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17 彼女らに代わって

「しかし問題はそれだけではなく!!」


 ライレイに怒鳴られた。


「どうするんですかゴロウジロー様!? 邪悪の山に集った『憤怒』『傲慢』『強欲』の三軍、すべてメス化させてしまうなんて! これではオーク王より賜った使命を果たすことができなくなるじゃないですか!」


 そういえばそんなこと言っていたっけ?


「あの山に登って敵を迎え撃つんだっけ?」


 と、僕は眼前にそびえ立つ山を見上げた。相変わらず禍々しさをビンビンに発する山体だ。


「三軍たって、『憤怒』は付け合わせみたいなもんでしょ?」

「ドサクサ紛れでスタメン昇格。ライレイちゃんはメス化してあざとさが増した」

「おっぱいやお尻のあざとさが特にね……。でも重要なのは大きさよりも全体のバランスなのよ! それならアタシの方が勝ってるし!」

「それを負け惜しみと言う……」


 軍団長二人も女体化して随分変わりましたけどね。

 とにかくも今、山麓に集結したオーク軍七万九千人は、唐突な総女体化に戸惑い、一種グダグダな雰囲気に陥っている。

 互いのポロポーションをチェックしたり、おっぱいの揉み具合を確かめ合ったりしているが、本来ならば大至急任務を遂行するため、山に登って迎撃態勢を整えるべきところだろう。


「しかし今となっては任務達成自体が極めて困難……! 何しろ私たちは、メス化したことで戦闘力をほとんど失ってしまったのですから……!」

「あ、やっぱりそうなの?」


 普通に考えればそうなるか。

 つまり数万人に上る屈強な戦闘集団が、一気に可愛いだけの非戦闘員の集まりに。

 与えられた任務の達成という面から見れば、そりゃ絶望的だ。


「んー……」


 リズは指先を空へ向けて掲げると、そこから眩い光線を放った。

 それは紛れもない『傲慢』の能力で、威力は男だった時と遜色なさそうだが、今回は真上へ撃ったために被害はまったくない。


「さすがにオーク王から頂いた能力は影響受けてなさそう。でもメス化して体力落ちたのがネックになりそうね。極端な連発は無理かも」


 ペースを考えず乱射すれば、すぐさま息が上がってしまうか。


「……ウチは、これまで『強欲』の能力で奪ったもの。全部消えちゃった」


 ヨーテが寂しそうに言う。


「また集め直さないと軍団長級の強さに戻れない。……でもせっかくメス化したから今度はおっぱいも収奪したい。目指せロリ巨乳」

「アタシのおっぱいはあげないわよ!?」

「私もです! このおっぱいはゴロウジロー様のものなんですから!!」


 リズとライレイが大いに警戒し、一斉にそれぞれの胸を押し隠す。


「ダメです。奪うの禁止」


 物欲しげにおっぱいへにじり寄るヨーテを、肩から抑えた。


「ヒトから奪えば必ず憎しみが起こり、争いの種になります。僕はもうヨーテにそんなことしてほしくない」

「でも、奪わないと力が……」

「キミたちにもう力は必要ない」


 ヨーテだけじゃない。リズも、ライレイも。ここにいる七万九千人全員も。


「キミたちは僕が守る。僕がキミたちを女にしたんだからそれは当然の義務だ。キミたちはもう戦う強さなんて持たなくていい。愛し育てる強ささえ持っていればいい」

「ゴロウジロー様……!」「ゴロウジロー……!」「ゴロやん……!」


 ライレイ、リズ、ヨーテの体が細かく震えだした。


「一生ついていきますゴロウジロー様! とりあえず子供は三人からで!」

「抱いて! 今すぐ抱いて! この感動がしっかり体に刻み込まれるように!」

「やっぱりゴロやんは全部ウチのもの……!」


 なんか一斉に抱きついてきた!?

 何で女体化したオークたちは、こんなに愛欲に前向きなんだ!?

 そのためにこそ女体化したんだからしょうがないか!


「あー、軍団長たち何やってるんです!?」「ズルい! 私たちもゴロ様に屈服させられたいのに!」「私たちみんなゴロ様のものですよ!」


 騒ぎに気付いた七万九千人まで愛を求めて殺到してきた。

 せっかく治まったのに、またこのパターンか!

 さすがにこの数は、数だけで立派な暴威だ。求愛されただけでも命の危機ががががが……!


              *    *    *


 それはともかくとして。

 結局僕は、彼女らを女体化させてしまった責任を取るためにも、彼女らが本来果たすべきだった任務を、肩代わりしてやらなければならなかった。


 曰く、あの邪悪の山に登頂し、もうすぐ降臨してくるだろう天界の軍勢を迎え撃つこと。

 そんな刃傷沙汰に、母となって子供を抱くべき彼女らの手を汚させるわけにはいかない。

 僕自身、噂に聞く天界軍とやらを一度この目で見ておきたくもあったし。

 行きがかりのこととはいえ、僕は戦う決意をするのだった。


「ですがゴロウジロー様。ことはそう単純ではありません」


 すっかり僕の副官――、もしくは女房役めいてしまったライレイが助言する。


「単純に天界軍を迎え撃つためならば、オーク軍も七軍団のうち三つまでも割いて投入したりしません。どれか一軍だけで済む話です」

「『傲慢』か『強欲』のどっちかをね」

「『憤怒』単独だけは絶対にない」

「うるさいなあ!」


 軍団長たちの入れる茶々は時と場所を選ばない。

 それはともかく……。


「じゃあつまり、オーク軍はこの戦局に必要以上の戦力を投入しているわけで、それにはちゃんと理由があるってことか。天界軍以外にも問題があると?」

「その通りです、さすがゴロウジロー様の御慧眼。……この邪悪の山には一匹、とても厄介な生物が住み着いているのです。天界軍を迎え撃つためには、まずその生物を何とかしなければいけません」


 その生物とは……?


「竜です」

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