表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宝石の子供達  作者: 港瀬つかさ
黄の騎士団長コンビ関連

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/54

遣らずの雨(ガレルドとアスティー)

 雨が降る。素直に縋れない彼の代わりに、雨が降る。彼を帰さぬ為に雨が降る。彼を欲する彼の為に、雨が降る。



「止まないな。」

「雨期でも近いか?」

「いや、まだしばらく先の筈だが……。」

「珍しい事もあるモノだな。」


 退屈そうに書物を眺めていたアスティーが、肩を竦めて呟く。そんな彼を見て、ガレルドは苦笑した。どうでもよさそうに言いながら、喜びを隠しきれてはいない。他の誰をごまかせても、彼だけはごまかされる事はないだろう。それだけの絆が、2人にはある。

 だから、ガレルドには解っていた。この雨は遣らずの雨だと。ガレルドの帰宅を妨げる為だけの雨なのだと。それ以外の理由で降る雨ではあるまいと、彼は思ってしまう。

 意地を張り、素直に誰かに甘える事などできないアスティー。それは彼の性格と言うよりは、油断できない環境の所為だろう。誰が心を許しても良い相手なのかを、彼は図りかねていた。弱さをさらけ出す事が赦されない環境で、彼は生きてきた。その事を、ガレルドは知っていた。それだけだ。


「アス。」

「何だ?」

「心配しなくても、これだと当分戻れない。」

「……何が、心配だ?」

「帰って欲しくなかったんだろう?」

「……誰がだ!」


 顔を真っ赤にして怒鳴りつけるアスティー。とても配下の騎士達には見せる事ができないなと、ガレルドは思う。こんな子供っぽくて可愛らしい姿など、見せられない。血気盛んでオニのように強くて厳しい団長で通っているのだから。

 もっとも、そんな風に笑っているガレルドも同じくだ。誰にでも優しくて温厚だと評判の団長。その彼が、アスティー相手だとここまで意地が悪くなる。可愛い子供程虐めたくなるような、そんな感情の所為だろうか。それとも、ただ単に性分なのか。とりあえず、こちらも配下には見せられない姿である。


「雨、止まないな。」

「あぁ。」

「止んで欲しいか?」

「…………何故聞く?」

「止んで欲しくなさそうな顔を、していた。」

「してない。」

「してたさ。」

「してないと、言っている!」

「俺に隠し事ができると思うなよ?」

「…………ッ!


 反論できずに言葉に詰まるアスティー。勝ったと笑うガレルド。次の瞬間アスティーは叫び、ガレルドはそれを聞き流す。いつもの2人の遣り取りだった。良くも悪くも。



 雨が降る。素直に縋れない彼の代わりに、雨が降る。彼を帰さぬ為に雨が降る。彼を欲する彼の為に、雨が降る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