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宝石の子供達  作者: 港瀬つかさ
赤の側近コンビ関連

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素直な子(オージェとジェームズ)

 初めて出会った時に、オージェはそう思ったのだ。この少年は、物凄く素直なのだと。自分の感情を率直に露わにし、相手に不快感を与えるなどとは考えてもいない。ただ、思った事をずばずばと口にし、行動しているだけなのだ。

 そう解ってしまうと、付き合うのは非常に楽だった。そして、彼は今も、その時の少年−今となっては青年だが−と共にいる。掛け替えのない相棒として、彼等は生きていた。その生き方が変わる日など来ないと、思っている。そしてそれはおそらく、真実だろう。

 ジェームズがさらけ出す本心。あまりにも自分に素直すぎるその性格。それらを全て、オージェは好きだと思っている。遠慮無く全てをぶつけられるのは仲の良い証だ。そう、本気で思っているのであった。


「……何をやってるんだ、オージェ。」

「ん?いや、ちょっと仮眠……。」

「仕事を放棄して何をやっていると聞いているんだぞ、オージェ。」


 猫かぶりの名側近中なので、比較的言葉は穏やかだ。だがしかし、微笑みの奥でざくざくと突き刺してくる眼差しがそこにある。流石ジェムだよなぁと青年は思ったが、未だに生命は惜しいので、あえて何も言わずに困ったように笑った。その笑みを見て、ぴくりと眉がつり上がる。

 あ、ヤバ。そんな言葉が唇の中だけで囁かれて、消えた。ニコニコと穏やかに微笑みながら、ジェームズは抱えていた数冊の本を、極あっさりとオージェの腹の上に落とした。ごすっという音がして、次に息の詰まる音と呻きが聞こえる。


「目が覚めたか、オージェ?」

「……永眠しそうだぜ、相棒……。」

「さっさと起きて仕事をしないか。王子は働いておられる。」


 冷ややかに言い捨てて立ち去っていく後ろ姿。ジェームズの動きにつられるように、長い髪が揺れていた。相も変わらず自分に正直極まる親友を見て、オージェは何となく肩を竦めた。腹はまだ痛かったが、耐えられない程ではなかったので。

 ゆっくりと、本を手にして床に下ろす。ソファの上で寝ていたから背中に衝撃はなかったが、腹に受けた衝撃は相当なモノだった。日頃からそれなりに鍛えているお陰でマシであったのが、果たして役得といえるのかどうかは謎である。

 しばらく腹をさすった後に、オージェは本を手にして立ち上がる。扉の向こうに消えた親友を追いかける為だ。必要な参考文献を残して立ち去った理由は、明確だ。それを持ってさっさと来いという意思表示なのだろう。相変わらず解り易い奴だなと、オージェはそんな事を思った。



 有り触れた日常の、ごく有り触れた一風景。

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