act14夏海の告白
△月△日
賢一と彼女を見た日から時間が止まっている気がする……。だって、ずっと同じ光景しか頭に浮かばないよ……。どうか早く忘れさせて。
玄関のドアが開いて閉じた音の後、誰かが廊下を歩く音が聞こえる。両親はアメリカにいるから、琉依が来たのだろう。
賢一と彼女の姿を見た日からずっと部屋に引きこもっている私を、琉依は懲りずに訪ねて来てくれる。
琉依は優しい……。私は本当にその優しさに頼りがちになっている。そろそろ、本当に琉依を自由にしないといけない。
コンコンッ
琉依にしては珍しくノックをするので、どうしたのか? と、驚いてしまった。普段なら例え、着替えていても構わず入ってくるのに。
「琉依? どうしたの? 入っていいよ」
しかし、ドアが開いて現れたのは琉依では無く、浅井クンだった。意外な人物に思わずベッドから飛び出してしまった。
「えっ!? えっ、何で? どうしてここに? 鍵は?」
質問尽くしの私を見て、彼は思わず笑っていた。
「鍵は宇佐美から借りたんだ。ずっと大学も休んで、部屋に閉じこもっているって宇佐美も心配していたよ」
ほら……、また琉依に迷惑をかけている。
「大丈夫?」
ちょっと気が沈んでいた私に近付いてきて、彼は優しく声を掛けてくれた。
「大丈夫だよ、ありがとう」
琉依だけではなく、彼にまで心配かけさせてどうするんだ……。
「俺さ、宇佐美みたいに槻岡サンの事分かってはいないけど、愚痴とか話なら聞けるからさ……。何でも話してよ」
彼の優しい申し出に、涙が出そうになる。
「ありがと……」
ダメだ……、やっぱり涙が出てきた。
「私の独り言、聞いてくれる?」
しばらくして、何とか落ち着いた私は彼に尋ねた。彼が頷いたのを確認すると、私は話し始めた。
「私は小さい頃から琉依と一緒にいたから、何をするにも琉依がいないと出来なかったの。それは小さい頃だけじゃなく、今でもそう……。お酒を飲みすぎて潰れた時や、何かあると必ず琉依が来てくれた」
淡々と話す私を、彼は真剣に見ていた。
「そろそろ琉依を自由にしてあげないといけないのに……。私の中にある甘えがそれを行動に出せないんだよね」
琉依は私の保護者ではないのに……。
「でも、一緒にいたからこそ琉依の事が全て分かっているつもり。 浅井クン、琉依に呼び出されて賢一と会ったでしょ?」
私の質問に、彼の表情は驚きを隠しきれないでいた。正直な人……。
「やっぱりね。琉依ならすると思ってた。この間琉依とショッピングへ行った時、偶然賢一が彼女と一緒にいるのを見てしまったんだ」
「えっ……」
「もう忘れたと思っていたけど、やっぱりショックだったな」
でも、そっかぁ……。やっぱり琉依が賢一に仕返しをしてくれたのか。どんな風にしてくれたかは分からないけど、やっぱり最終的には琉依に助けられてしまうんだな。
「あのさ、一つ聞いてもいいかな?」
「ん? 何でも聞いていいよ」
彼の質問はだいたい分かっている。きっと……
「槻岡サンは宇佐美の事、幼馴染みとしか見てなかった?」
やっぱりね、そうだと思った。でも、彼にはちゃんと話をしようと思っていたから、ちょうど良かったかもしれない。
「ただの幼馴染みって言ったら嘘になるな。琉依とは付き合ってはいなかったけど、男女の関係になった事もあったし……」
要は……セフレだ。お互いヤりたい時だけの都合のいい関係……。本当はこんな事彼には言いたくなかったけど、彼に隠し事はしたくなかった。いや、出来ないと思った。
「そうだったんだ……」
彼の顔を直視できない……。軽蔑されたかもしれないと不安になる。
「ずっと聞こうかなと思ってたんだ。教えてくれてありがとう」
その言葉に少しだけ彼の方を見ると、彼の表情は私が予想していたものとは違って穏やかな笑顔だった。彼のその表情に、私は安心してもいいのだろうか。
「それじゃあ、来てくれてありがとう」
門の前で、彼に改めてお礼を言った。
「うん。俺、大した事していないけど、それで少しでも元気になってくれたらいいけど」
「話を聞いてくれて嬉しかった。明日から大学にも行くから」
それを聞くと彼は笑って頷き、そのまま帰っていった。私は、そんな彼の姿が見えなくなるまでずっとその場を離れなかった。
深夜、携帯を手にとって電話をかける。
「琉依? 今日はありがとうね」
「……ん? 何の事?」
相変わらずとぼけて返す琉依に、思わず笑みがこぼれてしまう。
ありがとう……琉依。
ありがとう……浅井クン。
本当にありがとうございます!読んで頂けて本当に嬉しいです。さて、次回はとうとう琉依がある行動に出た事が発覚します。一体何が起こるのか楽しみにして頂けると嬉しいです。そろそろこの物語も終わりに近付いています。最後まで頑張りますのでよろしくお願い致します!