第4話 冒険者ギルド
冒険者ギルドは、レンガ作りの立派な建物だった。中に入ると目の前にカウンターが三つあった。右手には依頼書だと思われる紙が沢山貼ってある掲示板がある。
カウンターは一番左が空いていたからそこに行く。
「すみません、ギルドに登録したいんですけど」
カウンターの中にはメガネをかけた若い女の人がいた。いかにも、出来る女という感じだ。しかも、美人だ。
「はい、ご登録ですね。この紙に名前を書いて下さい。名前以外は、書ける所を書いて頂ければよろしいです。あと登録に10セール頂きますがよろしいですか?」
「はい、大丈夫です」
何故お金があるかというと、オスカーさんに貰ったからだ。ギルドに登録していないと言うとお礼にくれた。お金が無い事を気付かれてたのかな?
オスカーさんの話しからすると、1セールは大体100円ぐらいだと思う。
用紙を見ると日本語だ。ただ、俺がそう見えるだけかもしれないが、よかった。字が読めないと怪しまれるだろうから。
まずは、名前……ハヤトでいいかな? オスカーさんに貰った名刺にも、オスカーとしか書いてなかったし。苗字を持っている人が少なかったりするのかも?
年齢は十七っと。
種族……人間でいいんだよな?
技能…………。
「すみません技能って何を書いたらいいんですか?」
「使える武器や魔法などを詳しく書いて頂いたら、依頼を紹介しやすくなります。別に書かなくても問題ありませんよ」
う~ん、どうしよう。とりあえず、剣、双剣と書いておく。
出身地は書かない方がいいな。まさか、地球の日本と書く訳にもいかないし。
よし、こんなもんでいいか。
「書けました」
「はい、ハヤト様ですね、私は受付のミリアです。よろしくお願いします。では、少々お待ち下さい」
そういって奥に入って行った。俺は何となしに周りを見てみる、すると、猫耳が生えている女の人がいた。獣人もいるのか!? 俺は驚く。やっぱり猫耳はいいな~、萌えるなあ~と思っていると、ミリアさんが帰ってきた。
「こちらがギルドカードになります、無くさないようにして下さい。再発行には100セール掛かります」
ギルドカードは紙で出来ていた。いくら固い紙だからと言って、紙は無くすというより、破れてしまいそうだった。
「分かりました」
「では、ギルドについて説明しますね」
「お願いします」
「このギルドではランクがFからAランクまでと、さらに、その上にSがあります。ランクは依頼にも書かれていまして、自分の二つ上のランクまでの依頼しか受けられません。ただし、Sランクの依頼はSランクの人しか受けられません。ランクを上げるには同ランクの依頼を十回か、一つ上の依頼を五回か、二つ上の依頼を二回成功させれば上がります。ただしAからSへはギルドの方で判断させて頂きます。ここまでよろしいですか?」
「ランクによって変わるのは受けられる依頼の種類だけですか?」
「いいえ、ランクが上がるごとに宿や他の店でも値引きして貰えたり、何かと優遇されます。ハヤト様はFからですから頑張って上げて下さい」
まじかそれは、早くランク上げたくなってくるな。
「おお、そうですか」
「次に依頼ですが討伐、採集、護衛、他にも様々な種類があります。依頼は向こうにある掲示板で確認して紙をカウンターに持ってきて頂ければ、依頼主に合わせる手はずになっています。依頼の報酬は一割ギルドが頂きます。ただし、依頼書に書かれている報酬は一割を引いた額になっています。もちろん、失敗した時は罰金を頂きますので実力にあった依頼をうけて下さい」
ミリアさんはここで言葉を切った。
「依頼は一度に一つしか受けられないんですか?」
「はい、原則として一つしか受けられません。しかし討伐や採集などは、証明の部位がありましたら、後から依頼を受けて頂いてもいいですよ。また、依頼の掲示板の横には賞金首が張り出されています。この者たちを捕まえるか討ち取った時はこちらにきて頂いたら賞金を渡します。また、殺人などの犯罪を犯した際には、賞金首になってしまいますので注意して下さいね。ああ、もちろん賞金首や盗賊などは別です」
焦った、いきなり賞金首にされるかと思った。
「また、パーティーを組んで頂くこともできます。その場合は一番下のランクの人の3つ上の依頼までが受けられます。パーティーは五人までです。奴隷もパーティ―に含まれます。奴隷にランクがありませんので、主人のランクと同じになります。ハヤト様はパーティーを組んでいない様なのですが、奴隷を買われるのですか?」
「ん~、やっぱり一人じゃ厳しいんですか?」
「そうですね、ランクが上がると厳しいでしょうね。パーティーを組むのも信用している人がいないと難しいですしね。奴隷を連れている冒険者は結構多いです」
「そうなんですか、なら考えておきます」
やっぱり厳しいのか。俺なら一人でもやっていけない事はない気がする。あのステータスがあるし。目立ち過ぎるだろうな。それは、まだ自分の状況がよく分かっていない今は避けたかった。
「最後にギルドのメンバーの揉め事にはギルドはあまり関わりませんので、各自で対応して頂くようお願いします」
なんて無責任な……、ってそんなものなのかな? 冒険者なんて、荒くれ者も多いだろうし厄介ごとが多いんだろう。一々ギルドで構ってられないという事かな?
「そういえば、ここに来る途中で盗賊に襲われている人を助けたんです。その時の盗賊の武器があるんですが、賞金がかかっていたりしますか?」
「それでは、調べてみますので出して頂けますか?」
俺は袋から十本の武器を出した。武器を丹念に調べるミリアさん。
「こっ、これはっ!」
突然声を出すからビックリした。何かまずい事でもあったのか?
「これは、今この町の付近で暴れていた盗賊団です! ギルドでも行方を探していたんです、助かりました」
身を乗り出して言ってくる。うわっ! か、顔が近い。
「そ、そうなんですか?」
「そうですよ! ありがとうございました。賞金は三万五千セールになります。」
セールとはこの世界の通貨だ。三万五千セールって三百五十万円!? まじか、一気にこんな大金が入るとは。
「三万五千セールです」
ミリアさんは、言いながら金貨三枚と銀貨五枚渡してきた。
金貨は銀貨十枚分さらに下には半銀貨、銅貨、半銅貨があるみたいだ。それぞれ十枚で一つ上に上がるみたいだ。
「ありがとうございました、ミリアさん」
そう言って受付から離れて掲示板に近づく。依頼書でも見てみようと思ったのだ。
「おい、お前」
いきなり目の前のチャラチャラした男に話し掛けられた。何だか感じが悪い。
「え~と、何ですか」
俺は面倒臭いと思いながら答える。一応今日ギルドに入ったばかりの新人だし。
「ギルドに入ったばかりで盗賊団を倒したからって、調子に乗ってミリアさんと親しそうに話してんじゃねえぞ!」
うわっ、面倒臭! どこにでもこういう奴っているよな。大体、口だけで弱いやつ。
「て、てめぇ! 舐めてんのか?」
「えっ、声に出てた?」
まずった。男の大声が周りの注目を集める。すると男は周りを見て舌打ちをする。
「くそっ! 覚えてろよ。夜道には注意することだな」
捨てゼリフを吐いて出て行った。さすがにギルドの中では暴れなかったようだ。よかった、俺は揉め事は勘弁したいからな。後、目立つ事も勘弁。
くそっ! 目立ってしまった。
俺も人目から逃げるようにこそこそと、ギルドを出た。
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2012 1/30 加筆修正