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48 悪女の実力

 それはそれとして、約二十八万まで膨れ上がったオーク娘たちの間では新たな問題が勃発しようとしていた。


「アタシが!」

「ウチが……!」

「「ゴロウジローの王妃となる!!」」


 なんかリズとヨーテが戦いだしていた。

 その様子を、他のオーク娘たちも物見高く観戦している。


「行け行けリズ様ー!」

「ヨーテ様も頑張れー!」

「あわよくばどっちとも潰し合えー!」


 と、やんやの喝采である。

 何をやっているんだろう、あやつらは?


「ゴロウジロー様の正妻の座を巡る、決闘だそうです」


 僕に副官然と付き従うライレイが、僕の心を見透かすように解説してくる。


「メイデのアホから結婚、妻という概念を吹き込まれて以来、都中のメスオークたちは、その新語の虜となっております。自分こそがゴロウジロー様に見初められ、王の妻、つまり妃になろうと燃え上がっているのです」


 そんなことに。

 しかし何故それが喧嘩沙汰に発展を?


「そこはメス化してもオークですので、望みを叶えるのは強い者というのが共通認識なのです」


 何と言うか。

 オークは女体化しても芯が単純と言うべきか。


「早速オークファイト、レディゴーよ!!」

「オークファイト国際条約第一条、タマタマを潰された者は失格となる……」


 キミらもう潰れてるやん。

 だったらどうやって勝敗を決めるんだ?

 とか言ってるうちに戦いが始まった。


「先手必勝! シャイニング・プライドよ!」


『傲慢』リズの十八番、指先から眩い閃光が放たれる。

 命中すれば山をも吹き飛ばす、その光は、彼女の中に埋め込まれた『傲慢』の『竜玉』が生み出す力だ。

「自分こそが最高」という思い上がった心が、みずからを照らす光となって現れるのか?

 それに対して『強欲』ヨーテは……?


「ヨーテ! アンタの『強欲』の能力は、他者から力を奪い取ること! でも今まで奪い続けて溜めてきた力は、メス化したことで一回リセットされた! その上他の子から奪うことはゴロウジローから禁止されている! 実質、アンタの能力は無効化されてるわ!!」


 勝ちを確信したかのように叫ぶリズ。


「アタシのシャイニング・プライドを阻止する術はないわ! 往生せいやぁーーーッ!!」


 殺す気?

 しかし当のヨーテは、少しも慌てた風もなく……。


「無問題。たしかにヒトから奪うことはゴロやんから禁止されていて、ウチもゴロやんに嫌われたくないからそれを守る。だから……」


 直撃した閃光を、ヨーテは容易く弾いた。


「なッ!?」

「ヒト以外から奪えばいい」


 ヨーテの体が、まるで岩石みたいな色と硬さに!?

 あれでリズの閃光に耐えきったのか?


「何をしたのヨーテ!? その肌は……!?」

「足元の地面から、石の硬さを奪った。自然物からの強奪はセーフ、セーフ」

「くっ、考えたわね! でもヨーテ、もう体から岩石並みの硬さが抜けてるわよ? 以前みたいに強奪した力を半永久的にストックすることはできないみたいね?」

「そういうリズこそ、閃光の威力が大分落ちてる。やっぱりメス化して全パラメータがまんべんなく下がった……」

「その分アタシはおっぱいや丸いお尻を得たからいいのよ! メス化しても大して実感の得られないロリ体型のアンタと違ってね!」

「ロリにはロリの需要がある……。そういうリズは大きさではライレイやレリスに敵わない中途半端。それが一番印象薄い……!」

「何だとこのぉー!!」


 リズが閃光を連発し、ヨーテが地面から奪った硬さで受け止める。

 その繰り返し。

 攻防が完全に型にはまって見事な千日手となってしまっていた。

 リズの閃光が必ずヨーテに当たるわけでもなく、放っとけば放っとくだけ被害が拡大するので、そろそろ僕が止めようかと思うところだが、実はそれができないでいた。

 何故かというと。


「れろれろれろれろ……」


 さらなる『七凄悪』の一人、『暴食』ミキがさっきから僕の上に覆いかぶさっていたからだ。

 今や基本メンバーとなったオーク三人娘より比較的最近、女体化したミキ。

 女体化前の体格が影響してか、女性となった今も目を見張るような巨体で、僕などより大きい。

 おっぱいも大きいし尻も大きい。そのクセ腰だけはやたらと括れている。

 だから、しなだれかかってきたら簡単に押し倒された。

 そしてこのミキ。これも『暴食』の『七凄悪』だからか、女体化してからこっち常に女の子のおっぱいを吸い続けている。

 主要メンバーのあらかた全員が既に被害を受けていて、僕もおっぱい吸われるのかなー? と思いきや、ミキが狙ってきたのは乳首ではなく唇。

 僕は今、ミキから思いっきり口内を貪られていた。


「れろれろれろれろれろれろ……!」


 この騒動が始まってから、僕が一度も肉声を発していないのは、このためによる。

 全体が大きいためにミキの舌も牛タン並みに長くて太く、僕の口内を蹂躙するには充分だった。

 片時も途切れることのない制圧的なディープキス。

 これも彼女の食欲のなせる業なのか?


「あの……、ゴロウジロー様……!」


 傍に控えていたライレイが溜まりかねて口を挟む。


「いい加減ミキ様を引き離してはどうですか? 最強オークのゴロウジロー様の力をもってすれば、簡単なことでしょう?」


 そうは言うがなライレイよ。

 たしかに僕の中に宿る『憤怒』と『正義』の力を使えば簡単だろうけど、ミキはただ単に食欲を満たしたくて僕とディープキスしているだけなのだから、あまり乱暴なマネはしたくないというか……!


「ミキ様も! 同じものばかり食べていては偏食になって体調を崩しますよ! 私のおっぱい吸っていいですから! さあ!」


 とライレイがみずからオーク娘の中でもトップクラスの豊乳をミキへ示す。

 その美味しそうな気配につられて、僕の口から舌を引き抜き、そのままライレイのおっぱいへ移動。


「ふう助かった……! ライレイ、キミのお尊い犠牲のおかげで、久方ぶりに僕の口が解放され……、むごッ!?」


 再び口が制圧された。

 僕の口を塞いだのは、他でもないライレイの唇だった。

 ライレイが、自分の乳をミキに吸わせながら、僕とのディープキスを敢行していた。

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