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32 バルキリーの生態

 以下は、オークの都へと向かう道すがら、捕虜となった戦乙女メイデから聴取した天界の情報だ。


             *    *    *


「うわー、凄い」


 野営中、メイデは僕のバキバキに割れた腹筋を断りもなく撫で回していた。

 いきなり情報聴取から話が逸れている。


「オークって、皆でっぷり太ってお腹も丸々してるって聞いたけど、違うのね。わー、柔らかいけど硬い。これが男の体の感触……!」


 とメイデの小さな手が、僕の腹筋の表面を上下に行ったり来たりするのであった。

 余談ではあるけど女の子の手って小さいよな。

 男の手より一回り小さい。


「…………!」


 その様子を見て、僕の副官ライレイもウズウズしている。

 そして我慢ならんとばかりに……。


「ゴロウジロー様! 私もゴロウジロー様のお腹撫でてもいいですか!?」

「あ、はい。どうぞ」


 許可が下りると、ライレイもウキウキとその滑らかな手を僕の腹に置いた。


「凄い……! 硬くてデコボコしてる……! 最初見た時は、丸くもなくてへこんでて、変なお腹だなって思いましたけど、今は逞しさを感じます……!」


 太って丸々した腹がオークの基本形だものね。

 僕のバキバキ腹筋はハーフオークの特徴の一つともいえるが、そのお腹の上にオーク娘とバルキリー、二人の小さな手が縦横無尽に撫で回って……。

 そんなことしたら当然、不慮の事故は起きる。


「あッ」

「あッ」


 我が腹筋の上で二人の指先が接触事故。

 反射的に手が引っ込められる。


「ご、ごめんなさい、お姉様……!」

「いや、私の方も不注意だったから……! って、定着したのかその『お姉様』って呼び方!?」


 指先が触れ合ったぐらいで初々しいなあ。

 ……ではなく。


「違うよ! 今はメイデから色々聞きたくてこの場を設けたんだよ!」

「色々聞くだと!? つまり私のあんな叫び声やこんな喘ぎ声を聞こうと、残忍極悪な責め苦をついに私に施すと……!?」

「違うよ! 何故キミはどのルートから入っても結局そういう結論に行きつくんだよ!?」


 生まれついてのエロ娘か!?


「そうだぞ虜囚のバルキリーよ。気高いゴロウジロー様は、嫌がるメスを無理やり手籠めにすることなど絶対にしないのだ。おかげで私たちまで……! 一向に孕めない……!!」


 なんかライレイの方にまで飛び火した!?

 いかん、ここは頑張って話を元の方向に戻さないと!


「とにかく僕が知りたいのは天界の色々な情報なの。それをメイデから聞きたいの」

「そんなこと聞いてどうするの?」

「戦いを始めるのに敵の情報は必要不可欠でしょうが」


 母から教わった戦略戦術。「彼を知りて己を知るもの……」と言うヤツだ。

 純粋に知的好奇心もあるが、これからどんな展開を進むにしても、天界のことを知っておいて損することはあるまい。

 と言うわけで現在唯一の情報源を頼りにしているわけだが……。


「バカめ! 敵にむざむざ情報を渡すバカがどこにいる!? 私は何も喋らんぞ! どんな尋問や拷問を受けても……。たとえば全裸にされて逆さに吊り上げられ、その上で叩かれたりしても……!」


 また始まったよ彼女の妄想が。

 これさえなければいい子なのになあ。


「いや、そこまで重要なことは話さなくていいから。僕が知りたいのはもっと細々として、どうでもいいことでいいんだ。天界の文化や生活様式、風俗とか……」

「「フーゾク!?」」


 何故そこに激しく反応する?

 ライレイまで。


「そうだな……、たとえばメイデのお父さんお母さんは、どんな人なんだ?」


 人となりや生活、どのような仕事をしているか聞けば、天界全体の生活様式も自然と見えてくる……。


「父母、アナタたち地上の生物が、個体を増やすための方式だな? 古い個体二体が、繁殖行為というものを行って新しい個体を作りだす……」

「うん、まあ、そうだけど……」


 これ何の確認?


「そういう意味であれば、私に父母はいない。私は天界中央部にある『火のプラント』で生産されたから」

「えっ?」

「私だけじゃない。天界に生きる者は戦乙女、天使、聖獣、皆すべて『火のプラント』から生産されるのだ。そうして生産目的に即して軍を編成し、大神ヴォータン様のために進発するのだ」


 つまりそれは、天界に生きる者はすべて生殖によって誕生せず、『火のプラント』とかいう機構的なものによって、それこそ製造されるというのか!?

 そんなものが生命と言えるのか?

 衝撃の事実だが、それを聞いた瞬間、あの天界軍の天使たちの感情良識が欠落したような振る舞いも腑に落ちる気がした。

 自然の理によって生まれたのではない生命に、自然の感情が宿るわけもないのだ。


「いやいやいや、ちょっと待って!」


 それでも腑に落ちないことはある。


「天使やバルキリーがそうしたシステムで生産されるんなら、辻褄の合わないことがないか? 僕の母親はバルキリーだぞ?」


 システムによって製造される生物に、何故生殖機能がついている?

 だからこそ母さんはオヤジと愛し合って、僕や妹を生むことができたんだろ?


 僕がその辺りを詳しく聞くと、メイデは少し考え込んでから言った。


「それは恐らく、私たちバルキリーの生産目的に関係あるのだと思う」

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