第8話 情報
部屋に戻ると、俺はベッドに座った。ミルシアは、側で立っている。
「座ったら?」
俺が勧めるけどミルシアは首を横に振る。しょうがないからそのまま話を切り出す。
「え~と、俺の事だけど、ぶっちゃけると、俺は異世界つまりこの世界じゃない所から来たんだ。だからこの世界の事はほとんど知らない。だから色々教えて欲しいんだ」
「は? ……それは、本当ですか?」
ミルシアは、怪訝そうに聞いてきた。それはそうだ。俺もいきなり異世界とか言われたら怪しいと思う。
「まあ、これが現実なんだな。俺も信じたくないんだけど」
そう言って自嘲するように笑う。俺も夢だったらよかったんだけど、それはなさそうだ。
「理解は出来ません」
ミルシアはキッパリと言う。やっぱり無理だよな。
「でも、ご主人様の言う事を信じることは出来ます」
本当か? ミルシアはこっちをしっかり見て言う。
「本当に信じてくれるのか?」
俺は信じられず、聞く。
「はい、信じます。それで、この世界の事を教えたらいいんですよね?」
「あ、ああ、ありがとう。俺はこの世界の事は分からないから、変な事をしそうになったら注意してくれ」
「分かりました。何も知らないご主人様が下手な事をして、恥を掻かない様に注意します」
「そ、そうだが……」
何も知らない訳じゃないんだけどな。どうも、表現に毒を感じる。
その後、俺は寝るまでこの世界の事を、ミルシアから聞いた。
この世界はマルノーゼと言って、大きな大陸と小さな島々がある。大陸には、大きな国が四つと小国がいくつかある。
俺がいる国は、大陸の国の1つのア―スファルト王国と言って、王政をしいていて、貴族もいる。最大の領土を持っていて、この世界の中心だ。
他には、宗教の国、神聖ミルバル国。この国は、魔法が盛んな国で内部の事がほとんど分からない、秘密主義の国。
農業の国イルファ。この国は人口が多く、民主主義の国。平和を求めて軍隊を持たない国だ。魔物退治は冒険者に任せているのだ。
エストータルは工業が盛んな国。ドワーフなどの異種族が多く住んでいる。様々な技術者や職人が沢山いて、工芸品や実用品の生産が盛んだ。
この4つの国と他の小国が大陸にひしめいている。
この世界では今、戦争は起きてない。どの国も最近増えてきた魔物の対応で精一杯のようだ。
魔物は、何らかの魔力によって生きている生き物のことを言う。魔物は邪悪な物が殆どで、知能が高いものは少なく、ほとんどの魔物が人を見たら襲ってくる。
中には、人の言葉を理解して人と共存している魔物も少ないがいる。
魔物以外にも馬のような普通の動物もいる。これは、魔力を持っていないので、地球の動物とほとんど変わらない。
魔法は魔力量と魔力を魔法に変換する能力が必要なため、使える人は少ない。魔法を使うには、まず周りの魔力を自分の中に取り込み、その魔力を利用して、魔法を使用する。
魔法には、呪文を唱えたり、魔法陣を使う等の方法があるのだが、慣れてくると単語で魔法を使える様になる。元になっているのは想像力なので、呪文などがあるとイメージしやすいのだ。
ミルシアは短い単語で使っていたから、それなりに強い魔法使いなんだろう。
魔法には、基本属性の火、水、風、土、電の五つに、それぞれの強化属性の炎、氷、嵐、地、雷があり、他に光、闇、移動、空間、回復がある。
ミルシアは、水、風、土、氷、嵐、移動を使えるみたいだ。
俺は、魔力量が多いみたいだから魔法を使う事も出来るみたいだ。多分知力のステータスを上げると使えるようになるんだろう。
まあ、俺は剣を極めるつもりだから魔法を使う予定はないけどな。
ステータスが何なのか気になってミルシアに聞いてみたけど、何の事か分からないようだった。
この世界にステータスの概念は無いようだ。俺だけのイレギュラーなのだろう。それが何で俺についているのか分からないけど、異世界からの召喚者だからだと思っておこう。
ステータスが無かったらこの世界で生きていける気がしないからな。
この世界には、異種族がいる。エルフや、ドワーフ、獣人などである。
エルフは、長い耳が特徴で、美男美女が多い。千年程生きるエルフもいる。エルフは多くが森の中に集落を作って、他種族との関わりを断って生活している。基本的に魔法が得意である。
ドワーフは小柄で筋肉質、寿命は500年ぐらいだ。ドワーフは鍛治などの職人をしている者が多い。戦う時は力を活かしてハンマーなどを使う。
獣人は、動物の耳やしっぽが特徴で、身体能力や五感が鋭かったりする。獣人は能力を生かして冒険者になる者が多い。
異種族に対しては、人間たちから差別があったりする。大半が人間であり、人間は自分と違う者を嫌う習性があるから必然的に差別はおこる。ただ、国によっては差別が禁止され、平等に暮らしている者もいる。
お金は、世界統一でセール。やっぱり一セール百円ぐらいのようだ。
半銅貨が一セール、銅貨が十セール、半銀貨が百セール、銀貨が千セール、金貨が一万セールだ。
俺が今持っている九千九百セールあれば当分は十分に生活できる額だ。
これらがミルシアに教えてもらった、この世界の情報だ。
ミルシアは、話し終えるとすぐに寝てしまった。俺は、ミルシアからの情報を頭でまとめていると遅くなった。
寝ようと思いベッドに向かうと、隣のミルシアが目に入る。無用心にきれいな顔をさらして寝ている。
つい、襲いそうになった。
昨日あんな事を言ったからには、手を出せない。早くも昨日の言葉を後悔した。俺は悶々と朝まで過ごした。
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2012 2/5 加筆修正