綺羅星(ガレルドとアスティー)
その2人は、黄の王国において最高の人物と呼ばれている。
明るく短い銀の巻き毛に黄金色の瞳を持つアスティー・ピルゲーナ。長い漆黒の髪に藍色の双眸を持つガレルド・マレバリア。前者は大貴族ピルゲーナ家の次期当主にしてアイル騎士団の団長。後者は養子ながらマレバリア家の次期当主であり、リーダス騎士団の団長。共に優れた才能と容姿を持つ2人は、唯一無二の親友として知られている。
「アス、何やってるんだ?」
「んー。いや、両雄並び立たずって言葉があったなぁ、と思って。」
「……俺とお前の事か?」
「そこで謙遜せずに自分が出せるお前って凄いと思うぞ。」
「お前もな。」
サラリと言い返されて、アスティーは言葉に詰まった。しかし、彼は次の瞬間平然と口を開いた。手の中で弄んでいたグラスを取り落とさなかった自分を、他の誰が何と言おうと褒めてやりたくなったガレルドである。
「間抜けの国王以上に優れた俺だぞ。他の誰が叶うと思う?」
「……お前、それ不敬罪。」
「安心しろ。誰も聞いてないし、我が家の使用人達は聞いていても聞き流す。」
「……主に似たんだな。」
「お前のところも似たようなモノだろう?」
「否定はしないがな。」
ソファの上でふんぞり返る親友を見て、ガレルドは肩を竦めた。アスティーは立ち上がると、ガレルドの頬に手を伸ばす。うっすらと頬に残る傷跡は、手合わせの際にうっかりアスティーが負わせた傷だった。拮抗した腕前だからこそ手加減などできない2人である。どちらかが怪我をするのは、別に珍しい事ではなかった。
頬に触れた指先、それに、ガレルドは掌を重ねた。傷跡ごと、包み込むように触れる。戸惑うような素振りはなかった。ただ、少し拗ねたような顔をするアスティーがいた。
「治してやろうか?」
「いらない。肝に銘じておくさ、お前に負けないように。」
「俺は消したいぞ、その跡。」
「そういうな、アスティー。俺達が実力拮抗なのは昔から解っている事だ。」
そして、だからこそ彼等はこうして共に在るのだ。両雄並び立ち、共にいる為に生きている。愛する王国を守る為に、この国の守護の両翼として。そして何より、大切な相棒を守る為に。
輝き誇る一対の英雄が、黄の王国には存在する。




