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63 王妃擁立

「あ、あの……、ライレイ、さん……?」


 僕同様、並んで正座させられて、リズからのお叱りを受けるモードのはずのライレイ。

 さっきから一言も発していなくて、存在感が空気のようだったが……。


「アタシ……、さっきからあえてライレイの存在を無視していたのよね……!」

「ウチも……!!」


 実は僕もそうなんだけど……。

 リズもヨーテも脂汗を掻くほどに、あえて無視を決め込みたくなるほどのライレイの存在感はと言うと……!


 キラキラキラキラ……、と。

 輝いていた。


 輝く淑女ライレイだった。

 僕とのセックスを経て、何と言うか、処女でなくなった今ライレイの魅力はそれ以前とは段違いに鰻登り。

 妖艶かつ清純かつ凛々しく高貴で情熱的、みたいな感じで、ライレイのすべてを手に入れたはずの僕ですら物怖じする程のライレイの迸る魅力……!?


「皆さん、どういたしました?」


 と僕たちに向けて微笑みかけるライレイ。


「ギャーーッ!? 眩しい!? 眩しい!?」

「……ライやんの笑顔で目が眩む。光で溶けて灰になる……!」


 ライレイの麗容から発せられるフェイスフラッシュ(形容)に、全員目が眩んで直視できない!?

 まるで下賤の者には貴人を直接見ることすら許されないとばかりに!

 一体どうしたんだライレイは!?

 まあ、きっかけはわかるけど……! しかしどうしてこんな方向に?


「女とは……、セックスによって変わる者……」


 どこからともなく忍び込んでくる魅惑の声。

 その声……!

 さらなる『七凄悪』、『色欲』のレリスか?


「相変わらず、スルリと出てくるやっちゃなー……!」

「恐縮ですわ。それよりも……、女は、男に抱かれることで変わる生き物なのです。それこそ、蝶が蛹を脱ぎ捨てるように。しかも何度でも」


 ……蛹から蝶。

 たしかにライレイの変化は、その比喩に相応しい劇的さだが。


「ただし、女はセックスで変化するものですが、不思議なことでセックスして自分の価値を上げる女もいれば、逆に価値を下げる女もいます。その違いが判りますか?」

「?」

「無論、相手の男の価値に寄ります。英雄に抱かれた女は己の価値を上げ、クズ男に抱かれたい女は自分もまたクズへと成り下がる。ゆえに女は、体を許す相手をしっかりと見極めなければならないのです」


 わかるようでわからんような……!

 でもレリスが言うと含蓄のあるっぽい感じになるので思わず頷いてしまいそうになる。


「……だったら、このライレイのキラキラぶりは納得よね」

「有史以来の英雄たるゴロやんに抱かれたら、女神になってしまうのも道理……!」


 いやいや。


「……で、そんなライレイさんを王妃になさる、というお話ですか?」


 そうだ、そうだった。


「ライレイは、オーク娘の中でも、僕が初めて出会って供になってくれた子で、これまでも散々世話になった。彼女なら末永く僕のことを支えてくれると確信している」


 そのライレイは、いまだ処女喪失の余韻でお花畑を彷徨っているけど。


「それから『竜帝玉』ですね?」

「……」


 やはりレリスは、そこを指摘してきたか。

 何となく予想はできた。


「そう、たしかに事故とは言え、『竜帝玉』を飲み込んで一体化してしまったライレイをそのままにしておくことはできない」


 元々はオーク王の中にあったものだし。

『竜帝玉』を宿すライレイをオーク王妃に迎えることで、強固な体制づくりを確立したい。


「承知いたしました。そういうことであればこのレリス。『七凄悪』の一人としてゴロウジロー様の考えに賛同いたします」


 そう言って膝を折り、跪くレリスだった。

 礼することで視界に入る、彼女の後頭部を見て。


「バッカじゃないの? わざわざ承認なんかしなくても、オーク王になったゴロウジローの言うことに誰も逆らえるわけないじゃない?」


 僕に抱きしめられたままのリズが嘲るように言った。


「そんなことありません!」


 しかし、轟く雷鳴のように割って入る声。


「ライレイ!?」

「お花畑から帰還した……?」


 唐突なライレイの参加に、皆が戸惑う。


「一番強い王の一声ですべてが決まる、それは力ですべてが決する昔のオークの世界での話です。しかしゴロウジロー様が王になられた今、オークの世界は変わるんです。力ですべてを決めることなどゴロウジロー様は望んでいないからです」


 あ、はい。

 そうです……。


「これからはオークたち全員に理をもって説明し、可能な限り全員に納得してもらうような取り計らいが必要です。『七凄悪』は、メス化した今でも強い力と名声を持っています。その皆さんが合議して主張を一本化すれば、自然と他のオークたちもまとまりを持つはずです!」

「「「…………」」」


 とりあえず皆で、パチパチパチ……、と拍手してみた。


「……うん、やっぱりオーク王妃はライレイでいいと思う」

「ウチらはそんなめんどくさい考え事無理。適材適所……」


 リズやヨーテからもアッサリ承認を貰うのだった。


「じゃあ、オーク王妃はライレイでいいとして、次に考えることは……!」

「もろちん!! ……いや、もちろん!!」


 なんかまた別の人の声が!?

 現れたのはメイデ! 現在オークの都に住む唯一のヴァルキリーで、つい先日めでたく捕虜からただの居候にランクアップした女の子だ!


 そんな彼女が飛び込み気味に部屋に乱入しながら、元気よく言った。


「結婚が決まったんならァーーーーーー!! 次にやることはただ一つ!!」


 落ち付いてくださいとりあえず。


「結婚式よ! 結婚式をするのよ!!」

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