表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宝石の子供達  作者: 港瀬つかさ
赤の側近コンビ関連

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/54

小さく笑む(オージェとジェームズとサラマンドラ)

 その姿に愛おしさを感じたから、そっと小さく笑うのだ。



「ジェム。」

「何でしょうか、ガーナ王子?」

「……ん、眠い。」

「それでは、今日はもう休みましょうか?」

「うん、寝る……。」


 まだ10歳にも満たない王子は、コクンと小さく頷いた。見事な朱色の髪を優しく撫でて、ジェームズは微笑む。長い黄金色の髪が肩から滑るのを見て、無邪気にサラマンドラはそれに手を伸ばした。引っ張られて少し痛かったが、ジェームズは穏やかな笑みを浮かべてサラマンドラを抱き上げる。そしてそのまま、隣室である寝室に向かった。

 ベッドの上にサラマンドラの身体を降ろすと、ジェームズは隣の椅子を引き寄せようとした。けれど、サラマンドラはジェームズの腕を掴んで離さない。どうしようかといった顔をした彼を見て、少年は懇願の表情を作る。思わず、普段の猫かぶりではなく本心で、拒絶できなかった。


「王子?」

「一緒に、寝て。」

「…………は?」

「今日、怖い話聞いた、から。だから、一緒に、寝て?」

「………………解りました。」


 苦笑しながら、ジェームズはサラマンドラの横に身体を滑り込ませる。まるで子猫が親猫にすり寄るかのようにやってくる幼い身体を、思わず反射的に宥めるように抱きしめていた。そうしてしばらくしていると、幼い寝息が聞こえてくる。


「……怖い話なんて、いったい誰がしたんだか……。」


 おそらくは気紛れな女官達だろうと、思う。とりあえず、一番やりそうな相棒はすぐに除外した。そういう事をやりそうに見えて、意外にふざけた悪戯はしない男なのだ。他の誰が信じなくとも、ジェームズだけは知っている。

 そのまま、うとうとと眠気が襲ってきた。ここで寝ろと言われたのだから、そのまま寝ても良いのだ。それは酷く楽な事だなと想いながら、幼い身体を抱きしめて目を伏せる。子供の体温に包まれるのは悪い気分ではなく、珍しく、随分とあっさりと眠りの海に落ちる事ができた。

 それからしばらくして、遠慮がちに扉が開かれる。しかし眠っている二人が気付くわけもなく、人影はゆっくりと部屋に入ってきた。既に主達が眠っているので灯りは消されているが、彼はまるで夜目が利くかのようにあっさりベッドまで辿り着いた。


「……こいつ、何でここで寝てるんだ?」


 ぼそりと呟いたのは、オージェである。いつまでたってもジェームズが寝室に戻ってこないので、迎えに来たのだ。いつもならばサラマンドラに本を読んだ後、すぐに戻ってくる。自室で軽く何かを呑んでから、眠るのだ。それを確認してからオージェは寝るのであって、だからこそ呼びに来たのだが。

 目の前で眠る二人を見て、起こすのは止めた。ジェームズにしっかりとしがみついているサラマンドラは可愛かったし、そんなサラマンドラを抱きしめているジェームズも、結構可愛い。何というか、本性を知っているからこそ、余計にそう思うのだ。口を開けば悪口雑言しか飛び出さないサド人間も、寝ていれば可愛いらしい。


「いつもこれなら、俺も苦労しないんだけどなぁ……。」


 そういいながらも、普段の本性のジェームズも充分気に入っているオージェである。そっと、ジェームズの黄金色の髪に触れてみた。一瞬、身動ぎしたが、彼は起きない。くつくつと、ジェームズは喉の奥で笑った。本人には言わないが、こうしていると、まるで普通の少年だ。


「良いモノ、見せて貰ったよ。サンキュ。」



 小さな微笑みを残して、オージェは自室へと引き上げていった…………。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