嘘のような真実(キャッツアイとタイガースアイ)
常に傍らにあったモノが消えた事実を、認めるのは辛い。
「……何故だ?」
呆然としながら、青年は呟く。前髪が左目にかかるようになっているダークグレイの短髪。晒されている右目は、猫の瞳にも似た黄金色。端正な美貌でありながら、奇妙に油断できない印象を与える顔立ち。そんな青年が、呆然としながら呟いた。
思わず、自らの身体をかき抱く。それは、信じられない事だった。そんな事が起こりえるとは、思えなかった。それなのに、実際にそれが、起こってしまった。
「……何故、だ?……どうして消えた、俺の、左目……ッ!!!」
只一人だけの半身。唯一絶対の存在。二人でいるからこそ存在できたはずの、彼等。それなのに今、その半身がいない。
周囲の気配を探ってみても、彼はいなかった。どうしてと、再び彼は呟いた。信じたくなかった。何かの間違いだと、嘘だと言いたかった。けれど彼には、解っていた。これは現実で、半身はいなくなってしまったのだと。
何故だと問いかける声に答えるモノは、いなかった。
「今頃、動揺しているだろうな。」
くつくつと楽しそうに、青年が呟く。前髪が右目にかかるようになっているダークグレイの短髪。晒されている左目は、虎の瞳にも似た金褐色。端正な美貌でありながら、奇妙に油断できない印象を与える顔立ち。そんな青年が、楽しそうに呟いた。
有り得ないと思っているだろう、唯一の半身。今の状況を信じ切れていないだろう、彼の相棒。もう随分と長い年月を共に過ごしてきていた。飽きてしまう程に。
「お前は何故と問いかけるのだろうな。俺の右目。」
楽しそうに、彼は笑った。たった一人だけの半身。二人でいたからこそ存在できた、彼等。その定義を覆す行動を、彼の青年は受け入れるのだろうか。無理だろうなと、彼は思う。
楽しくて、仕方がなかった。彼を傷付けるというのは、随分と楽しい。自分のやりたいままにやれるというのも、嬉しかった。以前のように、彼に束縛される事はもうないのだ。そう、永遠に。
楽しそうに笑う声に反応を返すモノは、いなかった。
運命の輪は回る。二人の青年の運命が、今動き出す。或いはそれは周囲を巻き込む事になるかもしれないが。右目は左目を探し、左目は右目から逃れる。
その結末を知る者は、まだいない……。




