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44 即位

 ほんのちょっと時は飛ぶ。

 オーク城で繰り広げられた異変は、当然のことながら即日オークの都全土に広まり、そこに住むオークたちに動揺と困惑を与えた。


「オーク王が死んだフゴ?」

「正直あんなヤツどうでもいいフゴが、これからオレたちどうなっちゃうフゴ?」

「誰がオレたちを率いて天界軍のヤツらと戦うフゴ?」

「オーク王が死んだのはマジどうでもいいフゴが」

「ホントにオーク王はどうでもいいフゴ」


 そんな都内在住のオークたちが一斉に集められたのは、それからすぐのこと。

 あまり時を置くと混乱が広まり、オークの習性も相まって収拾がつかなくなるとの意見から、可能な限り速やかに実行に移すことになった。


 オークの都に住むオーク、総勢約二十万。

 オーク城前にある超特大広場に集められて、ガヤガヤ騒然としていた。


「今日は、お前たちに発表すべきことがある」


 僕自身が破壊したオーク城の、それでもその中で一番高い位置に、僕は立っていた。そこから二十万という大圧巻の群衆を見下ろす。

 しかもそれらすべて例外なく屈強のオークなのである。

 コイツらが無秩序に蠢くだけでも、小さい規模の村落程度は虫のごとく踏み潰されて跡形も残らない。

 そんな凶悪な集団としての二十万。


 そしてそれに真っ向から相対する僕ことゴロウジロー。

 しかし僕は今日から、ただのゴロウジローではない。


「皆も知っていることと思うが、先日、お前たちを支配するオーク王、大なんとか・なんとかオーク・なんとかなんとか……が、死んだ」


「そこはどうでもいい」という二十万人分の気配が伝わってきた。


「殺したのは僕だ」


 そこでより一層、ドヨドヨドヨ……ッ、と騒然さが盛り上がってきた。


「僕の名はゴロウジロー。かつてオーク軍にてもっとも恐れられた鬼神、『憤怒』のイチロクローと、天界軍最強のバルキリー『正義』のフリッカとの間に生まれた子供」


 騒然さはさらに上がり、今にも暴動にまで膨れ上がらんとする。


「オーク王をこの手で殺した以上、ヤツの持っていたすべては僕の手に移った。つまり、この地上に生き残った全オークの支配権も」


 重要なのはここからだった。

 ここまではすべて前フリ。本当に伝えなければならないことを、今これからいう。


「つまり今日この時から、僕がオーク王だ」


 このゴロウジローが、新たなるオークたちの支配者となって、オークたちを率いていく。

 それが今日この会見で、僕がコイツらに伝えるべきことだった。

 通告とも言っていい。

 僕がいかなる無理難題を突き付けようとも、コイツらに拒否権などはないのだから。


「この僕、ゴロウジローが全オークを率いて、お前たち全員の生殺与奪の権を握る。僕は王者だ、支配者だ。お前たちにとって僕の命令は絶対であり、逆らう者には死あるのみ。そこでまず、僕はお前たちに最初の命令を下す」


 いや……。


「これは法だ。法律だ。オークにとって今までそのような概念はなかっただろう。しかし今から、初めてオークに対し明文化された法が施行される。法とは、永遠に効力をもつ命令と考えればいい。一度発令されれば二度と撤回されることはない」


 そして、僕が新たなオーク王の座に就くことを承認したのは、この法を実施するためだった。

 僕自身のため、僕の愛する妹たちのため、そして新たに僕の掛け替えのないものとして加わったライレイ、メイデを始めとする可愛い女の子たちのために。

 僕は、この法を敷く。



「これより全オークは、レイプを全面禁止とする!!」



「「「「「「フゴォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!?!?!?!?」」」」」」


 地表から返ってくる二十万人分の戸惑い。

 それはもはや怒号に近かった。


「何言ってるフゴ!? ふざけているフゴ!?」

「オークにレイプするなと言うのは、死ねというのと同義フゴ!!」

「レイプしなきゃどうやって子孫を増やしていけばいいフゴか!?」

「レーゾンデートルの消失フゴ!! オークとは、レイプする葦フゴよ!!」


 超不評だった。

 しかし僕は一歩もたじろがない。


「これは決定されたことだ。僕がオーク王である限り、この法は覆ることはない。今日よりオークの歴史は変わる。この僕の手によって、オークはレイプしない真っ当な種族へと生まれ変わるのだ!」


 レイプなど、クズの行うもっとも下等な行為。

 それをする者も、したいと望む者にも生きる資格などない。

 だから僕はこれを機に、レイプしようとする者も、レイプという行為そのものも地上から根絶させる。


「ふざけんなフゴォ!!」


 ついに聴衆の怒りが爆発した。

 群がる中で一番先頭に立っていたオークが、鼻息荒く僕へ向かって駆け出していく。


「何がオーク王だフゴ! あんなクソ弱ブタ殺したぐらいで思い上がってんじゃないフゴ!!」


 もはや逝去して先代となったオーク王。

 やっぱり皆から弱いと見破られていたのか。


「オークの勝ちは強さにこそあるフゴ! オレたちを従わせたいんならゴチャゴチャ言わずに強さを見せつけてやるフゴよ! オレ様一人倒せないようでオーク王を名乗るなんて……! フギッ!?」

「清々しいまでにパターン入った前フリ、ありがとうよ」


 僕はオーク城の頂上から群衆の面前に降り、その瞬間向かってくるオークの股間を蹴り上げた。

 めぎん、としたいつもの手応えが伝わり、オークはそのまま崩れ落ちた。


「もはや馴染んできたな。この潰れる感触」


 残り十九万九九九九人。

 まあ二十万人は目測軽量なのでそこまで正確な数じゃないんだけど。とりあえずそれくらいの数に、たった一人で向き合う。


「しかしコイツの言う通り。オークにとって何よりも重大な法は『強さ』。強い者が弱い者を支配する。それこそがオークにとって最高の、言葉にするまでもない法。僕もそれまで改めるつもりはない」


『正魔のメイス』をかまえる。


「不満があるヤツはかかって来い。真オーク王たるこの僕の、王たる所以をその身に教えてやろう。その代わりお前らは、授業料として命に近いものを失うことになるがな」

「知るかフゴーッ!?」「上等フゴ!」「偉そうなこと言いやがって! その大口に似合った強さを持ってるか、実際試してやるフゴ!!」「思い上がってんじゃねえフゴ! 二十万人相手に勝てるわけないフゴ!!」「すぐさま負かしてメス化させて、二十万人で輪姦してやるフゴーッ!!」


 かくして僕一人と、オークの都に住む総勢二十万オークとの戦いが始まった。

 戦闘開始は、太陽が南天に上り切る一歩手前の正午前。

 そして日が暮れる頃には、二十万オークの総女体化が完了した。

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