その後
あれから五年が経った
崩壊した教会は、突然現れた青年により建て直され、孤児院もできていた
青年は教会で生活するようになり、孤児や苦しんでいる者たちに手を差し伸べていた
いつの間にか『神父様』と呼ばれるようになり、無償で回復魔法を施すことから『聖者様』と呼ぶものも現れた
しかしその反面、人の行いから外れた者にはどこまでも冷酷だった
珍しい黒髪から『悪魔』『死神』などと裏では呼ばれていた
青年はいつも通う場所があった───教会の奥の部屋
来る度に少女との出逢った頃を思い出した
(君のいない人生はとてもつまらないよ。でも君に誓ったから、次君に会うときは胸を張れるように頑張るから…)
「ミリア、見ていてくれ」
不安や焦りをかき消すように…窓からのぞく丘に呟いた
ミリアを失ったあの日からアルタナは我武者羅に働いていた
限界まで働いては、倒れるように眠る日々…
そうしていれば、ミリアの事を考えずにすんだ
二年が過ぎた頃、久しぶりにあの夢を見た
助けてと泣く少女…
(ごめん…俺にはどうすることもできないんだ!)
どんどんと暗闇に飲み込まれていく少女に、小さな光が向かっていった
光が少女に触れると風に吹かれたように、闇は光の粒となった
気づくと少女の前には…ミリアがいた
『もう大丈夫だよ。彼には私からガツっと言っとくから心配しないで、幸せになって』
とミリアが抱きしめ微笑みかけた
すると少女は泣き顔から笑顔にかわり、すぅーと消えた
ずっと会いたかった彼女がそこにいた
走り出したい気持ちを押さえて近づいていく
(ミリア…)
『ルタ!今のあなたはなんなの!?』
突然怒り出したミリアに戸惑うアルタナ
(えっ!?)
『私と約束したはずだよ!同じく苦しむ子どもを助けてって!』
(…)
『私の知ってるルタは格好良くて優しくて…誰よりも痛みをわかる人だった!』
(やめてくれ!俺には重すぎる!君を失ってから生きていることがつらいんだ!一番守りたかったものも守れなかった俺ができるわけないんだ!)
すでにアルタナは諦めていた
そんな姿を悲しそうにミリアは見つめた
『ルタ…一番苦しんだのはルタなのに…。私やルタのような思いを他の子達にしてほしくなかったの。そのせいでルタを苦しめていたなんて…私は最低だね』
(それは…それは違う!!)
『ううん…私は最低だよ。』
どれ程会いたかったか…
やっと会えたのにミリアは笑顔ではなく、泣きそうな表情をしていた
自分がそうさせている事に怒りを覚えた
また全てを自分のせいだと言う彼女が許せなかった
(ふざけるな!俺はこの苦しみを誰かのせいにするつもりはないし、俺が愛した人が最低なわけないだろ!)
『ル、ルタ!?』
(ミリア…今ならわかる。夢の子は前世だったんだね…俺が俺自身に救いを、変化を求めてた。それなのに…)
『ルタ…。』
(俺は弱い!だからこそ、足掻いてみるよ!そして胸を張って君に会えるように頑張るよ!俺は…俺はミリアを愛している!)
『えぇ…えぇ私もよ。アルタナを愛しているわ!』
やっと最高の笑顔が見れた
それからはあっという間のだった
回復魔法を一から習い、教会を建て直し奴隷の子供を買い取り親元に帰したり、孤児院で生活してもらった
非合法の奴隷の解放も人知れず行った
圧力をかけてくる貴族には暗闇に紛れて挨拶(忠告)にいった
たくさんの敵ができてしまったが、守るべきものを見つけることができた
(この子達に出来ることは少ないだろうけど、俺に出来ることなら惜しまずに力を貸してあげよう。自分で運命に立ち向かえるように…)
本人は気づいていないだろう
『アルタナ』はすでに多くの子どもたちの運命を変えたことを
月日が流れ、孤児院の子ども達が親となり、その子どもが親になるころ
協会から見える丘には毎年綺麗な花が咲き、花畑に二つの十字架がひっそりと建っていた
この場所は多くの者が訪れた…アルタナによって救われた者達だ
アルタナ亡き今も意志は受け継がれていた
みんなが笑い会えるように
最後まで読んで頂きありがとうございます!
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