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42 オークの羞恥

 え?

 一体何故泣き出すライレイ?


「泣いちゃダメよライレイ! アンタはよくやったわ!!」

「自分から服を脱ぐなんて、あっちのエロ年増じゃなきゃできない背徳行為。ウブなライやんにはできなくて当たり前」

「むしろゴロウジローへに犯されたいって気持ちがよく伝わってきたわ!」

「よく頑張った、よく頑張ったよライやん……」


 なんか軍団長二人がいつになく優しい……。

 一体何事なのだろうか?


「でも私から……、私から犯しに行かないと、ゴロウジロー様は……!!」


 と益々悔しそうになくライレイだった。


「それが、メスオークの習性なのです」

「うおぉッ!?」


 気づけばレリスがすぐ背後まで忍び寄っていた。

 おっぱいにミキをぶら下げたまま。


「ゴロウジロー様もご存知の通り、オークは敗北することによって性別を変える不思議な生き物」


 正確には玉を砕かれることによってだけれどね。


「それは繁殖行為に効率と確実性を与える優良なシステムですが、それ以上に大きな社会的意義も含まれます」


 社会的意義?


「オークにとっての社会性。それは強者と弱者、その違いという一点のみに集約されます。強い者が弱い者を支配する。そのたった一つのルールによってオークの社会は形作られている」


 負ければ――玉を潰されたら――、女になるというオークの生態は、そうした社会性にピッタリとマッチした。

 戦いに負けるものは弱者。弱者はすべてを奪われ、強者の支配を受ける。

 かつて戦士であった自分の力、誇り、実績もすべて消え去り、一匹のメスとなって自分を負かせた強者の子供を生むのである。

 で。

 それと今目の前でライレイが泣いているのとどういう関係があるの?


「そういう社会性であればこそ、メス化したオークは、何事においても奪われる立場でなければならないのです。無論生殖の場合も、メスは自分の意思に関係なく、オスに犯されるだけ。それは全オークにとって当たり前のこと、常識と言っていい価値観なのです」


 あ。


「そんな彼女たちにとって、オスの意向を無視し、自分から生殖行為に及ぶなどということはこの上なく不埒な行為、破廉恥と言ってもいい。彼女たちは自分からオスを犯すという行為に、耐えがたい羞恥心を感じるのです」


 自分から「レイプして、レイプして」と毎日のように迫ってくる彼女ではあるが。

 たしかに彼女たちの方から性行為に及ぼうとしたことはこれまで一度もなかった。


「わかりにくいですが、スイッチはちゃんとあるのです。女の子の恥じらいが丸出しになるスイッチが」

「でもレリスは、一瞬の躊躇もなく僕のこと犯そうと来たよね?」

「わたくしはオークの中でも特別ですから……」


 さすが『色欲』の『七凄悪』。

 ……しかし、よくよく考えてみると、オーク娘たちにそれぐらいのブレーキがなければ、とっくに一線を越えてしまっていたはずだ。

 出会ってから、ここオークの都にたどり着くまでに何日経過したことか、その間四六時中、七万九千人ものオーク娘たちに性的な攻勢をかけられていたら、さすがの僕も踏みとどまれずに押し流されていたに違いない。

 彼女たちは激しく自己主張しながらも、僕の方から犯しに来てくれるのをずっと待っていたということか?


「うふふ、初々しいですわね。さすが処女オークにはならではの魅力がありますわ」


 しかしそうした抑止力を一切持たず、ガンカン襲ってくる『色欲』のレリス。

 もしかしたら僕がこれまで出会ってきた中で最強の相手ではなかろうか?


