68 後朝
結論から言って、何とかなった。
二十八万人のオーク娘全員に、無事種付け完了いたしました。
「絶対無理だと思っても、何とかなるってけっこうあることだよな……!」
結局のところ、あれからどれだけ経ったのかはわからない。
やってる最中はもう、なんやわけがわからなくなって、何度か明るいのと暗いのが入れ替わったような気がする。
しかし核心的なところになると、その時相手にしていた子が可愛いことと、めっちゃ気もちよかったことしか思い出せないのだった。
「でもまあ、何年も過ぎたってことはないだろう……」
とにかく今は夜。
久方ぶりに正気に返った僕の周囲には、地面が見えないほどに大量の全裸の美女が倒れ、眠りこけていた。
恐らく疲労困憊なのだろう。
地面に雑魚寝している全裸美女に中には、リズとヨーテ、メイデ、それにミキまでもいた。
全員と関係を持った記憶がたしかにある……!
「やったもんだな……、僕」
自分で自分が信じられない。
二十八万人、物理的に不可能じゃなかったのか?
しかし周りを見渡せば、スッキリした顔で眠るどの女のことも濃厚に抱き合った記憶があるし。
……何となくわかる。
試しに傍らで眠っている一般オーク娘の尻をパチンと叩いてみる。
「……!」
返ってくる尻肉の音響で、何故かわかった。
この奥にある子宮に、たしかに新たな命が宿っていることを。
そのほかの尻もパチンパチンと叩いてみるが。
「…………ッ!」
全員受精している……!
百発百中か!
どんだけ有能なんだ僕は!?
とにかくもこれで、オーク族最大の問題となっていた繁殖問題はクリアできたわけか?
本当にどうやったんだ僕?
一体、二十八万人全員孕ませるのにどれぐらい時間をかけたんだ?
「結婚式から十日ほど経っていますよ」
と声がしたので驚いた。
僕以外皆眠りこけていると思ったのに。
振り返るとライレイが、周りで雑魚寝している皆同様に全裸で。その輝かしい女体を月光に煌めかせていた。
「やっと正気に戻られたのですね。励まれている最中は、何かに取り憑かれたような様子でしたから」
「僕も、記憶が曖昧だよ……」
ライレイは僕の隣まで歩み寄り、その身を僕へしなだれかからせる。
素肌と素肌が接しあう、この世で一番幸せな感触が、我が表面に広がった。
今気づいたが僕も全裸だった。当たり前か。
「ドレスを部屋に戻してきました。一生懸命作ったものですので」
「そうだな、この状況じゃ裸でいないわけにはいかないけど。せっかくの花嫁衣裳をなくしたくないしな」
とりあえずライレイを抱き寄せて、そうしたらまたムラムラしてきたので始めようかと思ったけれど、さすがに体が付いてこなかった。
限界か。
「あの……、この僕、どうなってた? さっきも言ったけど、記憶があやふやで……」
そのくせ各女の子のことは鮮明に覚えているんだが。
周りにいる二十八万人。完全に顔と名前が一致する。
「皆を愛しまくっている時のゴロウジロー様ですか。…………凄い、の一言ですね」
「そうすか……!!」
「行為が加速するごとに時間と空間が歪み始めたのには脅威を感じました。さらに二周間に入ったのには皆が驚愕しましたし」
「二周目!?」
「最終的には十五周ほど……、私もその頃には意識が朦朧としていて自信はありませんが……。でも凄く幸福で、満ち足りていたことは覚えています」
ライレイは、僕の腕をとって、よりきつく自分に巻き付けた。
幸福を触感で味わっているかのように。
「ゴロウジロー様、少し歩きませんか?」
「歩く? いや、それをするには周りが……!」
それこそ足の踏み場もなく全裸美女たりが雑魚寝していて、彼女らを踏まずに移動するなどとてもできそうにない。
「大丈夫です。踏まれて起きるような繊細な子は、オーク娘にはいません」
僕の腕からスルリと抜け出し、ライレイは生まれたままの姿に惜しげなく月光を浴びせつつ、進んでいく。
足元から「むぎゅ!」「ふぼッ!?」とかいう声を押し出させながら。
「……ッ!?」
ライレイを追わないわけにはいかないので、僕も申し訳ないと思いつつ踏んでいこうかとしたけど、やっぱりできないので、できるだけ重さを分散させようと女の子たちの上を這って進むことにした。
接地面すべてに感じる、極上の女の柔らかさ……!
その地獄のような極楽のような匍匐前進はしばらく続き、やっと地面が見えるようになってから二本足で立った。
その先にライレイもいた。
「ライレイは……、何だか変わったな」
「そうでしょうか?」
ライレイの裸体に月光が反射して煌めく。
「何と言うか……、落ち着きが出てきて頼りがいが出てきたというか……。僕の母さんに似てきたな」
「それは嬉しいです。ゴロウジロー様のお母様に似てきたなんて。いつかお会いしてみたいものです。お父上のイチロクロー様にも……」
そうだな。
僕が旅に出た一番最初の目的『妹たちをレイプするかもしれないオークを根絶する』目的は既に果たしたと言っていい。
今や僕の周りにいるのは、可愛い守るべき女たちばかり。
このライレイを筆頭にして。
「でも、私がお母さまに似てくるのもわかる気がします。私も、もうすぐ母親ですから」
「あー……」
満ち足りた様子で自分のお腹をさするライレイ。
……そうだな、二十八万女子全員に種付けしたというのに、ライレイだけが授かっていないはずがない。
パチン、とお尻を叩く。
「ひゃあッ!?」
返って来た反響には、たしかに『入っていますよ』という言葉があった。
「おめでとう。そして、これから大変になるな」
ギュッとライレイの裸体を抱きしめ、僕は責任と喜びを実感した。
「本当に始まるんだ、オークの新しい時代が。破壊と殺戮じゃなく、協力で繁栄していく。僕はキミたちを力の限り守る。一緒に来てくれるねライレイ?」
「はい、喜んで!」
月下で改めて交わす誓い。
僕らは抱き合いながら、互いの幸福を感じ取った。
世界のすべてが僕たちを祝福しているかのようだった。
『――いいえ、まだです』
上空から、聞き覚えのあるような、しかし初めて聞く声が降ってきた。
おぞましい濁った声。
危機感に突き動かされて空を見上げると……。
そこに天使が浮かんでいた。
『アナタたちオークの新時代のために、まずは私と戦ってもらいます』
『私たちと』
『私たちを倒さぬ限り、オーク新時代の幕は上がらぬものと心得なさい』
『さあ殺し合いましょう! 愛と色欲の赴くままに!!』
たった一人の天使が宣言した。
四つの口から