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43 真面目な話

 オーク軍『七凄悪』の一人『色欲』のレリス。


 彼女は実に手ごわい相手だった。何度でも言うが、これまで相対してきた中でも最強かもしれない。

 パチン。

 指を鳴らす彼女。


「わぎゃーーーーーッ!?」


 それに呼応するようにメイデの衣服までボトボト落ちて、瞬く間に全裸になるのだった。

 どんどん脱がせ方が雑になってくる。


「皆が脱いでいるというのに、服を着ている人がいては仲間外れになってしまいますから。可哀相でしょうそんなの?」

「有無を言わさず脱がされる方が可哀相ですよ!」


 誰もこの女を止めることはできない。

 僕の記憶を紐解いてもここまで好き放題やったヤツがかつていただろうか?


「さあ、これで全員、邪魔なものはすべて脱ぎ去りました。今こそすべてを『色欲』に委ねて、乱交する時!」

「「「「「しませんよ!?」」」」」


 なんと恐ろしいヤツなのだろうか、『色欲』のレリス。


「あらあら、堅物のゴロウジロー様はともかく、子作り大好きメスオークや淫乱なバルキリーまで拒否するなんて、なってませんわね」

「誰が淫乱だ!? 我らバルキリーは、ただ自分に勝った相手に色仕掛けで取り入るだけだ!!」


 メイデの全然反論になってない抗議が飛んだ。


「それって、自分に勝った相手の子供を執拗に孕もうとするメスオークと共通点があるよな」

「だから私ってお姉様たちと気が合うのか!?」


 今更どうでもいい共通点が指摘された。

 そして今更メイデとオーク娘たちの絆がより強くなった。


「そんなことより! 私たちにはもっと重要な、話し合うべきことがあるはずです!」


 ライレイが必死に混乱を治めようとしていた。全裸のままで。


「重要なこと? ゴロウジロー様の子供を孕むことですか?」

「違う! ……いいや違うくない! それももちろん重要ですけれど、今は置いておいて。重要なのは……!」


 重要なのは?


「オーク王様が死んでしまったということです!!」


 …………。

 ……ああ。


「そう言えばそんなこともあったな。些事だからすっかり忘れていた」

「些末なことじゃないですよ! オーク王は、オーク軍を率いる最高権力者だったんですよ。それを殺してしまうなんて!」


 ライレイは、「なんてことをしてくれたんですか!?」とばかりに狼狽えたり怒ったりだった。全裸で。


「いや、だって実際手を下したのはレリスだし」

「死ぬのが既定路線のところまで追い詰めたのはゴロウジロー様ですわよね?」


 責任のなすり合いをする僕たちだった。

 まあしかし、ヒトのことを見下すわ、僕の可愛い女性たちを勝手に分配しようとするわ。

 あまつさえオヤジを殺すためにオヤジの居場所を教えろまで言い出すんだもん。オヤジのいるところには母さんと、僕の可愛い妹たちもあり。

 あの子たちに危害を加えんとする者は、たとえその行動が未定であっても殺しておくのが吉。

 よってオーク王は死ぬべきなのでした。証明完了。


「ですが、オーク王が亡くなることによって、オーク軍全体にどんな混乱が引き起こされるやら! オーク軍だってただ無秩序に暴れているわけではありません。天界軍に対抗する重要な戦力なのですよ!?」


 と激昂するライレイ。全裸。


「たしかに、司令塔を失うことで、オーク軍が不利になるのは嫌だな。その辺どうなの?」

「まったく問題ありません」


 全裸のレリスが答えた。


「あのクズは戦争にはまったく関わらず、『七凄悪』の軍団長に任せるばかりでした。自分がすることと言えば、この城でふんぞり返り、かつていた人間の王族の真似事ばかりして、食って寝てメスを犯すばかり。何の役にも立たないクズのゴミでした」


 あまりにも好き放題な言い方。


「ですので今日、ゴロウジロー様があのゴミを処理くださったのは、大変ありがたいことだったのです。これでオーク軍は余計なお荷物から解放されて自由に動けます」


 それに……、とレリスは続ける。


「これはオークの流儀に合ったことです。本来オークの頂点に立つのは最強のオークでなければなりません。それをあのゴミは、たまたま与えられた『竜玉』の力でオークたちを惑わし、従えて、オーク王などと僭称していたのです」

「オーク王は、王に相応しくなかった……?」


 とやはり全裸のヨーテが指摘する。


「その通り。そこへ今日、真の最強オークたるゴロウジロー様が現れ、道理に反したバカ者を粉砕しました。強い者が弱い者を殺す。オークにとってこれほど正しいことはないでしょう」

「それは、そうだけど……!」


 リズもまた全裸だが、レリスの主張に傾きかけていた。


「しかしこれまでオークたちがオーク王を頂点として機能してきた以上、突然にトップを欠くことは混乱に繋がります。そこで……」

「待ってください」


 全裸で語り進めるレリスを、全裸のライレイが止めた。

 そして全裸のまま言う。


「わかってきました。レリス様が言わんとしていることが」

「それは?」


 全裸のメイデが続きを促すのに、ライレイは全裸で答える。


「オークの鉄則たる『強い者が正義』。なくなったオーク王はその点で正しくなく、逆にオーク軍歴代最強と言っていいゴロウジロー様は、絶対正義と言ってもいい。

そのゴロウジロー様が、オーク王を倒した。ならば……」


 回答に辿りつく、全裸のライレイ。


「ゴロウジロー様こそが、新しいオーク王となればいいのです!」


 あと追伸するが。

 レリスのおっぱいにひたすら吸い付いていたミキもいつの間にか当然のように全裸だった。

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