「そうは行きません!!」


 そんな強敵レリスに、うら若い少女たちが果敢に立ち向かう。


「アナタのような年増に、ゴロウジロー様からの寵愛を奪われてなるものですか! 私はアナタと、徹底抗戦します!」

「そうよ! 脱いで迫ることだけが取り柄の年増めー!」

「そのだらしないおっぱいを仕舞え……!」


 勃発する美女オークvsオーク娘たちとの全面戦争。

 その熱気に押しやられて、僕は口出しできない。


「私は、どうすればいいんだろう?」


 バルキリーのメイデは、オークたちの姦しい内乱にどうしていいのか戸惑い通しだった。

 でも、これ以上話をややこしくしたくないので、メイデは関わらないでください。


「大体、アナタはオークとしての恥じらいが足りません! 何ですかそんなにスポスポ脱いで! お尻丸出しで恥ずかしくないんですか!?」


 まあたしかにレリスは、自分から衣服を脱いで今や完全全裸。

 おっぱいにミキが齧りついてるので何とか大事な部分は隠せているが、全裸であるという事実は変わらない。

 にも拘らずオーク娘たちを向こうに回して仁王立ち。


「服は自分から脱いじゃ意味がないのよ! オスに脱がされてこそ意義があるのよ!」

「その侘び寂がわからない露出狂年増。さっさとその垂れた乳を仕舞え。……いや、いっそ『強欲』の能力で奪ってやろうか?」


 ヨーテは単に巨乳が羨ましいだけだった。


「うふふ……、生娘らしい、しょうもないことへの拘りですわね。可愛いこと」


 レリスは相変わらず余裕だった。全裸で。


「ですが、わたくしのやりようがもっともゴロウジロー様と交わる寸前まで迫れたことはたしか。アナタたちが邪魔さえしなければ、今頃ゴロウジロー様の精はわたくしのお腹の中でした」


 妖艶に微笑むレリス。

 勘弁してほしい。


「次世代の最強オークが生めるチャンスを逃したのは残念ですが、まあこれからも機会はあります。ですがチャンスとは、みずから掴みにいかなければいけないものです。アナタたちのように来てくれるのをずっと待っているだけではつまりません」

「そんなこと! メスオークにだって恥じらいは必要です! 私たちの衣服は脱がされるためにあるので、自分から脱いではダメなんです!!」


 なんだか論点がドンドンずれていっている気がする。


「そうですか、脱がされなければいけないんですか。では……」


 レリスが動いた。

 けっして速くはないが、見る者の注意をすり抜ける不思議な動き。

 その流れでまんまとライレイの背後に回ったレリスは、そのまま背筋に指をツツツ……、と。


「ひゃあッ!?」


 思わぬ攻撃に、色っぽい声を上げてしまうライレイ。

 しかし事態はそれだけに収まらなかった。

 ぽと、ぽと、っと地面に落ちる服や鎧。


「ええぇーーーーーーーーーーッッ!?」


 何故か一瞬にしてライレイの着ているもの全部が落ちて、一挙にして全裸になってしまった。

 顔を真っ赤にして乳股を隠すライレイ。


「一体何が起こったの!?」

「『色欲』年増の仕業であることは明らか……!?」


 あの背筋をつつっと指でなぞったのが、全裸化の原因だとでも言うのか!?

 しかも地面に落ちたライレイの衣服は、切れ目とかを入れられた様子もなく、一切無事。

 あれでどうやって、背筋をなぞる一動作だけで全部脱がせられるんだ!?


「服とは、女性の魅力を引き立てる重要な装飾具。それを破り剥ぐなど下劣な行為でしかありませんわ」

「そんなことどうでもいいです! なんでいきなり私のこと裸にしたんですか!? 意味わかりません!!」

「だって、自分で脱ぐのは嫌なんでしょう? だからわたくしが脱がせてあげようかと」


 滅茶苦茶だった。

 しかし『色欲』無双はそこまでで留まらなかった。

 仲間の恥辱に戦慄を覚えるリズ、ヨーテの二人にも、色魔は背後から忍び寄り……。

 つつつ、と。


「ひゃうッ!?」

「うおっと……!?」


 色っぽい喘ぎと共に、やはり衣服がボトボト落ちた。

 あとに残るのは眩いオーク娘たちの裸体のみ。


「きゃーーーーーーーーーーッ!?」

「いやーーー……!」


 かつてないほど全裸人口が上がっている!?


「いいではないですか、見せるべきものを見せればゴロウジロー様もその気になっていただけるでしょうし、一気にオーク軍は最強精鋭化ですわ」

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