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76 嫉妬と怠惰

 オーク城に戻ると、案の定オーク娘たちはモソモソ起き出していた。


「あっ、ゴロウジロー! どこ行ってたの!?」

「……起きて、いなかったから慌てて探した。出かける時は一言言ってほしい」


 リズやヨーテにも心配させてしまったようだ。

『暴食』ミキも目覚めて、その辺のおっぱいを片っ端から吸い始めている。


「ゴメンな、ちょっとしたトラブルがあって……」

「トラブルならなおさらアタシを起こしなさいよ! アタシは『傲慢』リズ。最強の『七凄悪』なのよ! 旦那様のゴロウジローを助けるのにアタシほど相応しいオークはいないわ!!」


 さすが『傲慢』。

 自信の大きさにかけては、それこそオーク一だ。

 その、何より自分が凄いと思う心が、実際彼女を美しく輝かしくしている、ミス・プラシーボ。

 ただ、今回に限っては、取り合わせが……。


「何よ! 偉そうにー!!」


 リズを、誰かわからぬ少女が突き飛ばした。

 その少女はツインテールの髪が特徴的で、若くて活発な印象。


「ぐはあッ!?」


 不意打ちもらって、思い切り吹き飛ばされるリズ。


「アナコの男に馴れ馴れしいのよ、この自意識過剰女! 身の程を弁えろっつーの!!」

「ぐおぉ……! 誰よ、この暴力ツインテール……!?」


 リズも、突如登場の新キャラに戸惑うばかり。


「はぁ? アンタ、アナコのことわからないの? 同じ『七凄悪』なのに、お粗末な記憶容量ね!?」

「何ですって!? アタシは自分大好きだから、ヒトから悪く言われるのが大嫌いなのよ!! 今のはアタシへの宣戦布告と見なす! 名乗りなさい暴力ツインテ!」

「だからあんたの同僚だって言ってるでしょ! アナコよ! 『七凄悪』の『嫉妬』を司るアナコ!!」


 ……そう、レリスが僕を倒すために肉塊にして取り込んだ『七凄悪』。

『嫉妬』のアナコ。

 グチャグチャのミンチよりひでえや状態だったはずなのに、見事に蘇りやがった。

 しかも、手際よく女体化までしてやがるし、一体どのようなメカニズムで、あんな挙句の果てになったんだ?


「色々奇跡が重なったとしか……?」


 僕と同行してオーク城に戻ってきたレリスが言った。


「ゴロウジロー様とライレイ王妃は、私を救うために最大限のことをしてくださいました。ゴロウジロー様は、その神にも匹敵するもうエネルギーを放出し、ライレイ王妃は『竜帝玉』の機能を最大限にしてくれた」


 た、たしかに……。


「そのオーバースペックが、主対象である私以外にも影響を与えたとしても不自然ではないかと。肉塊として囚われた哀れな彼女らを元通りに再生したのも、ゴロウジロー様のパワーと『竜帝玉』の機能が合わされば、多分できないことではないでしょう」

「じゃ、じゃあ、彼女たちが最初から女体化していたのは?」

「ゴロウジロー様。たしか私の治療中、いくつか玉を潰していませんでしたか?」


 ああ、レリスの体内からまろび出ていた玉だろう。

 憎き『神玉』だと思ったから目につく傍から潰したよ、七つ。

 ……ん? 七つ?


「あの時レリスの中にあった『神玉』って『愛』『信仰』『節制』の三つだけだったよね!? なのに七つ!? ……んん?」


 七から三引いて、あと四つは?


「しかも『竜玉』は軒並み無事のようですし。あの時ゴロウジロー様が潰した三つの『神玉』以外の四つの玉。……一人につき二つと考えたら」


 そういうことか……。

 じゃあ、オーク娘だけ再生して『七神徳』のヤツらが復活しなかったのも、その辺に関係があるのか?

 金玉が身代わりとなって『竜玉』が無事だったオークは、『竜玉』を拠り所に再生して、『七神徳』は『神玉』を砕かれたから再生できなかった?

