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act8 好きor嫌い?

○月△日

突然席を立った琉依の様子がいつもと違う……。今までずっと近くにいたのに、今日は物凄く遠く感じた。私のそばから離れていく……そんな心配をしていた私の前に現れた浅井尚弥クン。今晩おヒマ?


 放課後、浅井尚弥クンをナンパ(?)した私は、そのまま2人でナオトの店へ行った。もちろん、私はお酒を飲まない事を誓ったのでジュースをオーダーした。

 「なっちゃんがお酒を飲まないなら、うちの売り上げも落ちちゃうよー」

 ふざけて言ったナオトに向かって、私はタオルを投げつけた。

 「昨日はごめんなさいね。あなたは何も悪くはないのに、当り散らしたりして……。見苦しいったら無いわ」

 ナオトから出されたジュースの入ったグラスを彼のグラスに軽く当てると、渇いた喉に流し入れた。やはり何か物足りない感じがするが、これも自分が立てた誓いの為だ。

 「ナオトもごめんね。店の中で散々喚いたりして」

 手を合わせて詫びると、ナオトは優しく笑いながら頷いていた。

 「別に、俺も気にしていないよ。それに、俺も言い過ぎたしね」

 言い過ぎたって、そんな事無いのだけど……。

 そうそう、せっかくこうして会ったのだから、気になっていた“あれ”を聞いてみようかな。

 「ねぇ、ちょっと聞きたい事があるんだけど、うちの医学部と理工学部を受験したのに辞退したってホント?」

 それを聞いた彼の手が止まった。聞いたらまずかったかなぁと、少し後悔したが聞いてしまったからには仕方の無い事だ。

 彼は持っていたグラスを置くと、少しの沈黙の後にその重い口を開き始めた。

 「うん、その通りですよ。確かに医学部と理工学部と文学部を受験して、全て合格したけど医学部と理工学部は辞退しましたよ」

 淡々と話す彼の表情は何処と無く冷めていた。

 「せっかく合格したのに、どうして辞退なんかしたの?」

 「どうしてって、俺はもともと文学部しか受験する気無かったんだ。けれど、高校の担任や親が受けろってしつこいから……。結局は辞退する羽目になるのにね」

 少し、彼の口から笑みが零れたがやはり冷めた感じは残っていた。

 

 「せっかく、トップになるほど優秀なんだから、やりがいを感じる位のチャンスも巡ってくるじゃない」

 「んー……。興味ないね」

 私の言葉に少し考えながらも、彼は完全に否定した。医学部と理工学部をトップでパスしたのに、辞退した理由を“興味ないね”の一言で片付けるなんて……。想像以上の彼の人間性に、私はさらに興味を抱いていた。

 「何も興味がないの?それなら、私の友達と話をしてみない?少しずつ何かに興味を持ち始めるのも悪くないんじゃないかな」

 何に対しても興味がない彼に同情したわけではないが、ついそんな事を口に出してしまっていた。


 「興味ならあるよ……一つだけだけど」

 残っていたお酒を飲み干すと、彼は俯いてつぶやいた。

 「えっ? あるんだ! 何、何?」

 そう振り向いた時、さっきまで俯いていたはずの彼の視線がこちらを見ていた。

 「ん?」

 「うん?」

 私の問いに、彼もまた同じような言葉を返すだけだった。“何に興味があるの”という問いに対しての彼の視線……。これはどう受け取ったらいいのか。そう考えている私をよそに、彼は構うことなく私を見ていた。何て言ったらいいのか……。


 “ごめんなさい、まだ次の恋に踏み出せないの”

 ……自意識過剰にも程がある。


 “そう! それはありがとう”

 ……これも何と言うか。


 それでも彼は目を反らさない。どんなリアクションを期待しているの?私に何て答えて欲しいのか……。

 好き or 嫌い? 

 まさかね。悩みぬいた末に、私は彼の方を見てニッコリ微笑むとすぐにナオトに視線を変えて叫んだ。

 「ナオトーおかわり!」



 ……ホント、すいません。どう対処したらいいのか、わからないのです。




 ……好き or 嫌い?……

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