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さて、どうしたものか。
中二病は倒れたショックなのか、はたまた先天性のものなのかは不明だが、とにかくこの少女は道ばたで倒れていたことには変わりない。
一応病院に連れて行くのがセオリーか?
「ところでさ」
その悩みの種はキョロキョロと辺りを見渡し、
「やけに明るい場所だけど、ここどこなの?」
「は? いやどこって――」
「こんなとこ、地獄にあったかしら? おかしいわね……地獄の全土なら熟知しているはずだけど……こんなとこ、聞いたことも見たことも無いわ」
……ダメだコイツ。
「はぁ……あのな、ここは地獄でも天国でも何でもない、ただの人間界だ。一回その設定置いておこうぜ。そうでもしないと話が進まないし、あんまり飛躍しすぎるとこっちも対応に困る」
軽く溜息をつきながら、「やれやれ」というポーズでリリフォードと名乗った少女を諭す。大体、その名前は本名なのだろうか? 外国人っぽい顔立ち故、可能性はなくもないが。
「…………え? 今、なんて?」
「だから、一回その設定を――――」
「その前っ!」
……刑事ドラマとかでよく使われるようなやり取りをし、本当にこういうことあるんだなと思いながら自分の発言を思い出す。
「――地獄でも天国でもなく、普通の人間界だ」
そのセリフを投げ掛けた瞬間、リリフォードは目を見開いた。
「人間界……うそでしょ……?」
しばらくして彼女は再度口が開くが、何かを考えるようにその口は強く閉ざされ俺の耳には届かなかった。
『じゃあやっぱり、私は門の中に落ちて……』
それなのに、彼女の言うまいとしたことが分かってしまったのは何故だろうか。
「あー、リリフォードって言ったか?」
本気で意気消沈している様に見える彼女を少し気の毒に思い、咳払いをしてから声をかける。
「リリフで構わないわ」
「じゃあリリフ、ケガとかはないのか?」
「……まぁ、痛みはどこにもないわね。強いて言うならば、心かしら」
「そうか、ならよかった」
見た限りでも目立った外傷はない。本人も身体に違和感がないのであれば早急に病院へ行かせるという必要も無いだろう。
「でも、一つ問題があるとすれば……」
「問題?」
「……私が空腹であると言うこと」