっともないわね、こんな姿。」

「いえ、すみません突然押しかけて来てこんなこと言うなんておかしいのかもしれませんね。それでもすみませんでした。」僕には何もできなかった。ただただ彼女が冷たくなっていくのを見ているだけだったのだ。

事故後の不可解な出来事には触れなかった。母親が可哀想だったから…。


「ささっ、どうぞ。」

「いえ、でも僕はここで。」

「そう?でもありがとね。あの子昔あなたのことが…。」それ以上は口を噤んでしまった。僕はお辞儀をしてその場を後にした。



それから事故現場へと向かい、手にしていた花束を供えた。

「知らなかったよ。ごめんな?」

その時風が吹き、大丈夫だよと言っている気がした。

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