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宝石の子供達  作者: 港瀬つかさ
赤の側近コンビ関連

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26/54

仮面を付けて(オージェとジェームズとサラマンドラ)

 仮面のように、偽りの性格を貼り付けて。



「何をなさっておいででしょうか、ガーナ王子?」

「今年の収穫量の予測表作りだ。」

「あまり根を詰められては倒れてしまいます。」

「解ったから、そう心配するなジェム。」


 疲れたようにサラマンドラは溜め息をついた。心配性で生真面目な側役には、呆れてしまう。ジェームズ・ライールは、サラマンドラの幼少時からの目付役だ。付き合いは長いが、だからこそ相手の心配性ぶりにため息が出るのだ。

 そんな事を考えていたサラマンドラの視界に、突如大きな掌が現れた。ぎょっとして見上げた先には、飄々とした笑みを浮かべえる青年が射た。サラマンドラの護衛役である、オージェ・ロウだ。彼は、ジェームズと二人で幼少時からサラマンドラに使えてきた、筋金入りのサラマンドラ贔屓の臣下である。

 あっけらかんとしたオージェの態度に、ジェームズは眉間に皺を刻んだ。生真面目な彼には、許し難い事なのだろうとサラマンドラは思う。いい加減慣れてしまえばよいと思うのだが。そんなサラマンドラに、オージェはケロリと言葉を紡いだ。


「御友人がお越しですよ。控えの間でお待ちですので、早く行かれた方が被害は少ないかと。」

「あのバカが来てやがるのか?!」

「ハイ。そろそろ退屈される頃合いかと。」


 さっと表情を強張らせるサラマンドラに、オージェはにこやかに微笑んでいた。その額に平手を与えておいて、サラマンドラは慌てて出て行く。ケラケラと笑うオージェとは裏腹に、ジェームズは溜め息をついた。

 サラマンドラの気配が離れると、オージェは笑いを治めてジェームズを見た。目線の違う相手に合わせる為に、オージェは少しだけ屈んだ。そんな彼を見て、ジェームズは不思議そうな顔をした。やれやれと肩を竦めたオージェが、呆れたように口を開いた。


「相変わらず見事な猫かぶりで。」

「15年ほど被り続けてきた猫だからな。」

「良くまぁ、サドの本性を隠してられるよ。ストレスはたまらないのか?」

「たまるに決まってるだろうが、ボケ。」

「……詐欺だ。」


 穏和な笑みが似合う顔立ちから、聞き逃しがたい毒がこぼれる。幼馴染みだったからこそこのギャップに耐えられたのだと、オージェは思う。ふと気付くと、視界に針が光っていた。一瞬本気で身の危険を感じたので、慌てて飛び退く。


「それは何だ、ジェム?」

「最近針治療に凝ってるんだ。」

「良かったな、じゃ!」

「逃げるな、実験体!」

「逃げるに決まってるだろうが!」


 ひらりと窓から身を翻して、オージェはジェームズから逃げる。そんな彼の背中を見送って、ジェームズは舌打ちをした。



 にこやかな笑顔が、何故か非常に怖かった。

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