 もうむちゃくちゃだな。


「いいではありませんかゴロウジロー様。敵は滅び、味方は救われた! これ以上の成果が他にありますでしょうか!!」


 王妃ライレイが、力強く言った。

 そうだな、あまり深く考えるのはやめよう。オークの生態こそ深淵すぎて、真面目に考えすぎたら仕舞には発狂してしまいそうだ。


 今はそんな益体ない辻褄合わせよりも、今は目の前の小さな問題に心を砕こう。

 とても些細で、しかし壮大に厄介な……


「もー! もー! 皆ゴロさんに近づいちゃダメなの!!」


『嫉妬』アナコが、僕の隣に寄り添っていたライレイをグイグイ押して離す。

 ライレイだけではない。レリスも、目につく女の子片っ端から。


「ゴロさんはアナコのものなの! 誰も近づいたりさせないんだから!」


 何と言う独占欲……!

 これが『嫉妬』の『七凄悪』。でも、僕はすべてのオーク娘を愛するオーク王。誰か一人に独占されるわけにはいかないのだ。


「あの……、アナコ? 僕を大好きでいてくれるのは嬉しいけど……!」

「何よ! 勘違いしないでよね!!」


 え?


「アナコは、アナタを独占したいだけなの! 独占したいだけで好きでも何でもないんだからね! 勘違いしないでね!!」


 えぇ~?

 何この超めんどい。独占欲の強いツンデレとか超絶面倒くさい。


「面倒くさい」


 めんどいので、僕はアナコのことを即座にお姫様抱っこで抱え上げた。


「え? え? ええ!?」


 そんな自分の状況に、顔中真っ赤になって可愛いアナコ。


「キミが僕のことを好きでなくても、僕はキミのことが好きなので、今からセックスして身籠ってもらいます。『七凄悪』としての義務もあるしね。持てる者の義務」

「えぇーッ!? ちょっ、今!? ここで!? 皆が見てるのに白昼なのに、もうちょっとムードを考えなさいよバカ! そんなデリカシーがない人は大嫌い! 大嫌い!! …………大好き」


 うん。

 まあ今どきツンデレなんて流行らないしな。

 こうして『嫉妬』アナコも、めでたくオーク王国の仲間に加わりました。

 あまりヤキモチを焼かせすぎて刺されないように注意しよう。


              *    *    *


 そして生還した、もう一人の『七凄悪』。

『怠惰』スズモン。

 悪夢のような肉液を洗い流したあとは、長い黒髪をキュッと後ろで結び上げ、ポニーテルと太い眉が凛々しいサムライ系少女だ。


「親方様! この『七凄悪』が一角、『怠惰』を司りしスズキモンド。メス化したゆえスズモンと名を改め、オーク王たる親方様に忠節を尽くす所存!」

「お、おう……!」


 よろしくお願いします?


「王が代わったとて、オーク族に捧げる我が忠誠、一点の曇りもござらぬ! 親方様! 拙者に御命令をお与えくだされ! いかなる困難をも厭わずし遂げてみせましょう!!」

「え? じゃ、じゃあセックスさせてください?」

「承知!!」


 スズモンは力強く了承するのだった。

 ……なんだか、調子が狂う。


「……ライレイ、ライレイ」

「何ですゴロウジロー様?」


 隣に控えるライレイに救援要請。


「あの、この子。僕の前持ってあったイメージと違うんだけど……! 『怠惰』でしょ? もっとヌボッというか、ヌメッというか。ナマケモノ的な……!」

「たしかにそう思いますよね。でもスズモン様の場合……!」


 もうちょっとよく見てごらんなさい? とライレイから促されて、僕はスズモンを少しの間観察することにした。


「……しかし」


 スズモンが何か呟き始めた。


「そう簡単に操を許していいものか? 拙者とて初めてであるし、お床入りの作法など完璧に学んでからの方が……。親方様にも失礼があってはならんし。それに親方様も様々なメスと関係を持っておられる。メス同士の競争意識は揉め事の元とも言うし、親方様自身、そこまで励んで精がもつのか? ……うーむ、様々に懸念がい多いな。どうすべきであろう? そうだこんな時は……!」


 スズモン、天を仰ぎ言った。


「様々な可能性に対応するため、ここは 現 状 維 持 !!」


 何も決まらないことが決まった。


「ああいう方向性の『怠惰』なんです」

「なるほど」


 結局、スズモンの考えに合わせていたら何も進まないため、強引にセックスした。

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