出逢い
「おい!ガキ起きろ!」
「つっ…!」
床にひかれた魔物の皮で寝ていた少年は殴られて起きた
いつもの事だ
「とっとと飯作れ!」
「…」
「なんだ?文句でもあんのか!?」
「何も…」
怒鳴っている厳つい男は少年の父親だ
少年がまだ小さい頃に母親は病死してしまい、父親と暮らしている
日常的に殴る蹴るを繰り返すろくでもないヤツだ
「なんだその目は!誰が育ててやってると思ってんだ!」
「うっ!」
少年の黒い髪を掴み上げる
顔を近付けてドスの利いた声でいつものように聞いてくる
「俺だよな?」
「くっ…」
「そうだよな!?」
「…はい」
「だったら早くしやがれ!」
掴まれた状態で引っ張られて勢いよく倒れた
父親は扉を開けでていった
部屋に残された少年は唇を噛みしめ、溢れてくる涙を堪え、手は白くなる程握られた
飯を作りながら今日の夢を思い出していた
(また同じ夢を見たなぁ…全く違う世界で同じく苦しむ少女)
まるで昨日の記憶のように鮮明でとても夢とは思えなかった
少年…アルタナは小さい頃からよくこの夢を見ていた
(夢も酷いもんだな…俺はいつになったら自由になれるんだ?)
父親はこの村の警備をしていて、それなりに強かったので誰も逆らえない
アルタナの母親は、父親と村のために結婚した
お金の無い村の警備をする代わりに嫁を寄越すように村長を脅したのだ
実際は警備と言っても村で好き勝手してるだけのゴロツキだ
村人たちはアルタナに同情はするが、助けようとはしなかった
「まだやってんのか?チンタラしてんじゃねぇ!早く街に行って稼いでこい!俺のためにな!がはは」
仕事道具を持って隣街まで出かける
村から離れると街までの途中で狩りや採取をして、それを街で売ることで生計を立てていた
街につくとアルタナは最初に向かったのは廃墟となった教会だった
「ミリア…、遅くなったね。すぐ薬を作るからまってて!」
「ありがと…ルタ、ごめんね」
「いいって!俺がやりたいだけなんだから」
教会の奥に部屋があり、アルタナとあまり変わらない年の少女…ミリアがベットにねていた
ミリアは痩せており、よく咳き込んでいた
「ルタは優しいね…ごぼっ」
「ほら!苦いけど飲んで!」
ミリアとアルタナの出会いは今から一年前になる
今日と同じように街に来ていたアルタナが路地裏で倒れていたミリアを見つけたのが始まりだった
ミリアは「死なせてほしい」と懇願したが、アルタナはそれを拒んだ
「ルタ、本当に…」
「ミリア…俺は君に出会えたお陰で生きる希望を持てた。今の俺がいるのはミリアのおかげだ!だから、ミリアの為ならなんだってやるさ!」
ミリアは両親を盗賊に殺され、妹とミリアを逃がすために兄は魔物の犠牲になった
幼い妹と街まで逃げたが騙され奴隷となり、妹は過酷な労働で衰弱するとどこかに連れていかれてしまった
必死に奴隷商から逃げたが、力尽きて倒れていたところでアルタナに出逢った
「このまま死なせて」「私が家族を殺した」と言ってもアルタナは、
「つらかったね」「もういいんだよ」と泣きつかれるまで抱き締めてくれた
気づくと見知らぬ部屋のベットに寝ていた
「ごめん!うるさかった?」
「ううん…その、ありがとね…」
「いいさ、どうしても放っておけなかった俺のお節介だから。俺はアルタナ!気軽にルタでいいよ!」
「私は…ミリア…その、ありがと…本当にあ…ありが…と…」
安心したせいかまた涙が溢れた
それからはこれまであったことをアルタナに話した
「…ミリア、まだ奴隷紋はついてるの?」
「うん…」
「そっか。じゃあ俺お金貯めて、ミリアのご主人になる!そうしたら誰も文句は言えないだろ?」
「え!?」
「時間かかるけど、絶対なるからさ!そしたら一緒に妹さんを探そう!」
「…」
「やっぱダメ?」
下を向く私の顔を覗き込み、不安そうな顔をするアルタナ
悲しくもないのに涙が頬を伝う
(あぁ、こんな気持ちになるのはいつ振りだろう…)
涙を拭い、久しぶりに笑顔になれた
「…ふふ、待ってるねご主人さま!」