感情の赴くままに(ガレルドとアスティー)
短気だとか推進力だとか鉄砲玉だとか、彼を示す言葉は山程あるのである。
いや、むしろこいつはただ単に我が儘なだけだろう。そんな事を漠然とはいえ思うのは、ガレルド・マレバリア。彼がそんな風に思っているのは、親友であるアスティー・ピルゲーナである。何せガレルドの視界では、既に暴走しているアスティーがいるので。
「……鉄砲玉というよりは、我が儘。我が儘と言うよりは、自己中。自己中というよりは…………。」
「団長、そんな事言ってないで止めて下さい。こちらが大いに迷惑します。」
「良いじゃないか、副団長。アイル副騎士団長に任せれば。」
「貴方は鬼ですか?!あいつにアスティー団長が止められるわけ無いじゃないですか!!」
怒鳴りつけてくる副官の、小柄の割に大きな声を耳を塞いでやり過ごす。色が白く小柄で、何となく血気盛んな子犬を連想してしまう。だがしかし、外見のイメージを裏切って限りなく沸点が低い。常日頃から団長を怒鳴りつけている姿が定着しているのである。
ちらりと、ガレルドはアスティーの方へと視線を向ける。暴走を始めた上官を止めようと、その副官が必死になっている。こちらはしっかりと鍛えられていながら骨の細いひょろりとした長身である。文官にしておいた方が良さそうな穏やかな顔立ちの、外見通りの真面目人間である。だがしかし、一度決めた事は必ずやり遂げるような芯の強い頑固者でもあるが。
自分の邪魔をする副官に向けて、アスティーが剣を構えた。ちょっと待って下さいと叫ぶ部下の発言など、彼は聞いてはいない。そのまま、振りかぶって部下の胴を薙ぎ払おうとする。
「俺の、邪魔をするなぁぁぁっ!!!!!!」
「流石アス、あっぱれ。」
「何があっぱれですか、何が?!」
「全部だ。あそこまではっきりと言い切れるのはあいつぐらいだぞ?」
ニコニコニッコリ。邪気など含まず、自らの本音を告げる男であった。だがしかし、部下達にしてみれば有り難くも何ともない。なんて嫌な発言だろうか。そんな事をリーダス副騎士団長は思った。
それから延々と三十分程の時間が経過する。そろそろ止めるかと、ガレルドがゆっくりと立ち上がった。自分がそれまで飲んでいたグラスを手にして、そのまま振りかぶって投げる。投げつけられたそれを切り砕いたアスティーが、じろりと親友を睨んだ。
「そろそろヤメにしておけ。夕飯の時間だ。」
「……もうそんな時間か?」
「あぁ。」
「そうか、ならやめる。全員解散。飯だぞー!」
にかっと笑ってアスティーは宣言する。途端に散らばっていく多くの騎士達を見て、ガレルドは肩を竦めた。感情だけ無く、欲求にも忠実な男である。だがしかし、これで自制する場面も多々あるのだからよく解らない。
とにもかくにも、短気だとか推進力だとか鉄砲玉だとか、彼を示す言葉は山程あるのである。




