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act19本心?

 

 琉依が事務所に行ってかなりの時間が過ぎているのに、一向に戻って来る気配が無い。少し心配になってきたので、喫茶店を後にして事務所へと向かった。


 少し歩いたところで琉依の姿を見つけたが、誰かと話をしている様子……。少し近寄って声が聞こえる所で座って覗くと、琉依が話している相手は浅井クンだった。


 「君には謝らないといけないね」

 今朝、琉依が言っていた浅井クンに謝らないといけない事の話をしているの? それは私もずっと気になっていたから、ますます近付いて話を聞きたくなる。

 「何を? 別に謝られるような事無いでしょ?」

 少々、無愛想に答える浅井クンに琉依は笑顔で話し始めた。

 「あるよ。だって、俺は君に嘘をついていたんだ」

 「嘘?」

 浅井クンにも心当たりが無い様子……。一体、琉依は何を言おうとしているのか。

 「そう、嘘。俺ね、夏海が好きなんだ。この前、君には妹だの姉だの言ってたけど、ホントはちゃんと一人の女性として見ていた」

 思わぬ琉依の告白に、隠れて聞いている私が赤面になってしまう……。やっぱりアンタは……

 「バカ……」

 呟きながら、笑顔で話す琉依を見た。やっぱりアンタは外国に行って、その恥ずかしさだらけの中身を徹底的に治した方がいいかもしれないわ。

 

 「どうして、今になって俺に言うの?」

 彼の言う事も一理ある。別に言う必要の無い事では?と、私も思った。……て言うか、わざわざ言わないでよ! 恥ずかしいから。

 「もう、自分に嘘をつくのをやめたんだ。あと、君には言っておかないといけないって思ってたし」

 琉依の言う事が全く分からなかった。なぜ、彼に言うのか……。

 「一度は離してしまった大切な存在……。だけど、二度目は無い。誰にも渡さない……もちろん、君にもね」

 「えっ?」

 んっ?

 思わず、浅井クンと同じリアクションをしてしまう。恥ずかしい事ばかり言っているかと思えば、最後の言葉……。どうして、そこで浅井クンの名前が出てくるの?

 「何で……俺が?」

 ほら、浅井クンも困っている。琉依の大バカ! 一度寝たくらいで恋愛感情が出る訳無いのに……。やっぱり全身を治療してもらった方がいいかも……。

 「自覚ないんだ。夏海が好きなくせに……まぁ、いいや」

 自覚も何も……ある訳無いでしょ? そりゃ、私も以前はもしかしたら?って思ったりもしたけど、自意識過剰さに呆れるだけでしたよ。ホント、出来るなら今すぐにでも琉依を黙らせたい!


 「イギリスの話、槻岡サンはどうするの? 彼女には先に話していたんでしょ?」

 変な方向に進んでいた話を、浅井クンが上手く逸らしてくれた。

 「もちろん話したよ。でも、どうするかは夏海が決める事でしょ?」

 一瞬、琉依の言葉に言い表す事の出来ない冷たさを感じた。


 “夏海も連れて行くよ”


 そう言ってくれるかと思っていたのに、琉依はそんな私の期待を裏切った形で浅井クンに答えた。

 「一緒に連れて行くって言うと思っていたのに」

 私もそう思っていた……。だから、さっきもみんなの前でそう言ってくれると思っていたのにな。

 「今回の件は、俺が決めた事なんだ。確かに夏海にはついて来てと言ったけど、それは強制じゃ無い。決めるのは夏海なんだ」

 決めるのは私……か。私は、無理矢理にでも連れて行くと言って欲しかったな。でも、そんな事を言う奴じゃないのは分かっている。自分の意思を持たない人間を嫌いな事も知っている。

 「夏海には、自分にとって最良の選択をして欲しいんだ」

 こんなにも、自分の事を思ってくれる琉依が愛しくなる。それなのに、自分は何をしているのか……。

 「バカみたい……」

 呆れてしまって涙が出て来る。こんなにも自分が愚かだと……と、急に背中辺りに寒気が走る。後ろを振り返ったらいけないような……。


 「俺様の話を隠れて聞いているとは、いい度胸ですねぇ」

 いつの間にか、話を終えた琉依が後ろに立っている……。

 「たまたま、通りかかったもので……」

 振り返る事も出来ないまま、訳の分からない言い訳を告げた。

 「だったら、そのまま通り過ぎていなサイ!」

 おっしゃる通りです。何を恥ずかしい真似をしていたのか……。


 「ずっと気付いていたの?」

 「当たり前でしょ。俺が何かを言う度に、夏海が動揺して動くから笑いを堪えるのに必死でしたよ」

 笑うって……。こっちは琉依の気持ちに改めて愛しささえ感じていたのに、アンタは笑いを堪えていたなんて。

 「でも、俺がさっき言った事はすべて本心だよ。それはわかってね」

 昨夜は一緒に来てと言っていたのに、今のが本心? 本当は何を考えているの?

 でも分かるのは、琉依が真剣に私の事を考えてくれているという事。だから、私も真剣に考えないといけない。自分の事くらい自分で……。


 「うん……考えるよ」

 私の答えに、琉依は笑みを浮かべていた。



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