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act13琉依の復讐2

 「ちょっと、先に車に乗っていてくれる? 軽く用事を済ませて来るから」

 そう言って彼は彼女を車に乗せると、男の後を追いかけていった。


 「アンタの彼女を取ってごめんね」

 とでも言うつもりなのか……。次第に速度を上げて走る彼は男に追い付き、肩を掴んだと思いきや……


 ガツッ!!


 殴られた拍子で、男の体は地面に倒れこんだ。どうして、女を取った男が取られた男を殴るのか……。

 「……ってぇ、何するんだよ!」

 殴り返そうとした男だったが、一瞬先に彼が男の襟を掴むと自分の方へ引き寄せた。

 「いいか? つまらない女でも、あいつは真剣に心からお前を愛していたんだ。 不器用なりに、お前との愛を大切にしていたんだ。 お前みたいな奴を一生懸命愛したあいつの事をつまらない女の一言で片付けるのは、許さない」

 彼は男の襟から手を離すと、もう一度男を殴りつけた。勢いよく倒れこんだ男を見る事も無く、彼はこちらへ戻ってきた。


 彼の言葉からして、まさかあの男は……。

 そう考えていた俺の前を通り過ぎると、彼は車の中で待っている彼女の元へ行き、勢いよくドアを開けた。

 「出ろよ」

 さっきまでの明るい声とは違い、憎しみの込めた低い声で彼女に降車を促していた。

 「えっ? どうしたの?」

 「いいから、出ろって言ってるだろ!」

 今の状況を理解しきれていない彼女を無理やり外に出すと、彼は彼女を軽く突き飛ばした。

 「きゃっ!」

 声と共に、彼女は軽く転んでいた。

 「おいっ! 宇佐美、何するんだ」

 彼の行為を見かねて止めに入ったが、その時の彼には俺の制止など無駄であった。彼女を見下ろす彼の表情は、怒りに満ちたものだった。

 「ち、ちょっと、何するのよ!?」

 地面に座り込んだまま、彼女は彼を見上げた。彼はそんな彼女と同じ目線までしゃがみ込むと、

 「お前がつまらない男だと言ったさっきの男……。例えそうだとしても、そんな男の事を真剣に愛した女もいたんだ。そんな女の事もつまらないと言うのは……俺が許さない!」

 そう言うと、彼は立ち上がって車の方へ戻っていった。続けて俺が車に乗ったのを確認すると、彼はまだ呆然と座り込んだままの彼女を置いて発車させた。



 「さっきの男はもしかして……」

 「夏海の元カレ、それと浮気相手」

 今日、彼がナンパをしようなんて言ったのはこの為だったのか。

 「でも、偶然あの場に彼氏がいたからあんな風に出来たかもしれないけど、もしいなかったら……」

 「だから、呼んだんだよ」

 簡単に言い放った彼の言葉に、一瞬耳を疑ってしまった。

 「呼んだって……、どういう意味だよ?」

 「あらかじめ、電話しておいたんだよ。 “彼女、今日男と会うよ”って」

 悪びれる事も無く淡々と話す彼に、思わず怒りが込み上げて来る。

 「どうして、どうしてそんな事をしたんだ! そんな事をしなければ、あの二人は別れる事はなかった!」

 激しく問い詰める俺に、彼は走らせていた車を止めた。

 「じゃあ、夏海は? 夏海は未だに傷が癒えていないのに、あいつは……あいつ等は構う事無く幸せそうにしている!」

 普段、穏やかな性格の彼がここまで声を荒げるのは珍しい事だった。

 「もう、あんな奴の事なんか忘れたと思っていたのに、この前あんな事が無ければ……」

 この前って……。もしかして、先日偶然見かけた彼が槻岡サンを抱き締めていた事と関係があるのか……。


 「宇佐美って、やっぱり槻岡サンの事が好きなんじゃないのか?」

 冷めたような顔でこちらを見てきたがすぐに笑顔に戻ると、

 「そんなんじゃないよ。 言ったでしょ? 夏海は大事な妹なんだ……」

 そう言うと、彼は再び車を発車させた。

 ただの遊び人と思えば、こうして彼女の事を思って元カレに復習したり……。未だに俺は宇佐美琉依という男が理解できなかった。恋愛感情の無いただの幼馴染みの為に、俺はここまで出来ないと思う。


 「夏海に会ってやってくれる?あれから、ずっと部屋に引きこもってしまって大学も休んでいるんだ」

 「俺じゃなくても、宇佐美の方が……」

 車を走らせながら、彼は軽く笑っていた。

 「俺ができる事はここまでなんだ。 夏海にはもう俺がいなくても大丈夫だから」

 彼の言っている意味がよく分からなかった。自分がいなくても……って、まるで彼がいなくなってしまうような言い方じゃないか。 そんな事を考えている俺を、彼は横目で見てまた笑っていた。


 しばらくして彼が車を止めた場所の横には、“槻岡”と記された表札の家があった。

 「宇佐美……」

 「夏海の両親は、アメリカに行っていて留守だから。夏海の部屋は二階の奥だよ」

 彼はそう言うと、自分が持っていた彼女の家の合鍵を渡した。少し悩んだがそれを受け取ると、俺は車から降りて彼女の家の門を開けた。




いつも読んでいただき本当にありがとうございます!

評価も頂き、本当に励みになります。琉依派と尚弥派というのが、評価の方で書いて下さっているみたいで琉依の方が人気があるのだなと思いました。また、皆さんも琉依派か尚弥派か教えてくださると嬉しいです!!

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